天然ブリの全国有数産地となった北海道。2023年は1万トンを超え、農水省集計の海面漁業生産量(養殖業を除く)で長崎県を抑えて全国トップに返り咲いた。今年も春定置時期から乗網し、秋定置の水揚げが注目される。地場消費は依然途上だが、加工品開発も進展。多獲地域では船上活じめなどのブランド品を先導役に需要拡大、魚価底上げの取り組みを続けている。
宮城県は、石巻市渡波の県水産技術総合センター敷地内に「閉鎖循環式陸上養殖研究棟」を新設した。海水温の上昇で天然魚の漁獲が減り、養殖生産物の需要が高まる中、海面やかけ流し式と比べ自然環境や立地、魚種の制約を受けにくい循環式に着目。まずは主力魚種のギンザケとイワナの成長促進や採卵の試験を行い、完全養殖や種苗生産技術の確立を目指す。
宅配すし「銀のさら」を運営する株式会社ライドオンエクスプレス(東京都港区、江見朗社長)と水産加工の株式会社三笑(岩手県大船渡市、佐々木隆男社長)は、冷凍商品「ご自宅にぎり寿司(岩手県秋)」を共同開発した。マグロやホタテ、県産の養殖ギンザケなど10貫分のすしたねとしゃりを提供。家庭で職人気分とおいしさを手軽に味わってもらう。10月15日に県内の道の駅や東京都内のアンテナショップなどで期間・数量限定発売する。
2023年の漁業センサス(速報値)によると、海面漁業の就業者数は前回18年の調査と比べて青森県が18.3%(1540人)減の6855人、岩手県が21.1%(1337人)減の4990人、宮城県が15.8%(982人)減の5242人で、3県とも比較可能な1963年以降で最も少なかった。年代別では65歳以上が全体の4割を占めた。個人で営む経営体が多く、高齢化や後継者不足による減少は今後も続くとみられる。
宮城県塩竈市の市魚市場で12日、メバチマグロの地域ブランド「三陸塩竈ひがしもの」の初競りが行われた。地元の目利きの買受人が脂乗りなどに優れる大型生メバチを厳選。80本が認定され、キロ6千円で取引される個体もあった。刺身やすし種として需要は年々増加。12月まで旬の味として仙台市や東京・豊洲などの市場に出荷される。ひがしものは、マグロ延縄船が9~12月に三陸沖で漁獲し、市魚市場に水揚げした40キロ以上の生メバチの中から、23の認定業者が鮮度や色つや、脂乗り、うま味を基準に厳選したものの称号。市水産振興協議会が2006年に商標を登録した。
東日本大震災で被災した水産加工業の販路回復を後押しする「東北復興水産加工品展示商談会2024」が3、4の両日、仙台市の仙台国際センター展示棟で開かれた。青森、岩手、宮城、福島、茨城、千葉6県の約130社が出展。なじみの前浜ものや水揚げが急増している南方系の魚などを使った加工品を流通や量販、外食産業のバイヤーらに売り込んだ。
株式会社NTTアグリテクノロジー(東京都)の小林弘高マーケティング統括本部長は8月29日、岩手大釜石キャンパスで「完全閉鎖循環式陸上養殖の課題と展望」と題して講演した。通信回線でつながる水質センサーやネットワークカメラなどのIoT機器を駆使し、福島市で実証実験を行うベニザケの陸上養殖について解説。「技術を組み合わせて新たなものを生み出すには、さまざまな分野を飛び越えて取り組むことが重要」と説いた。
2024年の北海道の秋サケ定置網漁が開幕した。平成以降最低の来遊予測が示され、漁獲量は4万トン台前半の低水準が続く見通し。競合する海外産もロシア・米国のマスが不振、為替も絡んで高値相場の様相だが、水揚げの回復を見据え、通年の売り場堅守、消流の安定に向けた価格形成が引き続き焦点となる。道漁連の鳥毛康成参事兼販売第二部長に商戦展望、流通対策の重点などを聞いた。
青森、岩手、宮城の東北3県の秋サケ漁は2019年度から極度の不振が続く。海洋の温暖化によって海流や餌の環境が変わり、放流した稚魚がオホーツク海まで到達しにくくなった可能性などが指摘される。即効性のある対策は見当たらず、24年度も厳しい漁模様となる公算が大きい。各県のまとめによると、23年度の沿岸漁獲量は青森184トン(前年度比65%減)、岩手86トン(同71%減)、宮城13トン(同85%減)。3県とも過去最低で、記録的不漁となった。
2024年に岩手県で生産された海面養殖サーモンは前年比12%増の2031トンに上った。高水温の影響で計画数量に届かなかったものの、深刻な不漁が続く秋サケの23年度沿岸漁獲量(86トン)の24倍。県内6漁協が品質向上や差別化、販路開拓などにも励んでいる。