北海道の秋サケは盛漁期に突入した。水揚げは25日で4万トン台に乗り、平成22年以降の低水準の中では最多ペース。一方、浜値はメスが昨年同期に比べ下方修正に対し、オスは高値推移。輸入鮭鱒の高止まりや円安の急進などで親製品が好環境の半面、魚卵の低調相場が続く消流状況で、産地加工の佳境を迎えている。
標津漁協は今季、船上で魚が生きているうちに血抜き処理する「船上一本じめ」で、秋サケのオスの出荷を始めた。一般公募で「波しぶき」と命名。組合では生鮮に加え、自営工場で山漬け風の塩蔵を製造する。直売店やネット販売を主体に直販、標津産秋サケの知名度向上につなげていく。
大樹漁協(神山久典組合長)は秋サケの加工で、今季からオス銀を使った定塩フィレーの製造販売に取り組む。自営工場に専用機器を新たに導入した。帯広地方卸売市場株式会社と連携し、「とかちの定塩鮭 速鮮力」と銘打って、ワンフローズン製品などを売り込んでいく。
北海道の秋サケ定置は、8月30日操業開始のえりも以東、日本海北部を皮切りにシーズン入りした。浜値は先行のえりも以東、根室海峡などでメスが昨年より安値ながらキロ600円台、オスも同300円台中心と高値圏でスタート。ただ、ヒネ在庫を抱え卵相場は弱く、メスが下げ基調の展開で昨年と異なる出足。全道で12万トン前後の低生産予想、親需要などが絡んで、漁獲動向と価格形成が注目される。
宮城県では、大震災での稚魚被害により今季の秋サケ来遊で大幅減が見込まれることから、県と県さけます増殖協会などの業界が一丸となり種卵確保に全力を挙げる。来遊と河川遡上(そじょう)親魚の昨シーズン比「4割減」(県水産業基盤整備課)を前提に、各ふ化場の旬ごとの確保計画と、不足した場合の海面での網揚げ協力などの対策をまとめた。
頓別漁協は本年度から、札幌市の光塩学園調理製菓専門学校で年2回の出張講座を行う。主力のホタテとサケの漁獲方法や生態を講義するほか、講座前後には調理実習用の食材として無償提供。およそ10年間継続し、産地食材の情報発信とブランドの構築を目指す。
今季の秋サケ商戦を展望する全国大手荷受・荷主取引懇談会が5日、札幌市のホテル・ロイトン札幌で開かれた。商社からの現況報告などを通し、世界のマーケット拡大で、海外産地から日本への仕向けシェアの低下など鮭鱒・魚卵の需給構造の変化を再確認。商品開発、業界挙げた宣伝活動など道産秋サケ製品の価値向上や消流安定策を探った。
岩手県水産技術センター漁業資源部は4日、本年度の同県の秋サケ回帰予報を公表した。230万~607万尾、7006~1万9925トンと予測し、震災年級(平成22年度)が主群の4年魚で回帰することを考慮すると、予測範囲の下限に近づく可能性が大きいとした。下限だと尾数、重量とも昨年度の半分にも届かない不漁となる。
水産総合研究センター北海道区水産研究所さけます資源部によると、本年度の全国秋サケ来遊数は昨年度を下回る見込み。昨年度は5187万尾と4年ぶりに5000万尾台に乗せた。
北海道の秋サケ来遊予測で河川そ上数が親魚捕獲計画を下回る見通しが示されている日本海中・南部地区の漁業者は今季、解禁(石狩管内9月1日、後志・桧山管内同3日)から自主規制措置を実施する。垣網の不設置などで2週間水揚げを遅らせ、減産覚悟で親魚確保に万全を期す。