北海道の秋サケ定置は8月30日操業開始のえりも以東、日本海北部を皮切りにシーズン入りした。出足の浜値はメスが600円後半中心、オスが300円台と堅調。繰越在庫が順調に消化した好環境下、特にメスは強含みの様相も呈しているが、マス卵の搬入量、ガラの輸出停滞など懸念材料も存在。安定消流への価格形成はホタテ減産のオホーツクの漁獲動向などに行方がかかっている。
道漁連経由で道産魚介類を取り扱う全国の卸や商社でつくる「道ぎょれん会」の秋季取引懇談会が1日、東京都内で開かれた。輸出環境変化に伴い内販促進が鍵を握る秋サケの親や輸入原卵の影響を受けるいくら、極端な無い物高に直面するホタテ製品の商戦に向け熱心に情報交換した。
中国への原料輸出は今季、低調な荷動きが予想されている。欧米の販売不振、国内の景気減速などで中国の秋サケ加工業者は原料手当てに慎重。日本国内向けの供給増が見込まれる中、国内の鮭鱒相場も昨年より下方修正され、チリ銀などとの競合で売り場獲得の価格形成が焦点になる。
中国の秋サケ加工業者は震災年の平成23年に鮭鱒全般の原料高と欧米の経済低迷でサケ製品の販売不振に陥り「サケ事業で貯めた10年分の利益を吐き出す欠損を出した」と輸出業者。「以降原料の買い付けが年を追うごとに慎重になっていった」と指摘する。
宮城県水産技術総合センター内水面水産試験場は同県の本年度サケ来遊について、158万8000尾と168万1000尾の2本立ての予測を示した。放流尾数と直近5カ年、3カ年の平均回帰率から算出して2本立てにしたが、いずれにしても昨年度実績(208万5000尾)を2割程度下回る。水揚げは4500トン前後の低水準が見込まれることになる。
岩手県水産技術センターは4日、同県の秋サケ回帰予報を公表した。511万尾、1万6731トンと予測。昨年度(526万尾、1万7575トン)並みとなり、引き続き震災前を大きく下回る。回帰時期は11月下旬が中心で、昨年度に比べ10月下旬から11月中旬が少ない見通しだ。水揚げは1万6千トン程度が見込まれることになる。
今季の秋サケ商戦を展望する全国大手荷受・荷主取引懇談会が4日、札幌市のロイトン札幌で開かれた。北米産ベニザケの豊漁など世界的な鮭鱒生産動向を留意点に意見交換。親製品は中国・加工業者の経営難など輸出環境が厳しく、国内向け冷凍の消流安定策を探った。いくらはマス卵の搬入増が想定され、慎重な価格形成が課題に挙がった。
日高定置漁業者組合は、「銀聖」プロジェクト活動の一環で、日本の食文化などを学ぶ米国人高校生を受け入れ、7月25日、えりも町の歌別さけ・ますふ化場で増殖事業やサケの生態などの講習、サケの裁割実演などを行った。
秋サケの消流環境は、親製品、魚卵製品とも在庫が低水準で新漁入りする。ただ、親は輸入鮭鱒の国内相場が昨年に比べて下方修正、中国の原料需要もルーブル安を背景としたロシア産の安値供給で日本産の消化が停滞している。一方、魚卵は消費の回復途上で価格形成によっては再度縮小が懸念される状況。北海道の秋サケ業界は本年も引き続き、国内、海外両軸の流通対策を実施、魚価と消流の安定を目指す。
道総研さけます・内水面水産試験場は2日に札幌市で開かれた道連合海区で、ことしの秋サケの資源状況を説明、北海道の総来遊数は昨年比14.8%増の4029万1千尾との予測を示した。予測通りの場合、平成12年以来の低来遊だった昨年から若干回復するものの、漁獲量は12万トン規模で依然低水準が続く。
来年1月からロシア200カイリ内のサケマス流網漁を禁止する法案がロシアで成立したことで、漁業者、水産加工など関連産業、道東の地域経済が大きな打撃を受けることは必至。国、道は対応策の確立などに動き出している。
林芳正農水相は1日、「現地の状況を把握するとともに関係者皆様の意向を聞き、関係省庁とも連携し、万全の対策を講じる」との談話を発表。6、7日に根室市、釧路市、厚岸町に水産庁の担当幹部を派遣、地域経済への影響などを調査する。
道は3日、「北海道北洋漁業対策本部」の初会議を開いた。関係部局・振興局の幹部らが一堂に介し、本部長の高橋はるみ知事は「道東を中心に北海道水産業の危機という認識の下、一丸となってしっかり対応していかなければならない」と述べた。