水産研究・教育機構水産技術研究所主任研究員の伊藤克敏氏(環境応用部門環境保全部化学物質グループ)は7日、岩手県大槌町で「魚類養殖と漁場環境について」と題して講演した。秋サケの記録的な不漁が続く中、県内ではサケ・マス類の海面養殖試験に乗り出す動きが相次いでいる。伊藤氏は「ワカメやカキ養殖との共存も十分可能。海洋環境と調和した、未来につながる養殖業を作り上げてほしい」と呼び掛けた。
技術開発の向上と漁業者の担い手不足や漁船老朽化を背景に、近代化、省力化が加速している漁船建造と搭載機の業界。水揚げを左右する漁船性能は大きな進化を遂げている。漁業現場で活躍する最新鋭の新造船とともに業界をリードする関連企業の主力製品を紹介する。
宮城県で秋サケの刺網漁が始まり、南三陸町の町地方卸売市場に9月28日、初水揚げがあった。志津川湾沖などで操業した17隻が接岸。水揚量は616キロで、昨年の4割以下にとどまった。10月下旬にかけて最盛期を迎えるが、来遊予測も低調で厳しい状況が続きそうだ。
三陸の浜がサンマの漁獲不振にあえいでいる。9月23日現在、水揚げがあるのは岩手県大船渡のみ。宮古や釜石、隣県宮城の気仙沼や女川の各港に至っては、いまだに初水揚げがない。漁場が遠ざかり、品薄の影響で小ぶりな魚体にも高値が付く状況に「買値が売値を上回って逆ざやになってしまう」と嘆く鮮魚卸もいる。資源量の低下や海洋環境の変化が指摘される中、事態が好転する兆しはなかなか見えないが、関係者は加工など産業の裾野が広いサンマ漁の盛り返しに期待する。
宮城県産生食用むき身カキの今季出荷解禁日が10月12日に決まった。県が定める指針の解禁日は9月29日。「卵持ち」が多く見られたため、同日までに出荷に適した品質にならないと判断した。昨季に比べると5日遅れの初入札となるが、へい死の報告はこれまでほとんどない。昨季比3割増の約1600トン(むき身ベース)の出荷を目指す。
宮城県名取市閖上の(有)マルタ水産(相澤信幸社長)は10月下旬、閖上東地区に地元特産のしらすを使った料理を楽しめる飲食店「cafe malta(カフェマルタ)」(電話022・796・6930)を開店する。貝毒によりアカガイの不振が続く中、2017年に本格的な水揚げが始まった「北限のしらす」を新たな地域ブランドとしてPR。漁業者の所得安定にもつなげる。8月23日には併設の水産加工品直売所が先行オープン。品質と味にこだわる同社自慢の商品ラインアップが買い物客の心をつかんでいる。
「よみがえれ浜のまち」。宮城県石巻市の「FUNADE(フナデ)スタジオ」(田中鉄太郎代表、電話0225・98・8683)は、大漁旗を生かしたファッション小物や洋服、雑貨などを制作・販売している。東日本大震災後、被災した漁師らから譲り受けた約300枚を再利用。端切れを組み合わせて模様にしたパッチワーク柄は目にも鮮やかなカラフルなデザインで、まちと人を元気付けている。
宮城県石巻市小渕浜の阿部水産(阿部祐二代表、電話090・6453・5643)は、ワカメやカキの休漁期にキクラゲの栽培と販売に挑戦している。手塩にかけたキクラゲは潮風を受けてミネラルたっぷり。牡鹿半島で育った「金華きくらげ」として、地域の新たな特産品化を目指す。水産業の閑散期に手軽にできる副業のモデルケースとしても注目を浴びる。
(株)泰興商事(岩手県大船渡市、町田健司社長)のフィッシュソーセージ専用工場であるサンリクフーズ(宮城県気仙沼市)は農林水産省のEU向け輸出水産食品取扱施設(EU・HACCP)の認定を8月27日付で取得した。認定書交付式が7日農水省で行われた。輸出品目は「三陸フィッシュソーセージ ブラックペッパー」「同 チリペッパー」の2品で、宮城県で初の認定。今後はフランスやオランダ、イタリアなどの国々と商談を進め、来年早々には輸出を始めたいとしている。
ロボット開発・製造の炎重工(株)(岩手県滝沢市、古澤洋将社長、電話019・618・3408)は、給餌や活魚移動などの養殖作業の自動化を図るシステム開発に力を入れている。船外機付きのミニボートに独自の制御コントローラを組み合わせた自律移動式船舶ロボット「Marine Drone(マリンドローン)」を10月に本格発売する計画。魚の群れを微弱な電気刺激で誘導する「生体群制御」技術の確立も目指す。担い手不足や高齢化にあえぐ漁業の現状を打破する突破口になるか注目を集める。