北海道産カキの今季生産量は、むき身、殻付きともにほぼ例年並み。むき身は量販店中心に順調な荷動きで、殻付きも新型コロナウイルス禍の収束を機に飲食店需要が増えつつある。浜値はともに昨年並みかやや高値に振れる場面もあるが「下がることなく、まずまずの価格帯」(湧別漁協市場)で推移している。
熊本大学、水産卸業者の株式会社ジャパンシーフーズ、理化学機器メーカー柴田科学株式会社はアニサキスを高電圧で殺す機器の実用化に向けて研究を進めている。アニサキスによる食中毒が増える中、身質への影響が少ない殺虫方法で、水産業界から注目されている。昨年11月に東京都で開かれた「ジャパン・インターナショナル・シーフードショー」では殺虫後刺身にしたアジの試食を実施。来場者から「生鮮と同じ味」と高評価を得た。
北海道の漁業は昨年、イカや秋サケといった主要魚種の低迷が続いた一方、羅臼では定置網にサバが大量乗網するなど異変も起きた。北大名誉教授で函館国際水産・海洋都市推進機構函館頭足類科学研究所所長の桜井泰憲氏に海洋環境や気候変動に伴う資源状況や将来的な見通しについて聞いた。
水産加工の株式会社ケーエスフーズ(宮城県南三陸町、西條盛美社長、電話0226・46・8111)はウニ、ナマコの陸上養殖(蓄養)事業に着手した。地元漁業者が磯焼け対策で間引きした痩せウニを買い取り、歩留まりをアップさせて出荷するとともに放流用稚ナマコの育成なども手掛ける計画。先進的なIoT(モノのインターネット)技術を取り入れ、作業効率化や安定生産を実現しながら地域の漁業振興に貢献していく。
道東沿岸を中心に秋サケやウニが大量へい死するなど甚大な漁業被害をもたらした赤潮。漁場の被害・資源状況を把握する上で活躍が期待されるのが小型無人潜水機「水中ドローン」。札幌市の株式会社アイ・ティ・エス(下川俊克社長、電話011・743・1707)は最新機も含めさまざまな機種を販売、各用途に適した機種を提案する。要望に応じて初心者向け講習会も実施している。
めかぶ加工・販売の有限会社丸繁商店(宮城県気仙沼市、小野寺繁雄社長、電話0226・23・4941)は新商品「10秒deおいしいめかぶ」を発売した。スライスした宮城産を厚さ5ミリの板状に凍結。冷凍庫の隙間に収まり、解凍が簡単で包装のプラスチック使用量も減らせるのが特長。コロナ禍で免疫細胞の集まる腸内環境に関心が高まる中、食物繊維が豊富で「腸活」に最適なめかぶを、より手軽に毎日の食卓に取り入れてもらう。
秋サケ製品の消流は、ヒネ在庫の払底や水揚げ不振などから、親、卵とも、供給量は引き続き低水準。ただ、高値形成に加え、競合する海外鮭鱒の搬入増加が見込まれ、道漁連は新漁までの在庫の適正化と売り場の確保を重点に各種対策を講じていく。
漁業の6次化を推進する株式会社海遊(宮城県石巻市雄勝町、伊藤浩光社長、電話0225・25・6851)は、サステイナブル(持続可能な)食材として注目が集まるムール貝(ムラサキイガイ)の拡販に力を入れる。今年春にワイン蒸しなど加工品3品を投入。認知度の向上を図るとともに、高付加価値化により収益力のアップを目指す。
3年連続2千万尾割れの低来遊となり、地域間格差も深刻化した昨年(2021年)の北海道の秋サケ。ただ、道総研さけます・内水面水産試験場の解析によると、18年級の3年魚が予測を大幅に上回ったほか、5年魚で回帰した16年級がオホーツクや根室・北部などで高齢化に転じ、資源回復へのサインが現れ、来季に向けて全道規模では光明も差した。
近年続いている主要魚種の水揚げ低迷、コロナ禍による需要の減少や魚価安に加え、道東を中心に赤潮被害に見舞われた昨年の北海道の水産業界。その被害回復をはじめ気候変動への対応、資源増大や消費拡大対策などが引き続き求められている。年頭に当たり、道水産林務部の佐藤卓也部長と、道漁連の川崎一好会長に展望を聞いた。