東日本大震災の発生から11日で丸10年の節目を迎える。巨大地震と大津波、そして原発事故という未曽有の複合災害に見舞われた三陸地方。浜が負った傷は深かったが、この10年の間、復興に向けた取り組みはたゆみなく続けられてきた。漁業資源の減少、コロナ禍における魚価低迷、増え続ける原発汚染処理水……。新たな逆風にあえぎながらも、三陸の漁業者や加工業者らは挑戦をやめず、歩み続ける。
水産庁は沿岸漁業者に資源管理への理解を促すよう働きかけを強化している。改正漁業法成立後、各地の漁業者に法改正についての説明会などを展開してきたが、このほど同庁のウェブサイトからでも閲覧できるパンフレットを発刊。今後どのように沿岸の資源管理が変わっていくのか、その狙いは何なのかをイラストや図表を活用しながらわかりやすく説明している。
1月15日に解禁した日高西部海域(門別~冬島)の毛ガニ漁は苦戦を強いられている。特に序盤のかご入り不振とシケが響き、2月末現在で前年同期の4割。2月中旬から日量が序盤より上向き、浜値も昨年より好値を維持しているものの、餌代などコストが重く、厳しい操業が続いている。
いぶり中央漁協のスケソ刺網は2月26日に終漁した。数量は昨季比12%減の5581トンと、低調だった昨シーズンをさらに下回った。シケ頻発の海況に苦戦を余儀なくされ、後半も伸び悩んだ。キロ平均単価は減産を背景に11%高の107円に付き、金額は2%減の5億9890万円と昨季並みを確保。同漁協の担当者は「操業回数が全体的に少なかった」とし「登別・虎杖浜地区は2月の操業が9回。例年であれば15回程度は出漁していた」と説明する。
留萌管内のミズダコ漁が例年になく苦戦している。日産数量が伸びず、シケ休みも増えたことに加え、浜値はキロ400円台中盤と安値基調。着業者は今年の漁模様に不安を抱いている。
釧路市漁協青年部は昨年からアイナメかご漁に取り組んでいる。普段の操業では使用機会のない船外機船の操作に加え、今年はアイナメの神経じめや花咲ガニかご漁にも挑戦し経験を積む。田名部雄基部長は「さまざまなことを学び経験しようと始めた。漁師としての幅を広げ、ステップアップしていきたい」と意欲を見せる。
松前さくら漁協の養殖コンブは、2月に低気圧による大シケが続いた影響で綱が切れるなどの被害を受けた。着業する木崎吉三理事は「台風並みの大シケだった」と振り返り「ここまで大きな被害は初めて」と話す。
オホーツク海沿岸の漁場造成は、1日に水揚げした紋別漁協を皮切りに順次スタートする。2日に北海道全域を通過した低気圧の影響で流氷が再度接岸したものの4日には沖合に移動。ただ完全に離れていないため注視しながらの操業となりそうだ。今年の漁場造成は1万7500トン以上となる計画で、昨年計画より多く設定されている。
札幌市中央卸売市場の大手仲卸・一鱗共同水産株式会社(本間隆社長)が業態の枠を越え、海鮮居酒屋を舞台に魚食の魅力を発信している。同社が厳選した鮮魚を炉端やイタリア料理の調理法で見た目も味も鮮やかな居酒屋メニューで提供。店舗経営は札幌や東京で夜パフェやリゾットの専門店など飲食業を展開する株式会社GAKU(札幌市、橋本学社長)が担う。既成概念にとらわれず、異業種とのコラボレーションを通じ、水産流通の新たな可能性を開拓しようと奮闘している。
宮城県産「三陸わかめ」の今季初入札会が2月24日、気仙沼市の県漁協わかめ流通センターであった。ボイル塩蔵の上場は前年同期比17%増の110トンに上ったが、平均単価(芯抜き)は10キロ7292円と26%安。不安定な海況や新型コロナウイルスの影響が原因とみられ、東日本大震災前の水準となった。