昆布森漁協青年部(成田大佐部長)は昨年、海洋生態系が吸収する二酸化炭素「ブルーカーボン」の量を調べるためコンブ類の試験養殖を開始した。10年ほど前から漁港内で取り組むトロロコンブ養殖の施設を活用。ナガコンブ、オニコンブ、スジメの種苗も加え計4種を養成。研究機関の協力を得て、これらの大型海藻が二酸化炭素の吸収源としてどの程度の役割を担うのか調査していく。
2019年、長官を最後に水産庁を退官した長谷成人氏。元長官を肩書に一般財団法人東京水産振興会理事として、ほぼフリーな立場で水産業の振興に役立とうと活動を続けている。在庁中は職務により現場との行き来が多く、その間の交流は計り知れない。60年ぶりに誕生した技官出身の長官として漁業者から歓迎の声が上がったほど。活動の原動力は「浜でがんばる漁業者が報われること」。そのスタンスは今も変わらない。
近年低水準の生産で推移している北海道のコンブ。中でも道南の天然はマコンブ、ガゴメとも繁茂不良が著しく水揚げは大幅に減少。資源回復に向けて各浜増産対策に取り組んでいる。南かやべ漁協大船地区は2年養殖(マコンブ)が付く養成綱や種苗糸を海中設置している。胞子を放出させ岩盤に着底、繁茂を促すことが狙い。養成綱は長さ6メートルで、ウニやアワビの食害を避けるため土俵と浮きを取り付け海底に接触しない状態で設置している。一方、種苗糸は3カ月程度仮植させてコンブが平均10~15センチの長さに成長したものを使用。それを長さ約3メートルのロープに巻き付け、同じく土俵と浮きを取り付けている。
北海道産カキの今季生産量は、昨季と比較し減少する見通しだ。サロマ湖のむき身は湧別、佐呂間漁協が昨年並みだが常呂漁協が伸び悩み、道東の殻付きは厚岸、昆布森漁協とも減少している。量販店や飲食店需要は昨年並みか持ち直しの傾向とみられ、シーズン序盤は好値のスタート。昨年12月にむき身の上場が減った常呂ではキロ1800円と引き合いの良さを示した。各浜では1月以降も消費が続くことに期待している。
北海道のコンブは水揚げ低迷が続いている。道水産物検査協会の道産コンブ格付実績は2021年度まで3年連続で過去最低を更新する1万2千トン台で推移。22年度も4~11月の集計で前年同期を2割下回る8363トンと振るわず、3月末までの最終実績で約1万1千トンに落ち込む見通しとなっている。
北海道の主要魚種であるスルメイカやサンマは昨年も水揚げ低迷が続いたが、イカは11月頭に函館沖(津軽海峡)に外来船が集結し好漁に恵まれたほかサンマは羅臼沖に群れが入り込むなど一時的だが活気を見せた。また道南のニシン、道東のマダラなど各海域で近年水揚げが増えてきた魚種もある。函館頭足類科学研究所所長の桜井泰憲氏に産卵・資源状況や今後の見通しについて聞いた。
2022年のホタテ玉冷は、海外需要の増大とインフレによる急激な円安が追い風となり、輸出主導型の消費形態で始まったものの、後半は米国中心に物価高による消費減退で成約が鈍化。23年は海外経済の減速懸念がより高まっており、先行き不透明感が強まっている。一方内販は、製品高、仕入れコストの上昇で回転ずしを除く業務筋や量販店の引き合いが依然弱い。来シーズンに向け、産地の価格修正を望む声も聞かれ始め、その動向が注目される。
垣根の低いワンストップ窓口に―。北海道大学は、水産学部が拠点とする函館キャンパスで水産業の課題解決や新たな価値創造を旗印に掲げる「地域水産業共創センター」を2022年10月に開設した。産官学金の連携で、地域振興を後押しするシンクタンクを目指す。同センター専任教員の福田覚教授は「北大が蓄積した研究成果を生かし、漁業者でも水産加工会社の関係者でも、ここに来れば何かしらの解決の糸口を持って帰ることができる組織にしたい」と方向性を示す。
産地証明の必要性が高まっている。昨年は熊本県でのアサリの産地偽装、青森県の大間まぐろの横流し、焼津漁協でのカツオの窃盗事件など流通の信頼が揺らぐ事件が注目された。産地から消費地までの流通路を明確にするトレーサビリティーについて、水産ソーシャルベンチャーの株式会社UMITO Partnersの村上春二社長に最新の動向を聞いた。
約8万トン、3千万尾に水揚げが急回復した北海道の秋サケ。越年在庫が低位、輸入物の高値基調などを背景に全道のキロ平均単価(11月20日現在)が前年比1割安の704円と魚価も堅調で、水揚金額は600億円に伸長した。ただ、各海域とも昨年を上回ったものの、太平洋側は依然低水準。背面処理能力の低下もあらためて浮き彫りとなった。一方、消流は親、卵とも供給急増下で高止まり。年末需要期の消費促進、来季に向けて売り場の拡大、在庫の適正化が焦点となる。