「成長産業化」を掲げた改正漁業法が昨年成立、2年以内の施行に向け、水産政策の改革が今年動き始める。その道筋はまだ明確には見えないが、浜では実行者となる若手漁業者たちが既に独自の革新に挑んでいる。漁村に暮らし、海とともに生き抜き、水産資源を供給する担い手の思いが花開く「改革」の実現を願って、それぞれの高みを目指す若手グループの活動を追った。
「誇りを持っている自分の仕事が廃れている現状が悔しい」。そう強く語る若い漁師の思いと行動が奔流となり、日本の漁業を新時代に突き動かそうとしている。
2014年にノリ、ホヤ、ギンザケなどの漁師や鮮魚店、事務局を合わせて13人で立ち上げた「一般社団法人フィッシャーマン・ジャパン(宮城県石巻市)」。漁師の仕事を「カッコいい、稼げる、革新的」という「新3K」として実行することを理念に掲げる。
北海道内では昨年、新たなカキブランドが続々と誕生した。湧別漁協は1年むき身は「漁師が恋した小さな牡蠣~COYSTER」、小型の2年殻付きは「龍宮かき」と名付け販売開始。昆布森漁協の㈱きのした水産は「元祖ミルク牡蠣」をプロデュース。森漁協の㈱イワムラ水産は「ほてい牡蠣」「秀峰牡蠣」をデビューさせた。いずれも首都圏はじめ全国展開を目指す。
北海道内のカキ生産量は主産地・サロマ湖のむき身が多少少なく、殻付きは道東中心に例年並み。消費は外国人観光客の減少で殻付き中心に伸び悩んでいる。12月は例年並みの出荷量となったが、浜値はサロマ湖産の1年むき身がキロ千円台前半、道東の殻付きは1個130~120円程度と弱含み。関係者は戻りつつある観光客消費に期待を寄せている。
コンブの生産減、消費低迷が続く中、各研究機関は、地元漁協や企業と連携しコンブ漁業振興、需要喚起に向けた取り組みを進めている。製品化や試験養殖、品質向上につながる技術開発などで、今後の成果やさらなる発展が期待される。
昨年の価格修正で末端消費に勢いを付けた玉冷需要。内販は5年ぶりの1万トン超えが堅く6年ぶりに輸出を上回った。ただ原貝増産の半面、小型化で前年並みの供給量。余剰分は活貝や冷凍両貝に仕向けた。今年のオホーツクはさらに増産し小型予想。荷動きは昨年とほぼ同様の公算が高い。
極度の水揚げ不振が続く北海道内のホッケは、2016年以降、右肩上がりで推移している。主漁場の道央日本海~オホーツク海では18年の水揚量が10月末段階で4年ぶりに2万トン台を突破。低水準を脱してはいないものの持ち直しつつある。関係者は「沿岸・沖合の自主的な資源管理が奏功した」とみており、今後も継続した資源管理が期待される。
海洋土木の(株)菅原組(函館市、菅原修社長)は、松前沖でのコンブ養殖プロジェクトを立ち上げてから10年目を迎えた昨年暮れ、海藻活用研究会(安井肇会長)と連携しガゴメコンブの養殖を新たに始めた。今後は「松前」のブランドを冠した新たなガゴメ商品開発に取り組む。
スルメイカやサンマなど道内主力魚種の漁獲量が低迷する中、増加傾向のブリやイワシの高付加価値化や消費拡大に向けた取り組みが各地で進む。函館や根室では昨年から道の振興局が音頭を取り地域単位でオリジナルレシピの考案や販促などの各種活動を重ねている。海洋環境など情勢変化に向き合おうと官民連携での模索が続く。
東京五輪・パラリンピックが近づき、水産物輸出にもエコラベル認証が求められる中、業界ではその認証取得の動きが盛んになっている。世界に数ある水産エコラベルの中で日本で誕生した「MEL」が今年、国際標準の規格を持つ認証として認められる見通しだ。これまで北太平洋、北大西洋の漁業が国際標準の主流として位置付けられてきたが、日本の水産業の多様性を反映した基準がいま世界に向けて発信されつつある。
低迷が続く道東太平洋地域の秋サケ資源の早期回復に向け、道総研は沿岸域に比べ水温が高く、餌も豊富な潟湖(せきこ)を稚魚の成育場に活用する研究開発に取り組んでいる。2017、18年の調査では水温、水質、餌生物量といった好適な環境特性を備え、その条件下で稚魚が成長し、沿岸域が適水温に到達した時期に降海した状況を確認。今年以降も調査を継続し、初期生活期の生残率向上につながる新たな放流方法の確立を目指す。