2025年の北海道の秋サケ定置網漁がシーズン入りした。漁期前予測では未知の低生産。加えて在庫薄、海外産の高値相場などで製品単価は強含みの様相で、引き続き、水揚げの回復も見据えた国内外の販路堅守、消流促進が課題に挙がる。道漁連販売第二部の倉地宏樹参事(販売第二部長事務取扱)に商戦展望、流通対策の重点などを聞いた。
近年回帰数の減少とともに成熟年齢の若齢化がみられている北海道のサケ。道総研さけます・内水面試験場では成長と生残や成熟との関係が変化してきている状況に着目、解析を進めている。成長と生残の関係では降海1年目の初期生残率が低下する一方、初期成長が上昇傾向で初期の高成長が生残の条件になっていることを示唆している可能性を推察。「変動する海洋環境がサケにとって厳しくなっている表れの一つ」との見解を示す。
商社筋によると、チリ産ギンザケの直近価格は4月の帰路1250円をピークに、この2~3カ月で若干下がり1100円前後で推移。ただ、高値傾向は依然続いており、日本側は慎重な買い付けに徹している。
いくらの原卵で主力のロシア産カラフトマスの冷凍卵は今期も新物搬入が厳しい情勢になっている。水揚げ不振でロシア側の提示価格は45ドルで、日本国内の卸売価格に換算するとキロ9500円に達する状況。流通業者は年内の新物展開が困難と想定し、繰越在庫での対応を見据えている。
青森、岩手、宮城の東北3県の秋サケ漁は2019年度を境に深刻な不振が続く。潮流や餌の環境など温暖化を背景とした海洋の変化で、放流した稚魚が北上しにくくなった可能性などが指摘される。稚魚の大型化や強じん化など回帰率向上に向けた対策を模索するが状況は思うように好転せず、今季も厳しい漁模様となる公算が大きい。
宮城県漁協によると、7月下旬に終漁した2025年の県産養殖ギンザケ水揚げ量は前年比17%増の1万5296トンで、計画数量(1万4500トン)を上回った。種苗数が前年より169トン多い
1434トンと多かったことに加え、例年と比較し大型の稚魚(約190グラム)を海面投入したことが要因とみている。
岩手県でサケ・マス類の海面養殖が活発化している。久慈市、宮古、三陸やまだ、新おおつち、釜石湾の各漁協管内のほか広田湾でも試験養殖が進行中で、2025年の水揚量は前年比65%増の3340トン。主力魚種・秋サケの記録的な不漁が続く中、漁協経営の安定化や地域水産業の振興につなげる狙いがある。県内の「ご当地サーモン」が拡大する中、各産地とも認知向上に力を注ぐ。
青森県の八戸市魚市場がスルメイカの好漁で活気づいている。市によると8月25日現在の水揚数量は634トンで、前年同期(87トン)に比べて7.2倍。金額は4.2倍の3億9482万円に上る。多い日には60~80隻が入港し、25日には今季最多の39トンを水揚げした。県内船のほか北海道や岩手、宮城など県外の船も多く、入船するイカ釣漁船の3~4割が県外籍という。昨年までの不漁から一転、各船とも「今年はいい」と口をそろえる。
道南・黒口浜に位置するえさん漁協の天然マコンブは古武井・尻岸内両地区で採取。ただ、陸側の限られた場所にしか着生しておらず、着業者は「沖には全くない。少しでも資源が回復してくれたら」と願う。
ホタテと兼業でカキ養殖を手掛ける森漁協所属の株式会社イワムラ水産は、大型ブランド「秀峰牡蠣」の生産が昨年を上回り好調だ。一方、低水温の深場に垂下し産卵を抑え生食用端境期に水揚げする熟成ブランド「碧」(あおい)は、9月から順次出荷を開始する予定で、昨年の2倍となる10万個の生産を計画している。