いくらの原卵で主力のロシア産カラフトマスの冷凍卵は今期も新物搬入が厳しい情勢になっている。水揚げ不振でロシア側の提示価格は45ドルで、日本国内の卸売価格に換算するとキロ9500円に達する状況。流通業者は年内の新物展開が困難と想定し、繰越在庫での対応を見据えている。
青森、岩手、宮城の東北3県の秋サケ漁は2019年度を境に深刻な不振が続く。潮流や餌の環境など温暖化を背景とした海洋の変化で、放流した稚魚が北上しにくくなった可能性などが指摘される。稚魚の大型化や強じん化など回帰率向上に向けた対策を模索するが状況は思うように好転せず、今季も厳しい漁模様となる公算が大きい。
宮城県漁協によると、7月下旬に終漁した2025年の県産養殖ギンザケ水揚げ量は前年比17%増の1万5296トンで、計画数量(1万4500トン)を上回った。種苗数が前年より169トン多い
1434トンと多かったことに加え、例年と比較し大型の稚魚(約190グラム)を海面投入したことが要因とみている。
岩手県でサケ・マス類の海面養殖が活発化している。久慈市、宮古、三陸やまだ、新おおつち、釜石湾の各漁協管内のほか広田湾でも試験養殖が進行中で、2025年の水揚量は前年比65%増の3340トン。主力魚種・秋サケの記録的な不漁が続く中、漁協経営の安定化や地域水産業の振興につなげる狙いがある。県内の「ご当地サーモン」が拡大する中、各産地とも認知向上に力を注ぐ。
サーモン業界初の機能性表示食品「薬膳サーモン」の開発・販売を手掛ける株式会社BKTC(東京都)の小瀧由貴社長が白老町観光大使に就任した。白老町の養殖場で生産された「白老産薬膳サーモン」を全国に発信し、白老町の新たな特産品の創出、食と観光振興などに寄与していることから、町が7月3日付で任命。8月22日に町役場で委嘱式が行われた。小瀧社長は薬膳を取り入れた養殖用飼料「約全健美」を開発・販売。それを給餌して育成した「薬膳サーモン」の含有成分・アンセリンが尿酸値の上昇を抑制する研究レビューが認められ、消費者庁に機能性表示食品の届け出が受理されている。また、「臭みが全くない」などの特徴が水産業者、調理者などから評価を得ている。
宮城県水産技術センターは13日、県内の2025年度の秋サケ来遊数が約6千尾にとどまるとの予測を発表した。過去最低の予測値で、最低水準だった24年度の実績値をさらに30%ほど下回る。「来遊数が極めて低い状況は今後も継続すると考えられる」との見通しも示した。
今年の秋サケ来遊で極度の再生産親魚不足が予測されている日本海の中・南部地区、渡島管内、胆振管内、えりも以東海域、根室海域の定置業者は、秋サケ定置網漁の操業始期から自主規制措置を実施する。網入れ時期を遅らせ、河川へのそ上を促し、再生産用親魚の確保に努める。日本海の中・南部地区の自主規制措置期間は石狩管内が9月1~7日、後志・桧山両管内が9月3~7日。さけ定置は一階網、二階網とも5日に身網、8日に垣網を網入れ。規制期間中、小定置は魚が入らないように身網の建上げ撤去または樋先封鎖。大謀網、底建網はサケ水揚げの全額を増殖経費に拠出する。
今年の秋サケ商戦を展望する一般社団法人北海道水産物荷主協会(会長・長谷川博之株式会社イチヤママル長谷川水産会長)主催の第47回全国サケ・マス・魚卵大手荷受・荷主取引懇談会が5日、札幌市のホテル・グランドメルキュール札幌大通公園で開かれた。前代未聞の低生産、超高値形成が想定される来遊予測を踏まえ、消流安定の活路を意見交換。親製品は生鮮消化や高付加価値化、国内加工への回帰などが示された。一方、キロ1万円超の警戒感が漂ういくらは産地と消費地の情報共有で需給・流通動向を見極めた冷静対応などが糸口に挙がった。
岩手県水産技術センター(釜石市)は7月30日、2025年度(9月~来年2月)の県沿岸への秋サケ回帰予報を発表した。予測値は尾数で3万3千尾、重量93トンで、いずれも人工ふ化放流事業が本格化した1984年度以降で最低だった前年度から2割程度減少する見込み。東日本大震災前の3カ年平均(2008~10年度)の0.4%程度とした。回帰時期は10月下旬と12月中旬を中心に9月下旬~1月中旬と見込む。
函館市や北大はこのほど、市が事業主体となる「函館マリカルチャープロジェクト(キングサーモン完全養殖技術研究事業)」で海面養殖試験を進めてきたキングサーモン約100尾を初水揚げした。魚体にばらつきがあったものの大きい個体で4キロを超え平均体重は2.31キロ。生残率は76.6%だった。4日に関係者を招いた試食会を開き、味わいや脂乗りなどを評価した。スルメイカなど主要魚種の低迷を受け2021年度に着手。22年度からは同プロジェクトとして実施している。