越年在庫の払底と記録的不漁で空前の高コストとなった北海道産新物いくらの市況は、しょうゆがキロ9000円、塩が1万円を超え、前年の5割高以上に高騰している。供給量は2000トン台の最低水準が見込まれるが、末端需要は輸入冷凍卵の製品に切り替える動きも目立つ。今後の価格変動は年末商戦での消費動向に行方がかかっている。
まるいち沼田商店株式会社(宮古市、沼田貫一社長)は自社ブランドの「氷頭なます」を復活させた。従来品に比べてプロテオグリカンを増量して差別化、販路の拡大を目指す。「40年かけた研究の成果」と沼田社長。サケが持つ機能性に早くから着目。しかし、今までは工場が老朽化していたため新商品生産になかなか踏み出せずにいた。昨年竣工した新工場を機に、増産体制に臨む。
北海道の秋サケは漁期中の8割超が水揚げされる時期が過ぎたが、漁獲尾数は1千万尾台にとどまっている。道総研さけます・内水面水産試験場が進めている年齢査定では、低来遊が予想されていた主群の5年魚(平成24年級)、4年魚(25年級)とも実際に低調。特に4年魚が日本海を除いて不振で、昭和59年以来の2千万尾割れも見込まれる凶漁に響いている。
宗谷、稚内両単協の秋サケは前年並みの低調な水揚げで終盤に入ったが、浜値に支えられて金額は大幅に伸長。全道で記録的な大不漁となった今年は解禁から高値を維持している。
新潟県糸魚川市の県立海洋高等学校の生徒が考案したサケの魚醤「最後の一滴」が高級イタリアンに採用されるなど活用の場が広がっている。同窓会が運営し生徒が部活動として利用する水産加工場「シーフードカンパニー能水商店」で月に3000本ほど生産。これまでは市内を中心に販売していたが、全国に向け販路を拡大させる。
記録的不漁となった北海道の秋サケ。日本海、えりも以西・道南を除いて全道的に前年割れで推移しているが、特にえりも以東は平成22年以降続く低水準の中、前年の4割減だった昨年の7割減と、2年連続の大幅減産に見舞われている。浜値は高騰しているが、補え切れず、定置、組合の経営に大きな打撃。底が見えない資源の低迷に先行き不安も増している。
記録的不漁で異常高騰を見せている北海道の秋サケ。製品価格が空前の高値に達し、量販店、業務筋など末端の各方面で輸入物に切り替える動きが目立ってきている。供給量も近年の低水準からさらに急減し、北海道産の売り場縮小に拍車をかける状況。長引く資源の低迷が秋サケの加工・流通に深刻な影を落とし、生産回復時の反動に懸念も広がっている。
東北で秋サケ水揚げの多い青森、岩手、宮城3県は9月末まで、岩手が順調でとくに久慈など北部が伸び始め、青森、宮城は低調な序盤となった。平均単価は3県とも前年同期の140~150%前後と極めて高い。平均体重はいずれも3キロ割れし小型化をうかがわせるが、昨年序盤に比べればわずかに重い。
北海道の秋サケは盛漁期も低調な水揚げが続き、記録的不漁の様相を深めている。浜値はメスがキロ1600~1500円中心、根室海峡で1800円台まで異常高騰。オスも600円中心と高止まり。キロ平均単価は三十数年なかった900~800円台に到達している。ただ、十勝・釧路や根室などは単価高で補えない深刻な漁獲不振に見舞われている。
根室湾中部漁協のサケ定置は不調だ。9月漁が不振だった昨年の4割減。一方、浜値は全道的な不漁で上昇し、キロ平均単価は昨年の7割高に付いている。
着業者は「一昨年と比較したら3分の1しか捕れていない」と渋い表情。別の着業者は「普段はシケごとに群れが寄ってくるが、今年は台風でも来ない限りシケない」とし「この時期にこの程度の漁では今後も期待できない」と話す。