八雲町とひやま漁協熊石支所サーモン養殖部会が海面養殖に取り組む「北海道二海サーモン」の本格事業化を見据えた動きが進展している。2022年12月には八雲町が、熊石地区に構える種苗生産施設に種卵(発眼卵)10万粒を搬入した。卵の段階から幼魚を成育させる初の試みで、今年11月中旬までに幼魚約3万尾を生産する。
道総研函館水産試験場が取り組む成熟誘導(人工的に子のう斑を形成させる技術)を利用した早期生産種苗(マコンブ)の試験養殖は昨季、連携する戸井漁協小安地区で通常の促成マコンブに比べて葉幅が広く厚みや乾燥重量も上回る結果が得られた。漁業者の関心も高く、同地区では今季全部会員が種苗を付けたほか、本場折の近隣各浜にも波及、さらなる品質向上に努めていく。
養殖業を中心に世界的には成長軌道の水産業。日本では天然資源や就業者、魚介類消費量の減少が続いているが、かつての“大国”復活に向け、異分野融合で新たな価値の創造、潜在力を引き出す試みも行われている。元来、「裾野が広い産業」といわれる水産業の進化、未来への希望の光を探る「掛け合わせ(×)」にスポットを当てた。
函館の新たなシンボルに―。函館市漁協のサーモン養殖部会は、2022年春の水揚げを皮切りにトラウトサーモン(ニジマス)のブランド「函館サーモン」の海面養殖に挑戦している。前浜での漁業はスルメイカの不振など苦境が続く。国内でも有数の食と観光の都市の新たな水産資源に育て上げようと、漁業者や水産加工会社が奮闘している。
四国や九州が産地として知られる高級食材の天然アオノリが気候変動の影響で不漁に見舞われるなか、北海道産の可能性に光を当てる取り組みが道南で行われている。松前さくら漁協の漁業者3人が収穫、函館市内の企業や団体が流通や海洋教育などを通じた認知度向上を実施。ブランド力アップや販路拡大など克服すべき課題があるものの、食材としての高い評価を獲得しており今後の存在感上昇に期待がかかる。
昆布森漁協青年部(成田大佐部長)は昨年、海洋生態系が吸収する二酸化炭素「ブルーカーボン」の量を調べるためコンブ類の試験養殖を開始した。10年ほど前から漁港内で取り組むトロロコンブ養殖の施設を活用。ナガコンブ、オニコンブ、スジメの種苗も加え計4種を養成。研究機関の協力を得て、これらの大型海藻が二酸化炭素の吸収源としてどの程度の役割を担うのか調査していく。
鹿部町は2022年度から試験的にアオノリ(スジアオノリ)の陸上養殖に取り組んでいる。道内では初めての試みで、先進地高知県の高知大との共同研究。鹿部漁港に設置した水槽で培養液を添加しながら養成、初年度は10回収穫し養殖期間などを検証する。23年度以降は漁業者が主体となって事業を進め、培養技術の確立や販路確保を目指す。天然コンブをはじめ浅海資源が減少する中、新たな漁業種の創出に期待がかかる。
近年低水準の生産で推移している北海道のコンブ。中でも道南の天然はマコンブ、ガゴメとも繁茂不良が著しく水揚げは大幅に減少。資源回復に向けて各浜増産対策に取り組んでいる。南かやべ漁協大船地区は2年養殖(マコンブ)が付く養成綱や種苗糸を海中設置している。胞子を放出させ岩盤に着底、繁茂を促すことが狙い。養成綱は長さ6メートルで、ウニやアワビの食害を避けるため土俵と浮きを取り付け海底に接触しない状態で設置している。一方、種苗糸は3カ月程度仮植させてコンブが平均10~15センチの長さに成長したものを使用。それを長さ約3メートルのロープに巻き付け、同じく土俵と浮きを取り付けている。
豊洲など消費地で高い評価を獲得している散布漁協の養殖ウニ。一昨年には地元にウニ種苗生産センターが完成し自前の種苗供給体制が確立、安定した水揚げが見込め後継者対策に寄与する漁業として着業漁家も増える中、養殖場の火散布沼では塩分濃度低下による大量へい死を防ぐため大雨対策にも取り組む。2020年度からは研究機関や企業が行う四胴型自動航行船を用いた水質調査やAI予測の技術開発に協力、ウニ養殖漁業の発展と近代化を図っている。
北海道のコンブは水揚げ低迷が続いている。道水産物検査協会の道産コンブ格付実績は2021年度まで3年連続で過去最低を更新する1万2千トン台で推移。22年度も4~11月の集計で前年同期を2割下回る8363トンと振るわず、3月末までの最終実績で約1万1千トンに落ち込む見通しとなっている。