全国で水産業の担い手育成事業「トリトンプロジェクト」を手掛ける一般社団法人フィッシャーマン・ジャパン(FJ、宮城県石巻市、阿部勝太代表理事)は、次世代を担う若手漁業者の安全面もサポートする。ライフジャケットのトップメーカー、高階救命器具株式会社(大阪市、高階義尚社長)と連携。海難事故を防ぐため、常時着用に向けた活動を展開していく。高齢化で後継者不足が深刻な漁業で新たな担い手を増やすFJのさまざまな活動に同社が賛同。コラボ企画の第1弾として、漁労向けブランド「ブルーストーム プロ」の高機能ライフジャケット「TKW-310F(固型式)」「BSP-6120RS(膨脹式)」を、同プロジェクトを通じて新規就業する漁業者にプレゼントする。
青森、岩手、宮城の東北3県はサバの不漁と小型化が続いている。太平洋の不漁要因は資源量の減少ではなく、水温の変化により漁場である沿岸から回遊経路が沖合に移動したためとみられる。
各県のまとめによると、2023年の水揚量は青森4892トン(前年比19%増)、岩手1万5676トン(同28%減)、宮城3万2755トン(同33%減)。青森県は過去5年平均(1万9386トン)の4分の1にとどまった。3県とも、200グラム前後の小型が多い。八戸前沖さばブランド推進協議会は7月25日、定時総会で会の名称を「サバのまち八戸協議会」に変更することを決めた。八戸前沖にサバ水揚げの大半を担う巻網の漁場が形成されず、脂乗りも不十分なため22、23年度と2年連続でブランド認定を見送り、24年度も認定は厳しい見通しにある現状を踏まえた。
水産庁が7月30日に発表した北西太平洋(道東~常磐海域)のサンマ長期漁海況予報によると、今年の漁期(8~12月)を通じた来遊量は漁獲量が過去3番目に少なかった昨年と同等の低水準。また、1歳魚の割合は昨年並み、体重は昨年を下回り、厳しい漁況が続く様相。ただ、日本に近い1区の分布量が昨年より多く、加えて中・大型船が前倒しで出漁予定。商戦の早期本格化と水揚げ増につながる展開が期待される。
岩手県水産技術センター(釜石市)は7月31日、2024年度(9月~来年2月)の県内への秋サケ回帰予報を発表した。予測値は数量4万4千尾、重量136トン。いずれも人工ふ化放流事業が本格化した1984年度以降で最低だった前年度並みで、東日本大震災前(2008~10年度の3カ年平均)の1%にも満たない見通し。回帰の中心は12月上中旬とみる。
東日本大震災で被災した三陸・常磐の水産加工業の販路回復・拡大を後押しする「東北復興水産加工品展示商談会2024」が9月3、4の両日、仙台市青葉区の仙台国際センター展示棟で開かれる。同地域の約130社800アイテムが集結。なじみの前浜ものや水揚げが急増している南方系の魚、フードロス問題解消の観点からも注目の未利用魚などを独自の技で加工した多彩な商品を全国のバイヤーにPRする。
遠洋漁業を営む開洋漁業株式会社(青森県八戸市、河村桂吉社長、電話0178・33・1575)は、キンメダイとムラサキイカ(アカイカ)の消費拡大を目指している。八戸港に船凍品を水揚げしてもキンメは流通範囲が狭く、供給過多の状況。不漁のスルメイカに代わる魚種として需要が高まるムラサキイカとともに味の良さを広く発信し、経営の安定につなげる。
コンブの大規模養殖の産業化に向け、理研食品株式会社(宮城県多賀城市、宮澤亨社長)は岩手県大船渡市で実証試験を重ねている。親縄に垂下ロープをつるし、種苗を一定間隔で差し込む垂直養殖方式を採用。間引きせず、漁場の生産能力を最大限発揮させることで食料以外の利活用も目指す。バイオ燃料の製造や、企業活動で出る二酸化炭素(CO2)を海藻による吸収で相殺する「ブルーカーボンオフセット」などに生かしたい考えだ。
水産加工の株式会社マルシュウフーズ(宮城県石巻市、吉田秀樹社長)は12日、手ぶらで地元産カキなどの海鮮バーベキュー(BBQ)を楽しめる飲食施設「オイスターキング」を同市築山にオープンした。定食や丼物といったフードメニューも豊富に用意し、ランチ需要の取り込みも目指す。年間売り上げ目標は5千万円。にぎわいの創出や水産業の活性化につなげる。
中国の水産物輸入停止措置に伴い、ホタテの流通環境は国内外で大きな影響を受けた。海外輸出は北米に加え第三国での保水加工を目的に東南アジア諸国への流通が拡大している。一方、国内では昨年後半の消費応援ムードを背景に量販店や業務筋、ふるさと納税、ECサイト向けの引き合いが増加。各種製品の消化が急速に進んだ。国内を軸に新規販路を獲得した函館市のきゅういちや、保水の国内加工で輸出拡大を目指す極洋、第三国加工で内販を強化するフーディソンなど、供給体制の再構築に向けた動きが加速している。
ホタテ養殖の株式会社隆勝丸(岩手県宮古市、平子昌彦社長、電話0193・65・7910)はまひ性貝毒の影響で、3カ月以上にわたって活貝の出荷ができていない。昨夏の猛暑で大量へい死も経験した。「自然相手の仕事。どうしようもない」。平子社長(宮古漁協理事)は半ば諦めの表情を見せつつ「後世につなぎたい。知恵を絞る」と気合を入れ直す。