日本の伝統的な食文化を支えてきた昆布。つくだ煮やとろろなど多様な形に加工され食卓に並ぶほか、だしのうま味は料理の下支えとなり、郷土の味覚も形成してきた。ただ国内生産の95%を占める北海道では減産傾向が続き、生産量を示す格付実績は3年連続で過去最低を更新。消費もコロナ禍における飲食店需要の減退を受け業務筋中心に低迷している。昆布産業を取り巻く環境が一層厳しさを増す中、漁業者らは増産対策に注力。消費地業者も販売を工夫して魅力発信・需要喚起に努めるなど難局打開に向け奔走している。
道総研函館水産試験場が試験的に取り組む、成熟誘導(人工的に子のう斑を形成させる技術)を用いた早期生産種苗のマコンブ養殖。通常の促成マコンブより採苗・沖出し時期を前倒しできるため、成長が早く、形態や歩留まりに優れたコンブの収穫が期待できる。昨季は連携する戸井漁協小安地区で良好な結果が得られ、今季から近隣の浜にも普及、漁業者の関心も高まっている。
釧路・根室両管内のコンブ産地に3月、流氷が接岸した。滞留中に大シケでもまれ、コンブ漁場が削られた地区もあるもよう。着業者は「どの程度影響があったのか心配」と話している。歯舞では太平洋側沿岸に接岸。漁業者は「2月に入った氷は厚みがなく小さかった。わりと静かに入って静かに出たので、それほど影響はないとみていた」と言う。ただ3月の流氷は大きく、接岸後に大シケが発生。「自分が確認した場所はなぎさ中心に削られ、岩盤に海藻が付いていない」とし「5月の生育調査でどのような状況になっているか」と被害状況を懸念する。
函館市漁協入舟地区の浅海漁業者は前浜でコンブやワカメの養殖を手掛けている。胞子を放出させ、ウニなどの餌となる海藻資源の回復を目指した取り組み。収穫はせず、間引き分だけを餌用としてウニ漁場に投入しウニの身入りも促す。今季から養殖規模を拡大している。
道水産物検査協会がまとめた2021年度の道産コンブ格付実績は、前年度比0.4%減の1万2816トンとなり、3年連続で過去最低を更新した。減産傾向が続き、ピークの1989年と比べて6割減に低迷。過去10年(11~20年)平均比でも16%減となった。
道水産物検査協会がまとめた道産コンブ格付実績は、3月単月が前年同月比4%減の479トンにとどまり、2021年度累計で過去最低だった前年度を0.4%(57トン)下回る1万2816トンに落ち込んだ。減り幅こそ2年続けて微減だが、3年連続での過去最低更新となった。
えさん漁協日浦地区の養殖コンブ施設は、今季からのべ縄式に統一した。昨季まではセット式も併用していたが、綱が劣化しやすく雑海藻駆除などの管理も大変なため解体。のべ縄式は比較的管理が楽な上に、間引きも円滑に進められ体への負担も軽減できるのが利点という。
広尾漁協の保志弘一さんは、着業するコンブ漁業の課題解決に向け奔走している。付加価値対策として製品化工程で発生する端切れ部分を利用して独自製品を開発したほか、人手不足解消のために地元の1次産業体験プログラムを通して陸回りを確保。生産力強化を図るため乾燥機も導入した。「何もしなければ衰退していく一方」と現状に危機感を持ち「持続可能なコンブ漁業に向け取り組んでいきたい」と力を込める。
えさん漁協で養殖コンブの間引きが本格化している。生育状況は地区で異なるものの、これまで目立ったシケ被害はなく作業はおおむね順調な様子。着業者は今後の成長促進に期待を込め、間引きに加え施設浮上も進めていく。
戸井漁協東戸井地区でミツイシ養殖を営む芳賀浩平さんは、施設に施す独自の雑海藻対策を考案、今季から本格導入し効果が表れている。幹綱に農業用灌水チューブをかぶせるように取り付け固定する仕組みで、雑海藻の付着は大きく減少。「付いても手でなぞるだけで簡単に落ちる」と言う。毎年手間と時間をかけ行ってきた雑海藻除去の必要がなくなり、体力的負担が大幅に軽減された。