漁業者の手掛ける加工品が、手作り製法や素材本来の風味などで、本物・安全・安心志向の消費者をつかんでいる。漁業の傍らで生産量は限られるが、ニーズを意識し、漁獲物の付加価値を高めるその意欲と工夫は、特産品の創出など漁村地域の活力再生にもつながる。前浜産のPR・普及と併せて加工販売に成長源を見いだす漁業者に着目した。
サンマ漁は11月中旬以降、主漁場の公海の水揚げが急減。シケも薄漁に拍車をかけている。漁業情報サービスセンターがまとめた全国7月~11月25日現在の数量(速報値)は前年同期比47%減の11万トンと、依然前年の半減ペース。過去最低だった平成11年(13万4944トン)に届かない可能性も。このうち、道東4港の数量は同39%減の6・2万トン。
岩手県広田湾で種ガキを安定的に生産できる可能性が出てきた。県水産技術センターの試験で8月、潮間帯の天然母貝が由来とみられる浮遊幼生を狙い、5日間でホタテ原盤1枚当たり平均50個弱の付着に成功した。成長抑制の経過も良好だ。
同センター増養殖部は、付着結果について「想定の範囲。安定生産できるか、再現性を確認したい」(武蔵達也部長)と期待を高めている。成長抑制中の種ガキで来春から挟み込み試験も考えていきたいといい、県内で天然採苗から水揚げまでの養殖も注目される。
湧別漁協は、けた引の来季計画量を明らかにした。現段階で2万トンを割り込む1万8千トンと大きく落ち込む見通し。雲津幸治常務は「今季に続いて、さらに厳しい水揚げが予想される」と気を引き締めている。
来季の操業海区はB、E海区。今季同様、昨年末から1月にかけての大シケに伴う死滅が著しく今季修正計画の2万5千トンからさらに7千トンの減産を想定。着業者は「あくまで現時点の計画量。来季の操業までに大シケがないことを祈りたい」と悲痛な表情を浮かべる。
釧路市東部漁協のタコ空釣縄は低気圧によるシケなどで水揚げ開始が遅れ。11月19日現在で昨年11月実績の4割にとどまっている。ただ、着業者は「漁況自体は昨年よりは順調」と話す。
7隻が操業。昨年は10月で22トンを水揚げしたが、ことしはずれ込んで、11月に入って水揚げが始まった。数量は19日現在で49.7トン、金額は2260万円、キロ平均単価は455円。
2年連続で4千万尾割れの低来遊がほぼ確定した北海道の秋サケ。水産総合研究センター北海道区水産研究所が推定した年齢組成では、今季4年魚の2011年級(平成23年級)は1992年級以降の平均的水準の一方、5年魚の2010年級(22年級)は最低水準。5年魚は太平洋、日本海の両地域とも6年以降の平均値を大幅に下回り、昨季に続き来遊量全体を下押ししている。
畠和水産㈱(電話0226・23・0055)は、明治32年創業という老舗。畠山和貴社長で4代目となる。冷凍マグロを中心とした商品の加工・販売のほかに、営業倉庫業、鮮魚仲買業、問屋業などを営んでいる。
鮮度のいい各種のマグロを厳選して仕入れ、タタキ、切り落とし、ブロック、ロイン、柵など販売先の希望に合わせたスタイルで、各地の市場や外食産業に納品している。マグロタタキは長年培った独自の製法により味にこだわった主力商品だ。
震災では、本社ビルと加工場2カ所、冷蔵庫1カ所、直売所1カ所の全てが被災した。しかしその7月には弘前に加工場を借り、事業を再開。時間がたてばたつほど販路を失い、再開が難しくなると考え、できるだけ早く、従来のマグロタタキや切り落としなどを製造。翌年、冷凍加工場=写真=を再建し、気仙沼に戻ってきた。
紋別漁協の底建網秋漁は、主体のスルメイカが苦戦している。日間格差が大きくシケも絡み昨年を下回る水揚げ。薄漁を映し浜値は木箱1箱6千円台中盤の好値を付けている。
広尾漁協の毛ガニ試験操業が23日に始まった。保志光則毛がに篭部会長は「平年並みの水揚げ。出足としてはまずまず」と話す。大サイズが主体。浜値は初日に上でキロ4千円台半ばを付けたが、その後は弱含みに転じた。
岩手県の秋サケ漁は、回帰ピークと期待された11月下旬も大きな伸びはなく、不漁の様相を強めている。海面漁獲は12月から後期群で終盤入りし、後期で挽回しても、中期までの前年同期比約4割減を取り戻すのは難しい。