北海道の秋サケは4万6千トン弱と、昨年に続き5万トン割れの凶漁となった。浜値は卵需要のメスを主体に高騰し、全道のキロ平均単価(11月末現在)は前年比2割高の657円に上昇。金額は約350億円まで回復したものの、浜間格差も大きく、資源動向の先行き不安は払しょくされないまま。一方、消流は今後の水揚げ回復時に向けた売り場の堅持が引き続き課題となる。
岩手県の秋サケ漁が極端な不振にあえいでいる。県のまとめによると、11月30日現在の沿岸漁獲量は人工ふ化放流事業が本格化した1984年度以降で最低だった前年同期比38%減の552トン。青森843トン(同23%減)、宮城428トン(同34%減)と厳しい状況は隣県も同じ。不漁が価格高騰を招く悪循環が依然として続く。
北海道の秋サケは、水産研究・教育機構が10月末時点で推定した年齢別来遊数によると、1994年以降では2016年級の4年魚が6番目に少なく、2015年級の5年魚は最少。5年魚は太平洋側(根室~えりも以西海区)、日本海側(オホーツク海区と日本海区)とも前年と94年以降の平均を大きく下回っている。
宮城県石巻市で「オリーブギンザケ」の研究開発が進められている。東日本大震災からの復興のシンボルとして市が栽培する「北限のオリーブ」を餌に活用。地域で養殖が盛んなギンザケの成長促進や肉質改善、新たなブランド展開につなげたい考えだ。
斜里町の(株)丸あ野尻正武商店(野尻勝規社長、電話0152・23・2181)は、水揚げ日本一を誇る秋サケ、マスを中心に前浜産の素材にこだわって商品づくりに臨んでいる。町が認証する優良地場産品「知床しゃりブランド」に1企業最大品目数の4商品が登録され、卸販売を主力に直売店やネット、全国各地の物産展などで発信している。
サケ漁獲量日本一を旗印に漁業、観光業など地域振興に取り組む斜里町では今季、地元・ホテルへの前浜産秋サケの供給ルートを構築。9月15日から10月15日までの期間、ウトロ地区の大型ホテルが生秋サケを使用した特別メニューを企画し、宿泊客らに好評を博した。10月15日以降も冷凍原料を使用し、通年でサケ料理を提供、「鮭、日本一のまち」をアピールしている。
標津町の(株)北海永徳(永田雄司社長、電話0153・82・3963)は今季の秋サケ商戦で、標津町など4市町の「『鮭の聖地』の物語~根室海峡一万年の道程~」の日本遺産認定と連動した商品展開に取り組んでいる。専用シールを作製し生筋子の出荷時に同梱したほか、いくら商品に貼付。食文化、歴史などサケを基盤とした地域の魅力発信に一役買っている。
平成以降最低だった2017年(1737万尾)、19年(1756万尾)に並ぶ低水準で終盤を迎えた北海道の秋サケ。道総研さけます・内水面水産試験場の解析によると、中期までの来遊数は16年級の4年魚が漁期前予測並みの一方、15年級の5年魚は予測の15%減で、18年に類似した年齢組成。17年級の3年魚も予測を15%下回っている。
北海道の秋サケ定置は11月に入って日高管内などが健闘し、13日現在で4万5132トンと、平成以降最低だった昨年実績(4万5115トン)は超えた。今後の上積みは後期群の厚い胆振以西の伸びが焦点になる。
東北3県(青森、岩手、宮城)の秋サケ漁が依然低調だ。各県のまとめによると、10月31日現在の沿岸漁獲量は青森225トン(前年同期比16%減)、岩手147トン(同62%減)、宮城227トン(同57%減)。3県とも、記録的不漁だった前年を下回るペースとなっている。不漁が価格高騰を招く悪循環が続く。