近年国内のいくら市場を席巻しているロシア産冷凍卵は今季の搬入量が昨季を大幅に下回る様相だ。極東のカムチャツカ方面での不漁で、一般社団法人北洋開発協会によると、10日時点の漁獲勧告量達成率はカラフトマスが20.2%、シロザケは3.3%にとどまっている。価格も高騰し、日本の商社は搬入量を絞っている。
円安や世界的な需要の高まりを背景に、チリ産ギンザケをはじめサケ・マス相場が高騰している。国際情勢の変化でロシア産ベニザケの搬入の予測もつかず、輸入物の供給は例年にも増して不透明な様相を呈している。
チリギンは在庫のひっ迫を背景に異例の価格上昇が続いている。6月下旬には、4/6ポンドサイズの冷凍ドレスの内販価格がキロ1200円にも達した。3月から3カ月で約300円値上がりし、シーズン開始時の2021年10月の価格と比べると1.5倍ほどの水準となっている。
在庫ひっ迫の要因について、商社筋は「ベニが高値だったため、早期から北海道・東北でもチリギンの売り場が増え、相場は前期よりも高いものの、消費は鈍らなかった」と説明。加えて「搬入量が予想に反して少なかった。例年は11万トンほどだが、21/22年シーズンは最終的には10万トンに達しないのでは。当初4月から価格が下がるとの見通しで、商社各社は在庫を潤沢に確保していなかった」と続ける。
岩手県でサケ・マス類の海面養殖が拡大している。2022年の水揚量は前年比2.1倍の1211トンに達する見込み。主力魚種・秋サケの記録的な不漁が続く中、安定した水揚げを確保し、漁協経営の健全化につなげる狙いがある。
釧路市漁協や釧路市東部漁協など釧路市内4漁協、釧路水産協会、道総研釧路水産試験場、釧路市などで組織する釧路市養殖事業調査研究協議会(会長・檜森重樹釧路水産協会専務)とニチモウ株式会社の両者は、釧路港でギンザケの養殖試験を実施している。東港区北防波堤付近にいけすを設置し、7月20日に1キロサイズの中間種苗5千尾を投入。9月上旬から5回に分けて水揚げする。
湧別漁協のマス小定置が始まった。1カ統で70尾から多い日で150尾程度の水揚げ。浜値はキロ500円台前半と強含み。序盤は例年並みの漁模様でスタートしており、着業者は8月の盛漁期に期待を寄せている。
岩手県水産技術センター(釜石市)は7月26日、2022年度(9月~2023年2月)の秋サケ回帰が数量11万尾、重量354トンになるとの予測を公表した。県内で本格的な稚魚放流が始まった1984年度以降で最低だった昨年度を割り込み、東日本大震災前(2006~10年度)平均値のわずか1%にとどまる見込み。採卵数不足に対応するための種卵確保も課題となる。
岩手県の釜石地域サクラマス海面養殖試験研究コンソーシアム(代表・平井俊朗岩手大三陸水産研究センター長)は11日、釜石湾で試験養殖しているサクラマス(地域名・ママス)の2季目の水揚げを開始した。初日は1尾2キロサイズを中心に4トンを釜石市魚市場に出荷し、最高値はキロ1380円。船上で瞬時に活締めした鮮度感と、在来種というなじみ深さが高く評価された。市の花にちなんだ愛称も決定。今年秋から事業化に移行し、5年ほどで出荷量を千トンまで増やす方針だ。
松前町茂草地区の土木建設企業・川合建設株式会社(川合寿美子社長)が手掛ける陸上養殖トラウト「北海桜サーモン」の試験販売が6月中旬から東京・豊洲市場で行われている。2回目の販売となった7月4日には初回に購入した仲卸業者から再注文が相次いだ。仕入れた仲卸業者は「身質が良く、他の仲卸もすでに顧客をつかんでいると聞いている」と話す。
秋サケの消流動向は、北海道の水揚げが3年連続の5万トン割れ、三陸も大減産で、親製品、魚卵製品とも昨年産の供給量が低水準。加えて競合する輸入物が高値で推移し、比較的順調に消化が進んでいる。ただ、売り場の縮小、産地の物流・背面処理能力の低下などで突発・集中水揚げ時に相場が下落に転じる状況が顕在化。今期も原魚処理体制の再構築と需要先の堅持・拡充が不可欠となる。
三菱商事株式会社とマルハニチロ株式会社は、10月をめどに富山県下新川郡入善町でアトランティックサーモンの陸上養殖事業を行う合弁会社アトランドを設立する。合弁設立後、入善町に原魚ベースで約2500トン規模の循環型養殖システムを活用した陸上養殖施設を建設。2023年度後半に着工し、25年度に稼働開始。27年度の初出荷を目指す。