真空包装と液体凍結を組み合わせた食品保存・流通の形態が拡大している。歴史の長い形態だが、コロナ禍や現場の人手不足など社会情勢を背景に、食品加工会社だけでなく、外食や小売業などが導入する事例が急増。風味や色みなどを保つ高品質な冷凍保存が可能として、食品ロス削減にも効果を出している。「TOSPACK」ブランドで知られる真空包装機国内最大手の株式会社TOSEI(東京都品川区)は、アルコール急速冷凍機メーカーと協業し、食品製造に関連するあらゆる業態に向けてこの手法を提案。近年は生産者による6次産業化の支援に力を入れる。
三重県漁連の三浦活魚流通センターと長崎県の株式会社松浦養殖は株式会社ニッコーの連続式シルクアイスシステム「海氷」を大きく評価している。両者とも魚の体温が瞬間的に上がってしまう水揚げ直後にシルクアイスを活用。素早く魚体を冷やすことでより高度な品質管理へと昇華させた。さらに安定供給に強い製氷方法を採用しているため、使い勝手がよいのも導入の決め手になった。
道内外の卸売市場に噴火湾産の鮮魚・活魚卸を手掛ける鹿部町の海鮮商店(木元貴光代表、電話01372・7・3254)は、ツブやホッケなど前浜産の付加価値加工品の開発・販売にも取り組んでいる。特にミズダコの頭をうどんのように切った「たこうどん」が2年前の商品化以来、ネーミングのインパクトも受けてSNSやメディアに取り上げられるなど看板商品に成長。鹿部産の発信に一役買っている。
「くら寿司」(くら寿司株式会社運営)は15日、地元の旬の魚を毎週楽しめる「くらの逸品シリーズ」を始めた。こうした取り組みは、これまで地域のご当地回転ずしが得意としていたもので、全国展開する大手回転ずしチェーンとしては初の試み。各地域の漁業者や水産会社とネットワークを築いて完成させた。「地魚地食」をコンセプトに、地域の人が地域で獲れた魚を食べることで、地域の漁業者支援につなげていきたいとしている。
混獲、小型などの規格外、なじみがないなどの理由でマーケットにあまり出回らない「少流通魚」や「未・低利用魚」。物価高の生活防衛術などの観点、サステイナブルや食品ロス削減などの時流を捉え、最近はテレビ番組などがスポットを当て、その利用方法の紹介で出演依頼が相次いでいるのが札幌市西区西野の鮮魚店「鮮魚鯔背(いなせ)」(小野真代表、電話011・303・9101)。2008年の開店当初から扱って調理・料理方法を訴求、固定客をつかんでいる。
宮城県石巻市大谷川浜の漁業者、渡辺隆太さん(ワタキ水産、電話090・1932・6462)はホヤの販路開拓に力を入れている。潜在需要の掘り起こしを目指し開発した味付けホヤが今年1月、県水産加工品品評会で県知事賞を受賞。全国からの注文に製造が追いつかないほどの人気だ。東日本大震災以降、海外向けの需要が激減した県産ホヤは苦境が続くが「東北以外の地域ではホヤを食べたことがない人も多い。国内消費の拡大はまだまだ可能」と気を吐く。
東京都・豊洲市場の折詰ウニ消流は3月後半から入荷量が増え、ダブついている。北方四島産は流氷明けが早く水揚げが順調。道南方面もシケが少なく、安定的に入荷。一方、3年ぶりにコロナ禍の行動制限がない歓送迎会シーズンを迎えたものの、飲食店側は人手確保や経費増加など課題も多く、コロナ前の吸い込みに戻るにはまだ時間がかかっている。
イオンリテール株式会社は低利用魚を商品化につなげる新シリーズを開発し、「トップバリュ モッタイナイお魚シリーズ」として6日「イオン」「イオンスタイル」の本州エリア360店で販売を始めた。混獲魚や、サイズが基準を満たさなかったり、まとまった量が獲れないため商品化されず廃棄の対象となっていた魚を活用する。第1弾は礼文産ホッケなど3魚種5品目を開発。味付けの工夫や焼くだけの簡単調理品として魚食拡大にもつなげる。
1848年(嘉永元年)創業の老舗、株式会社小倉屋山本(大阪市、山本博史社長、電話06・6243・0011)は、ギフトや土産関係の商品展開を強化している。主力のつくだ煮や塩吹きを小瓶に入れたシリーズや女性を意識した新ブランドを打ち出し、手軽なギフト商品として提案。また、昆布のうま味を生かした菓子製品も商品化するなど、2025年開催の日本国際博覧会(大阪・関西万博)を見据え土産品の開発にも取り組んでいる。
3月下旬で開店10年目を迎えた昆布専門店「伝承の味 京昆布」(京都市、谷口寿朗社長、電話075・432・3877)は、昆布を使ったおやつ関係も充実。新商品のあられは真昆布だしのうま味を生かした逸品で好評を博している。あられは各種ミックスした「彩りあられ 萬福」と、硬くない食感で小さな子どもでも食べやすい「ソフト昆布あられ」の2種類展開する。谷口友啓専務は「昆布とかけ離れず京都らしい和を取り入れたおやつを販売したかった」と話す。