スルメイカの漁獲減など漁業低迷を打開しようと、北海道でトラウトサーモン(ニジマス)の養殖が拡大している。2023年は新たに釧路や根室で海面養殖に挑戦するなど「ご当地サーモン」ブームが到来。5月以降、先進地である八雲町熊石など檜山管内をはじめ、渡島や後志で水揚げが始まった。種苗の地元生産や大手水産会社と連携した販路拡大など将来的な自立化に向けた挑戦も各地で活発化している。
製網メーカーの日東製網株式会社(東京都、小林宏明社長)、函館市の有限会社ヤマヤマコ小橋水産(小橋紗江子社長)、有限会社小橋産業(小橋年久社長)は連携し、函館市を中心に道南地域で排出されるイカの加工残さを、養殖用飼料原料としてアップサイクルに取り組んでいる。函館・道南地域で拡大傾向にあるサーモン養殖の餌にも利用が計画され、地域の経済基盤を支える名産を生み出す水産資源を最大限活用し、新たな特産を育む循環型産業の形成に一翼を担う。
食品衛生法の改正で2021年6月から、食品製造業者は製造工程で想定される食中毒菌などの付着・増殖、異物混入など人体への危害要因を分析し、それを排除する「HACCP」に沿った衛生管理の導入・運用が必須となった。本特集では出発点となる漁港を含め衛生・品質管理の動向、根幹となる微生物対策や清掃・洗浄の在り方、関連機器・システムなどを紹介する。
安全・安心な水産物の供給に向け、漁港では糞の混入など危害要因となる鳥害の防止対策が不可欠。札幌市のハーテック株式会社(石﨑啓一社長・電話011・792・1946)は、聴覚と視覚の両方から鳥が嫌がる刺激を与えて忌避効果を向上・持続させる方法を提供。これまでに空港やのり養殖施設などで成果が認められる結果を得ており、北海道の水産現場での鳥害対策にも役立つと提案している。
日本海北部の留萌管内でラーバの付着量が例年より少ない。仮分散の開始が約1カ月後に迫る中、十分な粒数を確保できるのか、養殖漁業者は不安を募らせている。留萌地区水産技術普及指導所によると、苫前地区の試験採苗器で5月2日~6月14日の累積数量は1袋当たり約600個と千個に及ばない。同留萌南部支所による増毛地区の試験採苗器でも4月中旬以降、6~7回交換して得られた6月中旬時点の累積が750個と苦戦している。両機関とも「今年の潮流は例年より速く、水温は1~2度高い」と海況の変化を指摘している。
釧路管内のさお前コンブ漁は、5月25日の釧路市東部漁協を皮切りに各浜順次解禁となって以降気象と海況条件に恵まれず沖止めが続いていたが、6月20日に全5単協が待望の初水揚げを迎えた。いずれも21、22日と続けて出漁。厚岸・浜中の両漁協は計画日数の3日間を消化し終漁した。
岩内郡漁協のカキ試験養殖は5月下旬に2年目の出荷を迎えた。養殖作業に取り組む太田誠組合長は「成育は問題ないくらい良好。ただ、冬のシケで脱落が多かった」と話す。出荷個数は1万個以上を見通す。
低調だった砂原漁協のタコ箱が6月に入り上向いてきた。多い着業者で日量400キロ程度と徐々に増えている。一方、キロ千円台中盤まで高騰していた浜値は弱含みの傾向。6月半ばで900円台と値を下げているが、昨年と同水準で例年以上の高値に着業者は今後の増産を期待している。
全漁連は22日、通常総会を東京都内で開催し、2022年度業務報告、23年度事業計画など全議案を承認した。福島第一原発ALPS処理水の海洋放出に伴う対策の特別決議を採択し、「海洋放出には反対であることはいささかも変わるものではない」との姿勢をあらためて示した。
マルスイホールディングスグループの中核会社である丸水札幌中央水産株式会社の2023年3月期決算は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けながらも、秋サケ増産やホタテの価格上昇などで増収となり、7期連続で黒字を確保した。23年3月期から「収益認識に関する会計基準」を適用し、単純比較できないが売上高は前期比0.2%増の512億7497万円。営業部門では毛ガニの取扱数量増やアルゼンチン赤エビの秋口の搬入増に伴う相場下落などが響き、売上総利益率は0.5ポイント低下の4.3%だった。エネルギーコスト上昇などで販管費が膨れ、営業利益は前期比49%減の1億1375万円。