平成23年3月11日、夕刻から夜半にかけて東日本太平洋沿岸を激震と巨大津波が襲い、多くの人命を奪い、生活と産業を破壊した。あれから丸3年。がれきが撤去されて整地かさ上げが進み、新しい冷蔵庫や加工場で生産が再開された地区もある。盛漁期の水揚げに沸く港がある一方で、現場には「復興は途上、難題も多い」という指摘も。岩手・宮城の各地魚市場卸売人の声を聞くとともに、支援を得ながら共同で商品開発・販路拡大に取り組む両県の加工業界を取材した。
岩手県のイサダ(ツノナシオキアミ)漁が3日始まり、大船渡~宮古の4港に226トンが水揚げ、キロ43~24.4円で販売された。翌4日も含め、価格は昨年ハシリ(2月26日開始)並みで、漁模様、漁場とも不安定な滑り出し。宮城県は3日の漁解禁が延長され、10日からとなる。
イサダ(ツノナシオキアミ)の食用利用に弾みがつきそうだ。公益財団法人岩手生物工学研究センターなどのチームはこのほど、イサダに含まれ肥満の抑制につながる成分を特定するとともに高含有を確認、抽出方法も開発した。サプリメントなど機能性食品や加工食品の原料として製品開発が進められているほか、医薬品としての活用も期待される。
岩手県の水産加工会社や漁協自営工場で、大手自動車メーカーなどの専門家が生産ラインの改善を指導し成果が上がっている。釜石市でこのほど開催された発表会で、缶詰製造のリードタイム短縮を目標に取り組んだ加工場は「生産性が30%向上した」と紹介。大震災の影響で人手不足が深刻化する中、改善による生産の効率化が脚光を浴びそうだ。
岩手県・広田湾漁協広田地区のホタテで14日、大震災以来3年ぶりとなる地種養殖の出荷が始まった。震災前まで悩まされていたへい死が激減したうえ、殼長11.5~13センチと成長も良好な新貝だ。南浜(広田湾)では昨秋の沖洗いで付着物が減った効果も大きく、1連200枚つりで30キロという快調なスタート。北浜(大野湾)では2月15、16日のシケによる落下被害が気掛かりだ。
盛漁期を迎える宮城県産養殖ワカメを低気圧による大シケが直撃し、深刻な被害が発生した。2月8、9日と15、16日の2度にわたるシケで、気仙沼市階上地区の外洋漁場で7~8割、南三陸町志津川地区で5~8割の養殖施設が被害を受け、同町歌津地区では原藻換算1850トン、1億円を超える被害と推定された。
気仙沼市の株式会社阿部長商店(阿部泰浩社長、電話0226・22・6666)は、新商品開発に積極的に取り組んでおり、2月から同社グループ会社より欧州風風味の新商品スペインバル「ajillo×アヒージョ」シリーズの3種を全国販売する。昨年よりグループ各社の店舗などで試験販売して好評なことから、全国展開となった。
1月中旬に始まった道南の松前さくら、福島吉岡両漁協のヤリイカ漁は、シケで思うように出漁できず、苦戦の出足だ。例年の盛漁期が4~5月のため、関係者は漁本格化を待ち望んでいる。
東日本大震災以降、東北太平洋の魚類資源でマダラとヒラメが増え、イカナゴとズワイガニが減った-。こんな発表が8日、仙台市で行われた東北区水産研究所の研究成果報告会であった。漁船の操業、漁獲が大きく減少したことで魚類間の関係に変化が生じ、大型魚が増え、それに捕食され小型魚が減ったと考えられた。
岩手~茨城4県の今季イサダ(ツノナシオキアミ)漁獲枠が10日、3万8700トンと決まった。岩手、宮城両県がそれぞれ1万6000トン、福島県2500トン、茨城県4200トンとなる。昨年に比べ、総枠は4300トン、10%減。岩手、宮城はそれぞれ2000トン、茨城は300トンいずれも減った。昨年産の在庫が考慮された。4県小型漁船漁業連絡協議会が仙台市のホテルで開かれ、例年と同様に生産者の自主規制として決められた。