札幌市中央卸売市場の生筋子消流は、昨年比3~4割高の高値相場を形成する中、取扱数量が10月上旬まで堅調に推移している。在庫払底で加工筋が早々にいくらの生産で手当て。一方、量販店は昨年実績を追った販売攻勢で引き合いは強いものの、逆ざやで消耗戦の様相も呈している。
標津の前浜で漁獲する水産物をもとに6次産業化に取り組む標津波心会(林強徳代表)は今季、秋サケのブランド化や商品の多角化に挑戦している。神経じめなど鮮度・品質向上への処理を徹底。道内外の鮮魚店とも手を携え、標津の秋サケを道内外に訴求していく。標津はかつて「秋サケ水揚げ日本一」で知られたまち。同会は高鮮度を打ち出し、「日本一おいしい秋サケ」として魅力を発信する。
宮城県で秋サケの刺網漁が始まり、南三陸町の町地方卸売市場に9月28日、初水揚げがあった。志津川湾沖などで操業した17隻が接岸。水揚量は616キロで、昨年の4割以下にとどまった。10月下旬にかけて最盛期を迎えるが、来遊予測も低調で厳しい状況が続きそうだ。
北海道の秋サケ定置は9月漁が2017年以来4年連続で2万トン台にとどまる低水準となった。道漁連の集計によると、前年比11%増の2万4581トン。ただ、低気圧によるシケ後の月末には不振だったえりも以西などで日量が上向き。オホーツクの各地で大乗りし、4日ぶりの水揚げとなった29日は全道で5年ぶりの日量5千トン規模、翌日の30日も3千トン台と久々の盛漁水準が続き、10月漁に入った。
「恋問鮭」の専用シールを発泡箱に貼付
白糠漁協のサケ定置部会(新保太平部会長)は今季、生鮮出荷に取り組む「恋問鮭」の船上活じめに乗り出した。低水準の水揚げが続く中、限られた資源の付加価値を高める試みで全漁場が足並みをそろえて実施。地元仲買、漁協直販加工部を通じ道内外に流通、価格にも反映され、上々のデビューを果たしている。
北海道の秋サケ定置はオホーツクや日本海、えりも以東で昨年を上回るものの、根室、えりも以西が落ち込んで低水準の水揚げで推移している。日高地区も沿岸水温が20度超の高水温下、全域で不振の滑り出し。9月中旬も各漁場1トンに満たない水揚げが続き、休漁を挟んだ操業を余儀なくされる地区も。漁業者は水温低下と併せて例年漁が見え始める20日以降の盛り返しに期待をかけている。
高値発進となった北海道の秋サケ。特に生筋子相場は製品在庫の滞留で下方修正の滑り出しだった昨年に比べ上昇幅が大きく、札幌圏の量販店は商戦の組み立てに苦慮している。出足の売価も昨年より高値設定だが逆ざや。伸長した昨年の売上実績確保と併せて今年もサンマの不漁で秋サケの販売に傾注せざるを得ない状況下、浜値の高止まりを懸念している。
北海道の秋サケ定置はメス、オスとも昨年より高値でスタートした。特に卵需要のメスは先発の十勝に続き根室、日高など各地で出足から異例の高値キロ千円台。サンマの不振に伴う量販店の生鮮需要なども影響、通年商材の価格形成は今後の漁況に懸かっているが、在庫薄のいくらは今季上昇局面。低水準の来遊予想下、消流安定への適正価格の形成が焦点になる。
留萌市の(株)ヤマニ野口水産(小野寺正司社長、電話0164・42・1127)は、北海道産秋サケの皮を焼き上げた「鮭皮チップス」を開発した。既製品の副産物を有効活用。新ブランドを立ち上げ、その先導商品として販売拡大に臨んでいる。
宮城県水産技術総合センターは8月28日、2020年度の秋サケ来遊予測を発表した。沿岸漁獲と河川捕獲を合わせた同県の予測値は66万尾で、19年度実績の約2.4倍とする一方、5年魚の来遊が低水準となり、予測値を下回る可能性があるとの見通しも明らかにした。