戸井漁協小安地区は4年前に促成養殖で成熟誘導技術(人工的に子のう斑を形成させる技術)を他地区に先駆けて導入。高水温下の2023年も採苗遅れはなく、導入以降は毎年安定した種苗生産を行えている。従来より沖出し時期が前倒しされ海面養成期間を長く確保できるため、着業者は生育面でも効果を実感している。
道は1月29日、札幌市の「かでる2・7」で、第3回目の「コンブ生産安定対策検討会議」を開き、モニタリング体制の構築や既存事業の改善など天然・養殖それぞれの課題や対策の方向性を検討。育種の試験研究にも取り組んでいくことも示した。道東海域を中心とした昨年の大減産は一昨年夏から秋の海水温上昇が影響したと推察されることから、天然では海洋環境や漁場状況を把握するためのモニタリングや、種苗投入・雑海藻駆除といった既存の取り組みの効果的実施、養殖では技術向上などが課題・対策案として挙がっており、3月までに内容を取りまとめる方針。次回会議は同月中旬を予定している。
北大などの研究グループは、新型コロナの検査にも使われているPCR法を応用しコンブの原産地を判別できる新たな手法を開発した。マコンブとその変種(リシリ、オニ、ホソメ)を対象に分析し、地域ごとに独自の遺伝子型を持つことを確認。原産海域は高精度で判別できた。原産地の虚偽表示防止に役立つほか、各地域のブランド力向上につながることが期待される。
戸井漁協東戸井地区でミツイシ養殖を営む芳賀浩平さんは、施設の雑海藻駆除でエアーコンプレッサー(空気圧縮機)の導入を検討している。従来使用していた高圧洗浄機に比べて手軽に使え、作業負担をより軽減できることが利点と考える。
北るもい漁協羽幌本所に所属する桜井漁業部(桜井健一代表)は、刺網で水揚げしたカレイやホッケなどの加工品販売に乗り出した。昨年11月に作業場を備えた販売店舗「北のこんぶ小屋」をオープン。その名の通り前浜で採取している天然コンブの加工品も自慢の一品だ。6次化構想の夢が現実となった今、桜井さんは「バーベキューを楽しめるスペースも確保した。人が集まるグルメスポットを目指したい」と意気込んでいる。
南かやべ漁協の2年養殖は近年、生育不良が続いており、今夏も厳しい生産が予想されている。ある着業者は「今季はほぼ全滅。年々状況が悪化している」と嘆く。2年養殖の生産は木直・尾札部両地区が中心。例年2月に種苗生産センターから漁業者に種苗が供給され沖出し。翌年夏に水揚げする。ただ近年は1年目の夏を境に状況が悪化。同漁協は「夏を越えられない。今季もどの地区も厳しい状況」と示す。
北海道のコンブ生産は昨年、異例の大減産となった。釧路・根室を中心に一昨年の海水温上昇でコンブが抜けたとみられ生産は低迷。道内全体で初めて1万トンを割り込み、8千トン台まで落ち込む見通しとなっている。
国内有数のコンブ産地羅臼で天然資源回復に向けた試験的な取り組みが新たに始まった。漁協が北大北方生物圏フィールド科学センターや有限会社マリン総合(厚岸町)と連携。雑海藻(石灰藻など)駆除やセルロースを活用した胞子散布を実施したほか、年明けには種苗を付けた自然石の投入も予定。対象区におけるコンブの着生や生育状況を調査し効果を検証していく。
稚内漁協の工藤飛鷹さんは今年6月、コンブの乾燥・保管施設を新築した。義弟の池野壮一郎さんと共用。天候に左右されず水揚げできるほか、人手対策や作業負担の軽減にもつながっている。株式会社寺島商会(函館市)の小型乾燥機(マリンドライTSR-600K)を2台完備するほか、扇風機も配置、風を循環させてコンブを乾かす。
岩手県産天然干しコンブの入札会が19日、宮古市の県漁連北部支所で開かれた。県内6漁協が出荷した総量は、昨年(33トン)の10分の1にも満たない2.9トン。高水温の影響など海況に恵まれず大幅減産となった。品薄は価格に反映され、10キロ当たりの平均単価は前年比53%高の2万1422円。買受人からは「こんなに出荷量が少ないのは記憶にない」と困惑の声も上がった。地区別の出荷量は下閉伊が前年比92%減1トン、九戸91%減1.9トン。高水温など海況の変化が影響しているとみられ、県漁連によると「今年は夏場から数の少なさが見込まれていた」という。