SNSを駆使し販路開拓に取り組む漁業者が増えた中、湧別漁協でカキ養殖に着業する登栄床地区の播摩大輔さん(40)も、協力者といち早く連携しネット販売に力を入れている。タッグを組むのは地元・湧別町で酒屋を経営しながらネット通販会社株式会社モグぱっく(電話01586・2・4910)を立ち上げた橋本祐樹社長(40)。「漁業者が手間を掛け良質に育て上げたカキを全国に広めたい」との思いが具現化し、9年前からネット販売に注力。両者は昨年12月に「さろまる」の名でブランド化も図り、販促を強化している。
近年続いている主要魚種の水揚げ低迷、コロナ禍による需要の減少や魚価安に加え、道東を中心に赤潮被害に見舞われた昨年の北海道の水産業界。その被害回復をはじめ気候変動への対応、資源増大や消費拡大対策などが引き続き求められている。年頭に当たり、道水産林務部の佐藤卓也部長と、道漁連の川崎一好会長に展望を聞いた。
北海道産カキの今季生産量は、むき身、殻付きともにほぼ例年並み。むき身は量販店中心に順調な荷動きで、殻付きも新型コロナウイルス禍の収束を機に飲食店需要が増えつつある。浜値はともに昨年並みかやや高値に振れる場面もあるが「下がることなく、まずまずの価格帯」(湧別漁協市場)で推移している。
北海道の漁業は昨年、イカや秋サケといった主要魚種の低迷が続いた一方、羅臼では定置網にサバが大量乗網するなど異変も起きた。北大名誉教授で函館国際水産・海洋都市推進機構函館頭足類科学研究所所長の桜井泰憲氏に海洋環境や気候変動に伴う資源状況や将来的な見通しについて聞いた。
道東沿岸を中心に秋サケやウニが大量へい死するなど甚大な漁業被害をもたらした赤潮。漁場の被害・資源状況を把握する上で活躍が期待されるのが小型無人潜水機「水中ドローン」。札幌市の株式会社アイ・ティ・エス(下川俊克社長、電話011・743・1707)は最新機も含めさまざまな機種を販売、各用途に適した機種を提案する。要望に応じて初心者向け講習会も実施している。
秋サケ製品の消流は、ヒネ在庫の払底や水揚げ不振などから、親、卵とも、供給量は引き続き低水準。ただ、高値形成に加え、競合する海外鮭鱒の搬入増加が見込まれ、道漁連は新漁までの在庫の適正化と売り場の確保を重点に各種対策を講じていく。
3年連続2千万尾割れの低来遊となり、地域間格差も深刻化した昨年(2021年)の北海道の秋サケ。ただ、道総研さけます・内水面水産試験場の解析によると、18年級の3年魚が予測を大幅に上回ったほか、5年魚で回帰した16年級がオホーツクや根室・北部などで高齢化に転じ、資源回復へのサインが現れ、来季に向けて全道規模では光明も差した。
非対面で24時間いつでも手軽に購入できる自動販売機。魚の消費や調理離れが叫ばれる若年層への訴求も兼ねて、その自動販売機で水産品の拡販に乗り出したのが、札幌市の水産加工卸・有限会社千葉水産(千葉信幸社長、電話011・784・2453)。商品は骨を取り除いた切り身「骨のない魚」。購入後すぐに料理に使え、手軽さは“2倍”。昨年8月の販売開始以来、予想以上の売れ行きを見せ、魚食拡大の新たな販売方法として手応えを得ている。
北海道の秋サケは約4万8千トンと、3年連続の5万トン割れとなった。親、卵ともヒネ在庫の払底下、凶漁と競合する輸入鮭鱒の高値相場などで全道のキロ平均単価(11月末現在)は前年比2割高の788円に上昇し、水揚金額は3年ぶりに400億円を超えた。ただ、えりも以西を中心に特に太平洋側の来遊低迷が続き、浜間格差が一層深刻化。一方、消流は三陸の不振も相まって国産の品不足感が強まっているものの、価格上昇による消費鈍化や輸入鮭鱒の動向次第で停滞も懸念される。
渡島管内のスケソ刺網が好漁に恵まれている。11月末に上向き、12月上旬も好調な水揚げで推移。日量が20トンに達する船もあった。主漁場は徐々に陸側に移動。着業者は「上・下一帯で獲れている」と話す。