北海道の秋サケは10万7千トンと、平成元年以降ワースト4位の漁獲実績となった。親製品の需要に加え、不漁から魚卵価格も上方修正され、全道のキロ平均単価(11月20日現在)は前年比38円高の450円に上昇した。一方、来季に向け、消流面では親子とも製品価格の高値継続で消費への影響が懸念材料。生産面では斜網地区が急減、根室海峡で不振が続くなど資源動向に不安を残した。
新巻き商戦が大詰めを迎えている。今季は不漁と、国内加工、輸出向けの原料需要で、生産量が低水準。特に小型サイズの水揚げが少なく、小箱(10キロ)は品薄、払底状態。一方、大箱(19.5キロ)は高単価に付く6尾以上の荷動きが鈍く、年内に売り切れるかが焦点だ。
秋サケの国内需要の拡大に向け、秋サケ業界ではすしネタや刺身など「生食」普及への挑戦が続いている。国内の生食サケ市場は回転ずしを中心に拡大しているが、輸入養殖物が売り場を席巻。脂肪分では輸入物の壁は厚いものの、原料の厳選、製法の工夫で高品質を追求。「サケ本来のうま味」の訴求などで商機を追っている。
岩手県の秋サケ水揚げはピークと予測された11月下旬、小幅な伸びにとどまった模様だ。懸念されていた大震災の影響による可能性があり、影響はこれから大きくなるとも見方も。市場別では宮古が1日2万~3万尾ペースで好調を維持するが、減ったところもある。価格はメスが800円前後から700円台後半と高値張り付き、オスは下げ傾向で中値200円台前半に。
鹿部町の(有)嘉楽(辻合明男社長、電話01372・7・3489)は、熟成と脱水を同時に最適に仕上げる製法を開発した。うま味成分が濃く、鮮度、歯応えも兼ね備えた刺身商材を目指した挑戦が結実。日高の秋サケブランド「銀聖」を皮切りに、他魚種に応用、商品化を進めていく。
同社は、ニシン・数の子を主力にサケ・マス、いくら・すじこ・たらこ、刺身・とばなどを手掛け、年商117億円(平成26年3月期)を誇る。加えて、近年商品・販売戦略で力を入れているのが過熱蒸気による焼成商品だ。
過熱蒸気は、100度で蒸発した飽和水蒸気をさらに加熱した高温の蒸気。食品に吹き付け加熱することで、従来のボイルや焼成に比べてうま味や栄養分を逃さずに調理が可能。色目や食感も向上する効果が試験研究機関の実証試験でも確認されている。
岩手県水産技術センター(釜石市)は同市の熊野川にサケ大規模実証試験施設を竣工し、1日、稼働を開始する。サケ稚魚の回帰率向上が目的で、今季から120万尾の飼育密度別試験を予定。回帰率の低迷が続く中、好適な海洋環境下でまとめられた稚魚の生産、放流マニュアルの見直しも含め、現代に合う資源増殖手法を検証していく。
えりも以東海域の秋サケ定置が20日終漁した。水揚げは、西部地区の十勝管内が依然低水準ながら、3年連続で前年を上回った。一方、東部地区の釧路管内は平成22年来の不振を脱せず、特に厚岸以東が低調。昨年より地区間の明暗がくっきり分かれた。
序盤の順調な水揚げから一転、10月以降失速した今季の北海道の秋サケ。道総研さけます・内水面水産試験場は11日開かれた道連合海区で前・中期の来遊状況の特徴を報告。前期の来遊数は最近5年間で2番目に多かった一方、中期の来遊数は、主群となる4年魚の回帰が低調で最近20年間で最も少ないことを示した。
北海道の秋サケは4日でようやく10万トン台に乗せた。日本海では終漁、釧勝地区では1日置きの操業に移っている漁協もあり日量は下降傾向。今季実績は10万トン台が濃厚になりつつあるが、今後の上積みは、根室海峡や日高、オホーツクの最終盤に加え、後期群が厚い胆振、噴火湾、道南の伸びが焦点となる。
枝幸町の有限会社丸二永光水産(永澤二郎社長、電話0163・62・3022)は昨年10月に専用工場を新設し、枝幸産秋サケを使ったスモークサーモンの製造販売に乗り出している。従来フィレー、とば、新巻きなどを手掛けてきた秋サケ加工の幅を広げ、付加価値の向上に取り組んでいく。