北海道の漁獲資源で存在感が高まっているブリ。多獲地域では船上活じめなどのブランド品を先導役に魚価底上げに取り組んでいる。暴れるブリを扱う作業の負担軽減や迅速化、魚体温の上昇抑制など品質安定で、東しゃこたん漁協やひだか漁協などはニチモウ株式会社が開発した電気刺激による鎮静化システムも導入。北海道産ブリの訴求へ産地の切磋琢磨が続いている。
北海道の秋サケ定置は9月後半に入ってシケなどで断続的ながら千トン超、22日に2200トンなど日量が増えてきた。ただ、全般的に漁期前予測を覆す勢いはなく、低水準の水揚げ。加えて出足の魚体サイズが極度に小型で、尾数に比べ重量は落ちる状況。浜値はオス、メスとも昨年より高値を堅持し、例年盛漁となる時期を迎えている。
青森県陸奥湾の稚貝の分散作業は、9月末から一部の漁業者がスタートした。今年は西湾中心に極度の採苗不振となり、選別の通し下も採取しているため、作業を遅らせ成長を待ってから手をかける地区が多くなる見通し。地域内で融通し合いながら採取したが、例年の2~3割程度に落ち込む漁業者も多く「分散作業は2番手も無駄にしないよう進めたい」と気を引き締めている。
9月に始まった噴火湾のエビかごは、春漁同様に秋漁も不振を極めている。獲れる漁場が湾中央の一角に限られ、渡島3単協(砂原・森・落部漁協)とも大半の着業者が苦戦。薄漁のため浜値は高騰しており、メスはキロ5千円台後半、オスの中で4千円台を付けている。
苫小牧漁協の夏ホッキ漁は近年の良好な資源状況を受け、許容漁獲量(ノルマ)を順調に消化している。ハシリから8月上旬まで、太平洋西部海域でのまひ性貝毒検出で約1カ月間休漁したが、髙島正司船団長は「操業は順調。11月中旬には全船ノルマを達成するだろう」と話す。
釧路市東部漁協の「鮮魚チーム」が神経じめや内臓処理などを施しブランド展開する「CLASSIC FISH」は今年で3年目を迎える。道内各地に出荷、取扱店舗の客層や消費者のニーズを捉えて製品づくりに反映。複数の魚種を詰め合わせた荷造りやフィレーに加工するなど工夫、流通面でも深化を図っている。
えさん漁協の天然はガゴメが皆無でマコンブ主体に採取。繁茂漁場は限定的なものの、日浦地区は2年ぶりに操業。尻岸内や古武井も含め7月に続けて出漁できたが、天候不順やシケ、海の濁りに出漁を阻まれる期間も長く、着業者からは「コンブの質が良い時期にもう少し採りたかった」との声も多い。
日本経済調査協議会(日経調)の第3次水産業改革委員会の小松正之委員長・主査は20日、農林水産省を訪問し、このほどまとめた中間提言について野村哲郎農林水産大臣に要請した。鹿島平和研究所内に設け小松氏が主査を務める北太平洋に関する研究会がまとめた提言も合わせたもので、水産改革や生態系管理について言及、野村大臣と意見を交わした。両組織からの提言書を手渡すとともに、その中から海の生態系や生物資源を国民共有財産として法律に位置付けること、必要データの量と質の向上と科学的な漁獲可能量(TAC)を設定すること、漁業の損失補てんなど非継続的な補助金の段階的廃止と、科学調査・イノベーション・漁業の監視取り締まり・オブザーバー制導入へ予算を振り分けること、商業捕鯨モラトリアムに異議を申し立てた上での国際捕鯨委員会(IWC)への復帰を求めるなど7項目に整理。改正漁業法に基づく水産改革では不十分であることを説明した。
要請後に取材に応じた小松氏によると、野村大臣からは「提言の質は高く、よく検討されているが、実現には吟味が必要で時間を要する」と述べたという。海の生態系や生物資源を国民共有財産として法律に位置付けることを求めたことに対しては「私自身は人類共有の財産だと考えている」と話したという。IWC復帰については「相手もあり簡単ではないのでは」との見解を示したとしている。
回転ずしチェーン「くら寿司」を展開するくら寿司㈱は、SDGSの取り組みの一つ「低利用魚の活用」で、通常駆除対象となるニザダイに廃棄予定のキャベツを与えて養殖した「キャベツニザダイ」の販売を開始した。キャベツで養殖したニザダイの全国販売は今回初。「キャベツウニ」をヒントに始めた取り組みで、まずは期間や数量限定での提供だが、定期的に販売できる体制を目指している。
東京・豊洲市場の北海道産ハタハタ消流は、卸値が高値に付き、量販店への拡販体制が整っていない。鳥取産との価格差も大きく割高感が強い。鳥取産を取り扱う仲卸業者は「顧客は本場の秋田産や新潟産を必ずしも求めているわけではない。注文が入れば他産地でもよく価格次第」と話す。