燃油・資材価格の高騰、地球沸騰化時代の到来とも表される気候変動による海洋環境の変化などの影響に見舞われた昨年の北海道の水産業。新年は東京電力福島第一原発・ALPS処理水の海洋放出に伴う中国の日本産水産物禁輸措置などの対応が引き続き課題となる。年頭に当たり、道水産林務部の山口修司部長と、道漁連の阿部国雄会長に展望を聞いた。
常呂漁協の若手漁業者で構成するマスコスモ合同会社(柏谷晃一社長)は、6次化の取り組みを一段と拡大している。無添加商品の開発・販売を継続しながら、地場産原料を提供する飲食店舗を年々拡大。出前授業を続けながら昨年は札幌の専門学校に食材を提供し食育事業にも貢献した。「オイシイ。でツナガリタイ。」のコンセプト通り、多角的な運営が実を結んでいる。近く海外輸出にも挑戦する計画だ。
常呂漁協の若手漁業者で構成するマスコスモ合同会社(柏谷晃一社長)は、6次化の取り組みを一段と拡大している。無添加商品の開発・販売を継続しながら、地場産原料を提供する飲食店舗を年々拡大。出前授業を続けながら昨年は札幌の専門学校に食材を提供し食育事業にも貢献した。「オイシイ。でツナガリタイ。」のコンセプト通り、多角的な運営が実を結んでいる。近く海外輸出にも挑戦する計画だ。
公益社団法人青森県栽培漁業振興協会(階上町、代表理事・山﨑結子外ケ浜町長)と八戸学院大の鶴見浩一郎特任教授(海洋付着生物学)は冷水性の高級珍味ミネフジツボの養殖研究で、実用レベルの種苗生産技術開発に世界で初めて成功した。成育に適する餌のプランクトンを発見。養殖普及への可能性が高まり、漁業者の所得向上や観光資源化が期待される。
和洋中さまざまな料理に合い、栄養価も高いホヤ。株式会社涛煌(とうこ、仙台市泉区、佐藤文行社長、電話022・355・6106)は、そんな三陸自慢の“スーパーフード”の地元消費拡大のため生食以外の食べ方の普及に力を注ぐ。一押しのから揚げは下味不要の簡単調理で、加熱しても身が縮まず本来のおいしさを楽しめる。オレンジ色ののれんが目を引くキッチンカーをフル稼働。新たなホヤ食文化を切り開く。
神奈川県では今年度から人手不足の水産業で福祉人材の就労・雇用を促進させるマッチング支援に乗り出した。岩手県の先行事例を参考に、障害者だけに絞らず、高齢者(若年性認知症を含む)、生活困窮者といった幅広い福祉人材を対象にする特色も打ち出している。昨年9月末時点で複数件延べ56人の就労を実現。今後は水産業者、福祉人材の双方で理解を深めるための説明会開催などにも力を入れていく。
2023年はホタテを取り扱う関係者にとって激動の1年となった。玉冷は長引く円安を背景に海外需要がけん引し価格高騰のまま新シーズンに突入。東京電力福島第一原発のALPS処理水放出後は最大輸出相手国の中国が水産物の禁輸措置を断行し流通環境が一変した。冷凍両貝輸出が止まったことで産地の玉冷生産が増加。国や地方自治体はじめ民間企業の支援、マスコミ報道の影響も奏功し、だぶついた在庫はどうにか消化されている。しかし関係者は「24年が正念場」と強調。23年は8月までに北海道水揚量の4分の1に当たる約10万トンが中国へ輸出されており、24年は膨大な量の消化に向けた代替先確保が最大の焦点となる。
道立工業技術センター(函館市)は、だしの品質を向上できる乾燥コンブの加工技術開発に取り組んでいる。加熱や加湿による効果を検討した結果、「高温・高湿度加工」と「低温・高湿度加工」でグルタミン酸濃度が増加し粘性が低下、昆布だしの抽出性向上に有効であることが分かった。今後は温度や相対湿度の条件の最適化を検討していく。
水揚げ低迷が続く北海道のコンブ。生産量を示す道水産物検査協会の格付実績は、3月末までの累計(最終実績)が1万2千トン程度にとどまる予想で、過去最低だった前年度実績こそ上回るものの、大幅な回復には至らず、本年度も低水準の生産となる見込み。
株式会社鯖やのグループ会社で養殖事業を行うフィッシュ・バイオテック株式会社(大阪府豊中市、右田孝宣社長)は完全閉鎖循環型によるサバの陸上養殖に昨年成功した。種苗生産も自社で手掛け、提供もグループの経営店で行うなど一気通貫を実現。サバ一筋にビジネスを拡大した右田社長は、ついにアニサキスのリスクを解消したサバそのものの育成、出荷にまでこぎ着けた。「サバを国民食に。生食文化も広げたい」。創業当初の思いはますます強くなる一方だ。