青森、岩手、宮城の東北3県の秋サケ漁は2019年度から極度の不振が続く。海洋の温暖化によって海流や餌の環境が変わり、放流した稚魚がオホーツク海まで到達しにくくなった可能性などが指摘される。即効性のある対策は見当たらず、24年度も厳しい漁模様となる公算が大きい。各県のまとめによると、23年度の沿岸漁獲量は青森184トン(前年度比65%減)、岩手86トン(同71%減)、宮城13トン(同85%減)。3県とも過去最低で、記録的不漁となった。
2024年に岩手県で生産された海面養殖サーモンは前年比12%増の2031トンに上った。高水温の影響で計画数量に届かなかったものの、深刻な不漁が続く秋サケの23年度沿岸漁獲量(86トン)の24倍。県内6漁協が品質向上や差別化、販路開拓などにも励んでいる。
宮城県漁協によると、2024年の県産養殖ギンザケの水揚量は前年比29%減の1万2982トンにとどまった。高成長が見込める春以降の水温上昇が早く、摂餌量が鈍化したことなどが原因。季節・通年商材として需要は高く、平均単価は同9%高のキロ747円と、22年の724円を上回り平成以降で最高だった。
仙台市中央卸売市場に8月27日、ニタリクジラの生肉が今年初めて入荷した。5月に操業を始めた共同船舶株式会社(東京都中央区、所英樹社長)の新しい捕鯨母船「関鯨丸」(9299トン)が2.1トンを上場。脂の乗った希少な尾肉は1キロ当たり最高で41万円の値が付き、昨年の40万円を上回って過去最高値となった。
宮城県水産技術総合センター(石巻市)は16日、2024年度の県内への秋サケ来遊数を1万尾と予測し、過去最低だった前年度並みにとどまる見通しを示した。海水温の上昇や資源量の減少が響き、最低水準からの回復は困難な状況だ。予測数量は沿岸漁獲と河川捕獲の合計で、シブリング法(前年の2年魚の来遊数から3年魚の来遊数を、前年の3年魚の来遊数から4年魚の来遊数を推定)に基づいた。7千尾~1万6千尾の来遊となる確率が約80%。沿岸漁獲から算出した23年度の平均目廻り(2.78キロ)で換算すると、24年度の予測重量は27.8トン(最少19.5トン~最多44.5トン)となる。
岩手県産養殖干し(本干し)コンブの今季初入札会が9日、宮古市の県漁連北部支所で開かれた。県内4漁協が前年同期比2%減の155トンを上場。減産が計画される中、品質は上々で、主力の棒は同2割高の10キロ2万円前後で落札された。漁協別上場数量は重茂が同8%増の101トン、田老町が同17%減の50トン、小本浜が同35%増の4トン、田野畑村が同59%減の1トン。買受人は「実入り、色つやともに上出来。数は少ないが、モノは良い」と評価した。
岩手県水産技術センター(釜石市)は、東日本大震災の津波で国内から消滅したとされていた欧州原産のヨーロッパヒラガキが同県沿岸で生息していることを確認した。以前はマガキにはない独特の渋みが市場で受け入れられなかったが、現在は世界的に味が評価される高級食材。養殖の事業化に向け、既に種苗生産に成功している。海水温の上昇でホタテなどの不漁が続く中、高温耐性のある新たな資源として漁業者の期待も大きい。
全国で水産業の担い手育成事業「トリトンプロジェクト」を手掛ける一般社団法人フィッシャーマン・ジャパン(FJ、宮城県石巻市、阿部勝太代表理事)は、次世代を担う若手漁業者の安全面もサポートする。ライフジャケットのトップメーカー、高階救命器具株式会社(大阪市、高階義尚社長)と連携。海難事故を防ぐため、常時着用に向けた活動を展開していく。高齢化で後継者不足が深刻な漁業で新たな担い手を増やすFJのさまざまな活動に同社が賛同。コラボ企画の第1弾として、漁労向けブランド「ブルーストーム プロ」の高機能ライフジャケット「TKW-310F(固型式)」「BSP-6120RS(膨脹式)」を、同プロジェクトを通じて新規就業する漁業者にプレゼントする。
青森、岩手、宮城の東北3県はサバの不漁と小型化が続いている。太平洋の不漁要因は資源量の減少ではなく、水温の変化により漁場である沿岸から回遊経路が沖合に移動したためとみられる。
各県のまとめによると、2023年の水揚量は青森4892トン(前年比19%増)、岩手1万5676トン(同28%減)、宮城3万2755トン(同33%減)。青森県は過去5年平均(1万9386トン)の4分の1にとどまった。3県とも、200グラム前後の小型が多い。八戸前沖さばブランド推進協議会は7月25日、定時総会で会の名称を「サバのまち八戸協議会」に変更することを決めた。八戸前沖にサバ水揚げの大半を担う巻網の漁場が形成されず、脂乗りも不十分なため22、23年度と2年連続でブランド認定を見送り、24年度も認定は厳しい見通しにある現状を踏まえた。
水産庁が7月30日に発表した北西太平洋(道東~常磐海域)のサンマ長期漁海況予報によると、今年の漁期(8~12月)を通じた来遊量は漁獲量が過去3番目に少なかった昨年と同等の低水準。また、1歳魚の割合は昨年並み、体重は昨年を下回り、厳しい漁況が続く様相。ただ、日本に近い1区の分布量が昨年より多く、加えて中・大型船が前倒しで出漁予定。商戦の早期本格化と水揚げ増につながる展開が期待される。