日本の水産・食品流通に変化と転換をもたらしたコロナ禍。大消費地の首都圏ではそのインパクトは大きく、流通・末端事業者は対策に迫られた。ただ、生産者が手掛けた水産品を消費者へ安心して届けたいという熱意は揺らがない。創業当初から変わらぬ強みを生かして業績を伸ばしたり、発想の転換で新規需要をつかんだりと現状の打破に挑んでいる。
高砂熱学工業株式会社(東京都、小島和人社長)は漁業者との関係を強化している。同社が手掛ける過冷却完全制御方式の海水シャーベットアイス製造装置「SIS-HF」を導入した漁協などに対して技術面はもちろん、それで得られた水産品の販促面でも精力的なサポートに乗り出している。
東京都の冷凍食品メーカー・株式会社カラミノフーズ(佐藤淳一社長、電話03・6302・0105)は、自社でレシピ開発した世界の料理を全国の製造業者に製造委託し、商品化するノンファクトリーメーカー。主に生協などの宅配・通販向けに販売し、近年の冷食需要増大で業績が急伸長している。ただ、9割以上が肉料理で、魚料理の充実に向け、原料供給、委託製造業者を探している。
北海道の秋サケは約4万8千トンと、3年連続の5万トン割れとなった。親、卵ともヒネ在庫の払底下、凶漁と競合する輸入鮭鱒の高値相場などで全道のキロ平均単価(11月末現在)は前年比2割高の788円に上昇し、水揚金額は3年ぶりに400億円を超えた。ただ、えりも以西を中心に特に太平洋側の来遊低迷が続き、浜間格差が一層深刻化。一方、消流は三陸の不振も相まって国産の品不足感が強まっているものの、価格上昇による消費鈍化や輸入鮭鱒の動向次第で停滞も懸念される。
カネヨ山野辺水産株式会社(宮城県塩竈市、山野辺文幹社長、電話022・366・0171)は、末端消費者向けの商品ラインアップを強化する。自社ブランドの確立が狙いで、今夏に漬け魚と干物を発売。来春にはミールキットと煮魚を投入する。原料から製法まで品質にこだわった冷凍食品をPR。新型コロナウイルス禍に伴う巣ごもり需要の取り込みも目指す。
室蘭・胆振産を中心に魚食の魅力を発信する飲食店が11月、北海道最大の繁華街・札幌市のすすきのにオープンした。室蘭市公設地方卸売市場で仲卸を営む株式会社ヤマサン渡辺の山本晃弘社長(35)が新会社・株式会社山三を立ち上げて運営。昼の海鮮丼専門店に加え、夜はラウンジの業態でチャージに海鮮料理を提供。魚介類とナイトビジネスを掛け合わせ、水産流通の新機軸を追求するとともに、商談や情報交換など水産関係者の商機拡大に貢献するスポットの機能も目指している。
漁獲から加工・販売まで手掛けるせたな町の有限会社マーレ旭丸(西田たかお社長、電話0137・87・3455)は、日本海で厳寒期に水揚げするアカシマエビの風味を閉じ込めた「食べるラー油」を打ち出した。家庭料理研究家の監修で開発。10月にオンラインショップで販売を始めた。全国各地の物産展でも出店時に売り込んでいる。
カニの主力商材である海外産のズワイ、タラバが高騰している。デフレに苦悩する日本とは対照的に政府の経済対策などで個人消費の盛り上がりに沸く米国、活需要が著しい中国が相場を主導。日本の大手商社は「米国のマーケットが失速する気配は乏しい。しばらくは高値圏の相場が形成され、タラバのキロ1万円超えが続くだろう」と言い切る。一方、札幌の専門業者は「商社からタラバを仕入れるのが難しい。ズワイも来年の製品確保にめどが立たない」と表情を曇らせる。
株式会社木戸食品(青森県外ケ浜町、木戸宏文社長、電話0174・22・2051)は、陸奥湾産ホタテや海峡サーモンなどを使った冷凍炊き込みご飯「津軽じょっぱりめし」シリーズのインターネット通販を始めた。コロナ禍による巣ごもり需要の取り込みを目指す。
オーストラリア政府は日本向けに水産物の輸出に力を入れている。世界第3位の大規模な漁場を有し、4千種を越える魚種が生息。世界トップクラスの漁業管理や衛生安全基準を満たしていることも優位性を後押ししている。在日大使館はこのほど東京で開催されたシーフードショーに約20年振りに出展し、日本でもすでに実績のある商材から馴染みの薄い商材など幅広く提案した。