燃油・資材価格の高騰、地球沸騰化時代の到来とも表される気候変動による海洋環境の変化などの影響に見舞われた昨年の北海道の水産業。新年は東京電力福島第一原発・ALPS処理水の海洋放出に伴う中国の日本産水産物禁輸措置などの対応が引き続き課題となる。年頭に当たり、道水産林務部の山口修司部長と、道漁連の阿部国雄会長に展望を聞いた。
北海道産カキの今季生産量は、歩留まりが向上しているサロマ湖産をはじめ昨季よりも増加する見通しだ。サロマ湖3単協では放卵が多少遅れたため出荷時期を1週間ほど順延したが、身入りは好転し順調な水揚げ。道東の厚岸漁協も夏場の高水温で一時は低歩留まりとなったが、11月以降は徐々に改善し本格出荷に移っている。一方、量販店や業務筋の引き合いは昨年以上に順調で「動きは悪くない」と札幌市場担当者。浜値は本州産減産の影響もあり殻付きが好値を付けている。
札幌市の株式会社メディアプロ(三浦光貴社長、電話011・708・8861)は、料理や商品開発、物販、イベント開催、ブランディングなどトータルで6次化に取り組む生産者をサポートする体制を備えている。メニュー・商品・体験などを通し、産品やそれを生み出す生産者の思い、産地の魅力を発信。応援する消費者の醸成、産地と消費地の新たなつながりの創出を見据え、生産者と一緒に最適な取り組みを見いだしていく。
2023年産の北海道産秋サケの親製品・魚卵製品の供給量は、前年比3割減の約5万3千トンと大幅な減産と、旬期の生鮮消化が進んで低水準となった。荷動きは単価も下方修正され、年明け前は順調。ただ、特に魚卵は競合する海外産マス子の搬入増が見込まれ、道漁連では消流安定に向け、国内の販路確保、輸出先の再構築など各種流通対策に取り組んでいく。
来遊数が約2200万尾と前年の7割に落ち込んで、7年ぶりに3千万尾を超えた22年比4%増の漁期前予測を大幅に下回った昨年(2023年)の北海道の秋サケ。道総研さけます・内水面水産試験場の解析によると、4年魚の19年級が極めて特異な来遊状況となった事象を要因に推察。加えて極度に不振だったえりも以西、日本海は記録的高水温の影響で沿岸来遊前に一定量がへい死した可能性も挙げ、「気候変動に対応した放流手法の開発が急務」との見解を示した。
網走湖でシジミ漁に着業する西網走漁協の嶋田一生さん(嶋田漁業部代表)は「漁師の格好良さを多くの人に伝えたい」との思いから、シジミの商品開発をはじめ活躍の場を広げている。足掛かりに商品化した「八月のしじみ粥」はクラウドファンディングで販売。認知度が向上し網走市のふるさと納税返礼品にも採用された。次なる仕掛けも進行中で、家業と並行しながら網走水産業をアピールしている。
歯舞漁協のウニ漁業者有志5人は、陸上でエゾバフンウニの歩留まり調査に取り組んでいる。シケの多発や高水温、赤潮の発生など海洋環境が変動する中、陸上養殖の可能性を探ろうと2022年度から実施。コンブなど5種類を餌に身入り状況を観察しデータを集積。また、ウニにストレスを与えない扱い方に留意するほか、新たな設備も導入するなど試行錯誤して飼育環境を改善、技術向上を図っている。
水揚げ低迷が続く北海道のコンブ。生産量を示す道水産物検査協会の格付実績は、3月末までの累計(最終実績)が1万2千トン程度にとどまる予想で、過去最低だった前年度実績こそ上回るものの、大幅な回復には至らず、本年度も低水準の生産となる見込み。
道立工業技術センター(函館市)は、だしの品質を向上できる乾燥コンブの加工技術開発に取り組んでいる。加熱や加湿による効果を検討した結果、「高温・高湿度加工」と「低温・高湿度加工」でグルタミン酸濃度が増加し粘性が低下、昆布だしの抽出性向上に有効であることが分かった。今後は温度や相対湿度の条件の最適化を検討していく。
2023年はホタテを取り扱う関係者にとって激動の1年となった。玉冷は長引く円安を背景に海外需要がけん引し価格高騰のまま新シーズンに突入。東京電力福島第一原発のALPS処理水放出後は最大輸出相手国の中国が水産物の禁輸措置を断行し流通環境が一変した。冷凍両貝輸出が止まったことで産地の玉冷生産が増加。国や地方自治体はじめ民間企業の支援、マスコミ報道の影響も奏功し、だぶついた在庫はどうにか消化されている。しかし関係者は「24年が正念場」と強調。23年は8月までに北海道水揚量の4分の1に当たる約10万トンが中国へ輸出されており、24年は膨大な量の消化に向けた代替先確保が最大の焦点となる。