八雲町とひやま漁協熊石支所サーモン養殖部会が海面養殖に取り組む「北海道二海サーモン」の本格事業化を見据えた動きが進展している。2022年12月には八雲町が、熊石地区に構える種苗生産施設に種卵(発眼卵)10万粒を搬入した。卵の段階から幼魚を成育させる初の試みで、今年11月中旬までに幼魚約3万尾を生産する。
岩手県産アカモクは他産地と比べて機能性成分を多く含んでいることが岩手大農学部の袁春紅准教授(水産食品加工学)らの研究で分かった。採取時期は6月が最適という。アカモク粉末をすり身に添加してかまぼこを試作したところ、アルギン酸の効果で弾力性がアップした。風味に大きな変化はなく、味を維持したまま美容・健康面や色調の変化なども期待できるのは一つの利点とした。袁准教授は機能性成分の流出を抑える加工・保存方法の検討が不可欠とした上で「成分表示を詳細に行うことで商品の差別化ができる。(宮城の)笹かまぼこに負けない練り製品の開発も可能だ。新たな食文化を生み出し、漁業者の所得向上につなげたい」と話す。
昨年12月下旬に閣議決定された国の水産関連予算は、2023年度当初予算が1919億円(前年度1928億円)、22年度第2次補正予算1289億円を合わせ総額3208億円となった。前年度と比べ7億円の増額、補正・当初を合わせた総額は5年連続で3千億円台を確保した。漁業経営安定対策や不漁要因を解明するための資源調査を充実させるなど、持続性のある水産業の成長産業化の実現に向け取り組んでいく。
道総研函館水産試験場が取り組む成熟誘導(人工的に子のう斑を形成させる技術)を利用した早期生産種苗(マコンブ)の試験養殖は昨季、連携する戸井漁協小安地区で通常の促成マコンブに比べて葉幅が広く厚みや乾燥重量も上回る結果が得られた。漁業者の関心も高く、同地区では今季全部会員が種苗を付けたほか、本場折の近隣各浜にも波及、さらなる品質向上に努めていく。
青森県陸奥湾の2022年度秋季実態調査結果がまとまった。今年の半成貝や新貝に向ける稚貝(20年産)の保有枚数は10億2458万枚で、過去10年平均の65%と大きく減少した。県は「親貝が少なく、2~3月の大規模な産卵も見られなかった」ことを要因に挙げている。成貝(20年産)・新貝(21年産)の保有枚数も1億165万枚と低水準で、目安となる1億4千万枚の73%に低下したことから、23年採苗の十分な稚貝確保を考慮し、産卵晩期の3月まで出荷を控え親貝確保に努めるよう要請している。
養殖業を中心に世界的には成長軌道の水産業。日本では天然資源や就業者、魚介類消費量の減少が続いているが、かつての“大国”復活に向け、異分野融合で新たな価値の創造、潜在力を引き出す試みも行われている。元来、「裾野が広い産業」といわれる水産業の進化、未来への希望の光を探る「掛け合わせ(×)」にスポットを当てた。
豊洲など消費地で高い評価を獲得している散布漁協の養殖ウニ。一昨年には地元にウニ種苗生産センターが完成し自前の種苗供給体制が確立、安定した水揚げが見込め後継者対策に寄与する漁業として着業漁家も増える中、養殖場の火散布沼では塩分濃度低下による大量へい死を防ぐため大雨対策にも取り組む。2020年度からは研究機関や企業が行う四胴型自動航行船を用いた水質調査やAI予測の技術開発に協力、ウニ養殖漁業の発展と近代化を図っている。
昆布森漁協青年部(成田大佐部長)は昨年、海洋生態系が吸収する二酸化炭素「ブルーカーボン」の量を調べるためコンブ類の試験養殖を開始した。10年ほど前から漁港内で取り組むトロロコンブ養殖の施設を活用。ナガコンブ、オニコンブ、スジメの種苗も加え計4種を養成。研究機関の協力を得て、これらの大型海藻が二酸化炭素の吸収源としてどの程度の役割を担うのか調査していく。
2019年、長官を最後に水産庁を退官した長谷成人氏。元長官を肩書に一般財団法人東京水産振興会理事として、ほぼフリーな立場で水産業の振興に役立とうと活動を続けている。在庁中は職務により現場との行き来が多く、その間の交流は計り知れない。60年ぶりに誕生した技官出身の長官として漁業者から歓迎の声が上がったほど。活動の原動力は「浜でがんばる漁業者が報われること」。そのスタンスは今も変わらない。
近年低水準の生産で推移している北海道のコンブ。中でも道南の天然はマコンブ、ガゴメとも繁茂不良が著しく水揚げは大幅に減少。資源回復に向けて各浜増産対策に取り組んでいる。南かやべ漁協大船地区は2年養殖(マコンブ)が付く養成綱や種苗糸を海中設置している。胞子を放出させ岩盤に着底、繁茂を促すことが狙い。養成綱は長さ6メートルで、ウニやアワビの食害を避けるため土俵と浮きを取り付け海底に接触しない状態で設置している。一方、種苗糸は3カ月程度仮植させてコンブが平均10~15センチの長さに成長したものを使用。それを長さ約3メートルのロープに巻き付け、同じく土俵と浮きを取り付けている。