秋サケの記録的な不漁が続き、岩手県内でサケ・マス類の海面養殖試験に乗り出す動きが相次ぐ中、今度は釜石市でサクラマスの試験が始まる。釜石湾で稚魚から飼育や越夏試験を行い、陸上では種苗開発に挑戦する海面・内水面一体のプロジェクト。岩手大学が主導し、海面いけすへの稚魚投入は11月の計画だ。高速大容量の第5世代移動通信システム(5G)も活用し、事業化の可能性を見極める。
宮城県産生食用むき身カキが高値で始まった。県漁協は12日、今季の共販入札を開始。初日は計10.25トン(昨年11.9トン)が上場され、10キロの平均単価は前年同期比1割高の4万210円。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う「巣ごもり消費」で量販店が引き合いを強めたためとみられる。高水温などの影響で成育が遅れ、県が指針とする解禁日から約2週間待っての初出荷となったが、放卵は進み身入りも良好だ。
ニチモウ(株)(東京都、松本和明社長)が紋別事業所(内田弘二所長)に建設を進めていたホタテ加工の専用工場が完成し、10月に稼働を開始した。玉冷の増産・販売拡大に向け選別・パッキング機能を先行整備。今後原貝処理施設も整備し、来季には原料から最終製品まで一貫した自社の生産体制を確立する。併せて対米HACCP認定取得を進めて国内外への安定供給を目指す。
噴火湾でカキ養殖に力を入れる森町の(株)イワムラ水産(岩村雅美社長)は、日本最深漁場となる水深70メートル海域での養殖に成功した。夏から秋に7~10度の低い水温帯に垂下し良好な身入りを保つことで、品薄期となる9~10月の生食用出荷が可能となった。岩村雅弘社長代理は「ぎゅっと熟成させ身入りの良いカキになった。中には抱卵前のカキも確認できた」と驚く。今年は1万個を生産し10月中旬ごろまで販売。来季の生産量は3倍に増やす計画だ。
札幌市中央卸売市場の生筋子消流は、昨年比3~4割高の高値相場を形成する中、取扱数量が10月上旬まで堅調に推移している。在庫払底で加工筋が早々にいくらの生産で手当て。一方、量販店は昨年実績を追った販売攻勢で引き合いは強いものの、逆ざやで消耗戦の様相も呈している。
いぶり噴火湾漁協は、ホタテへい死対策の一環で礼文、豊浦支所に計27台の高酸素海水製造ユニットを導入した。今春の耳づり作業から順次、使用している。 コンプレッサー内蔵型で、循環ポンプをつなげると、くみ上げた海水の酸素濃度が一気に上昇する仕組み。近年、高水温に伴う溶存酸素の低下によって、へい死の発生が増加傾向にある中、生存率向上が期待できるため、使用者はホタテ養殖漁家を中心に北海道各地で増えている。
散布漁協の養殖ウニは、9月末で出荷がいったん終了した。コロナ禍による価格低迷が懸念されたが、後半は上値でキロ6千円まで上昇。南晃仁うに養殖部会長は「大きな影響がなくてよかった」と安ど。一方で「例年に比べてへい死が多いことが心配」と話す。出荷は年末に再開する。
いぶり噴火湾漁協のアナゴは、コロナ禍の影響で安値基調だ。7月後半にキロ4千円前後と一時的に上振れたが、9月以降は前年同期と比べ5割安2千円台と安値に振れている。
日高中央漁協浦河地区の高桑陵さんは、天日乾燥の作業効率化と体への負担を減らす新たな道具を自作した。胴縁にピンチを等間隔で取り付けたもの。コンブをまとめて干場に並べられるため、かがむ回数が減り腰への負担が軽減。同様に回収も楽で、急な天候悪化にも素早く対応できる。拾いコンブ中心に今年から本格的に使用している。
水産庁は10月から瀬戸内海の漁業現場をモデル海域として、小型漁船の衝突を防止するためのスマートフォンアプリを利用した実証試験を始めた。衝突事故防止には船舶自動識別装置(AIS)が有効だが、無線設備の搭載が困難な小型の沿岸漁船にはその搭載が現実的でないため、同等の機能を持つアプリに活路を見いだそうと判断した。試験は日本無線(株)(東京都)に委託し実施、実装対象のアプリは「JM─WatcherⅡ」で2021年1月まで行われる。