北海道の秋サケ定置網漁が今週から開幕する。平成以降最低の来遊予測が示され、漁獲量は4万トン台前半の凶漁見通し。引き続き、水揚げの回復を見据え、売り場堅持、円滑な消流への価格形成が焦点となる。今季の商戦展望、流通対策の重点などを、道漁連販売第二部の鳥毛康成部長に聞いた。
青森、岩手、宮城の東北3県の秋サケ漁は極度の不振となっている。各県のまとめによると、2020年度の沿岸漁獲量は青森1341トン(前年度比31%減)、岩手1277トン(同30%減)、宮城457トン(同31%減)。海水温の上昇などが要因とみられ、今後も厳しい状況が続きそうだ。
首都圏の小売店では、8月中旬から“北海道産生秋サケ”とうたった切り身を提供する店が出始め、一部ではチラシに記載して季節の先取りで集客に乗り出す店も現われた。昨年は豊漁とはほど遠い秋サケだったが、それ以上に厳しかったサンマに替わる商材として重点的に販売を仕掛ける場面も多く、売上高は好調だった一昨年よりもさらに1割増で着地する店舗も多かったようだ。今年も国産で旬を訴求できる商材として、各バイヤーは首都圏の消費者に向け、良質な原料の調達に奔走している。
北海道の三大魚種の一角を成すサケ。近年来遊資源の低迷が続き、各産地では「水揚げが低水準の中、1尾1尾を大事に扱っていかなければ」と、付加価値対策にも力を尽くす。船上活じめなどの鮮度・品質保持、銀毛・大型などを厳選したブランド化に加え、歴史・文化、観光など地域資源との連動で特長付け。消費者への訴求、魅力の発信に工夫を凝らしている。
いぶり噴火湾漁協の稚貝分散は、各地区で仮分散を終え、伊達の一部が本分散に入った。数量は問題なく確保しており、順調に成長しているもよう。ザラボヤの付着を避けるため本分散を9月後半に遅らせていた虻田は、昨年の成長不良を鑑み9月頭にスタートする見通し。
南かやべ漁協の促成は、大半の漁家が水揚げを終え製品化を進めている。昨年秋に種苗が芽落ち・損傷する被害に見舞われた影響で、組合全体の計画数量は2200トンと、昨年度実績(2669トン)を大きく下回る見通し。移植で回復を図ったが、完全復旧できなかった漁家もいたほか、移植したコンブの生育も鈍かったという。
えりも漁協のタコ箱漁は数量、単価とも前年同期を上回り、金額を8割増に伸ばしている。旭地区の千葉毅彦理事は「7月が好漁で、浜値も良かった」と笑顔を見せる。 同漁協全体で8月17日現在の数量は前年同期比18%増の77トン、金額は同83%増の5300万円、キロ平均単価は同54%高の688円。
神奈川県水産技術センターは、種苗生産を試みているクマエビについて、卵から稚エビまで育成することに成功した。これまでの成果では全長1センチほどの稚エビだったが、今回は放流可能な大きさである全長3~4センチまで成長したもので、この実績は東日本では初という。地球温暖化による海水温上昇の水産業への影響を抑えるために取り組んできた試みだが、新たな栽培漁業対象種としての可能性をまた一歩前進させた。
岩手県山田町の三陸やまだ漁協(生駒利治組合長)は今年度、町の支援を受け、山田湾でトラウトサーモンの海面養殖に乗り出す。2023年度からの事業化を視野に、2カ年の実証試験で採算性や漁場環境への影響などを確認する。秋サケの記録的な不漁が続く中、主力のホタテ、カキと並ぶ収入の柱に育てたい考えだ。
ひやま漁協乙部支所ナマコ協議会加工部門(日沼賢澄部門長)が製造するアカモクは今春採取分を皮切りに、加工過程を改良するなど品質アップに力を注いだ。日沼部門長は「色や粘り気がこれまでより良くなった」と手応えを話す。