増毛漁協のミズダコはタコ箱で一時キロ1800円台と高騰した。昨年から高値基調となる中、今年は一段と強含みの傾向を示している。一方7月末時点の水揚量は、タコ箱が昨年並みとなった反面、空釣縄が失速し全体では2割の減産。金額は単価高の影響で昨年を上回っている。
岩内町が青森県の株式会社オカムラ食品工業(青森市)と同社グループの日本サーモンファーム株式会社(深浦町)と連携して取り組むトラウトサーモン(ニジマス)の海面養殖試験は今年6月に初水揚げを迎え、約14トンを出荷した。加えて、岩内沖の海洋深層水を活用した陸上での蓄養試験も実施しており、将来的な端境期出荷が可能かどうか検証している。
利尻漁協の養殖は収穫がほぼ終了した。全般的に毛(ヒドロゾア)が早く付きだしたことに加え後半にかけて付着状況が進行。同漁協全体で大幅な減産となる見込み。着業者は「例年とは違い頭から付いたコンブもある」と今季の特徴を話す。同漁協によると昨年の養殖コンブの実績は249トン。今年は当初222トンの計画だったが8月上旬の段階で72トンと大幅に下方修正。「養殖は230~250トンほどで安定していたが今年は全般的に毛が多く苦戦。大減産となる見通し」と示す。
ホタテ輸出先の多くを占める中国の消費低迷が現実味を帯びている。中国輸出に詳しい商社筋は、ゼロコロナ政策や不動産市場の減速に伴う景気悪化に加え、7月に始まった放射性物質検査の強化が追い打ちをかけ、さらには「日本産水産物に対する中国国民の受け止め方も変化している」と警戒を強める。
水産加工の株式会社ケーエスフーズ(宮城県南三陸町、社長・田畑正人株式会社カネタ・ツーワン社長、電話0226・46・8111)がギンザケの陸上養殖に乗り出した。既設の養殖場に大型水槽を設け、地下水(淡水)をかけ流しで使用。成育は順調で、試験初年度の今季は10月までに4トン(2千尾)の出荷を計画する。早ければ来春にも事業化する方針で、生鮮の海面養殖物が出回らない秋場の需要を取り込み、新たな収入源としたい考えだ。
道東沖のマイワシ棒受網漁は、近年同様にサイズの小型化に見舞われている。拠点港の花咲港で荷揚げする中型船(50トン未満)の漁労長は「日量は例年並みだが、最近はサイズが小さくなった」と資源動向を注視。根室の水産会社は「年々サイズが小ぶりになっている。生鮮出荷はもちろん、加工向けにも扱いにくい」と嘆き、商戦展開に苦慮している。
首都圏・小売りのマイワシ商戦は近年、訴求に力を入れていた道東産の売り込みが小型化などで苦戦している。東京都や神奈川県中心に展開する量販店では、2010年代の後半数年にわたって6月下旬に道東マイワシの販促フェアを展開してきたが、以降の年は期間中に漁がまとまらず、実施を断念している。近海産と比較して身が太り、脂質も多いのが道東産の訴求ポイントだった。首都圏の消費者にも充分なインパクトを与え、好評を得ていたが、バイヤーは「ここ数年は小ぶりが続いている。今年も小ぶりで脂質も少なく、生鮮向けではない。かつてほどの魚体に戻ってほしい」と願っている。
サンマ商戦も水揚げが不安定のため、売り場作りや収益確保に苦労が続いている。多くの店舗が昨年も充分な量販や販促ができず、消費者の購買意欲を高められないまま季節の商材には程遠い状態でシーズンが終了。秋の味覚の“主役”不在が久しく続き、各社のバイヤーは消費離れに危機感を募らせている。首都圏全般に展開している大手量販店では、「昨年も水揚げが単発で本格的に売り出せたのは9月に入ってから。ただ、期間を通してサイズ、脂質ともに魅力を欠いた魚体だったため、見せ場を作れぬまま商戦は終了した」と説明する。
道総研釧路水産試験場は、道東沖で棒受網漁などの中・小型漁船が水揚げするマイワシの高鮮度流通モデルを確立した。漁獲から消費地まで一貫して魚体温度を凍結点(マイナス1.3度)付近に保冷管理するのが要点。その起点となる沖から陸揚げまで船倉内の温度管理では漁獲量に応じ、氷の必要量の目安が分かる計算式も開発した。実証試験では漁獲から3日後でもK値(ATPの分解の割合)を10%以下の高鮮度に保持。技術マニュアルを作成し、漁業者、漁協などに普及を進めていく。
全国漁青連は7月31日、創立30周年記念式典を東京都千代田区のホテルグランドアーク半蔵門で開催した。コロナ禍の影響で1年延期しての実施。全国から集まった若手漁業者の代表らは親睦を深めるとともに、各浜の状況を共有する機会としていた。川畑友和会長(鹿児島県漁協青年部連合会顧問)は「漁青連は沿岸漁業の健全な発展と組合の経営安定を図り、明るく豊かな漁村社会を構築することを目的に1992年3月に発足した。今日に至るまで幾多の困難を乗り越え、30周年を迎えることができたのは、歴代の会長や先輩方の努力の賜物」と強調した。「われわれ漁業者にはまだまだたくさんの課題が待ち構えている。関係団体からご指導をいただきながら、水産業を盛り上げていくために頑張っていく」と述べ、引き続きの理解と協力を求めた。