秋サケが平成以降最低、コンブが初めて1万トン割れ、ホタテが採苗不振などに見舞われた昨年の北海道の水産業。海洋熱波の発生、黒潮続流の北上など環境変動の影響で先行きが見えなくなっており、新年は海洋環境の変化に対応した生産・経営の安定対策が引き続き課題となる。年頭に当たり、道水産林務部の岡嶋秀典部長と、道漁連の阿部国雄会長に展望を聞いた。
全国漁業協同組合学校(千葉県柏市、坂本雅信校長)の入学者数が2023年度に4人、24年度には3人と2年連続で過去最低を更新した。水産分野に明るい北海道の出身者はこの2年とも2人にとどまっており、学校関係者は危機感を募らせる。一方で、カリキュラムは現場体験型の授業もここ数年で拡張し、より有用な人材の輩出を図る内容にアップデート。学校のPRにも今まで以上に力を注いでいる。
2024年の玉冷消流は、自国生産の減少や保水加工の輸入不足に加え円安基調の為替相場を背景に米国の買い付け姿勢が強まるなど、海外輸出主導の展開となった。製品相場は米国がけん引する形で高騰。産地蔵前の3S相場はシーズン序盤でキロ3千円台に戻り、オホーツク海の操業終盤には4千円の大台超え。さらに年末は4千円台中盤に向かう強含みの状況となった。25年の米国生産も低水準予想で輸出主導型が続く見通し。国内消費の鈍化を懸念する関係者は少なくない。
北海道のコンブ生産は昨年、異例の大減産となった。釧路・根室を中心に一昨年の海水温上昇でコンブが抜けたとみられ生産は低迷。道内全体で初めて1万トンを割り込み、8千トン台まで落ち込む見通しとなっている。
根室市水産研究所は、沿岸資源の回復・増大に向け、各種研究試験や種苗生産に取り組んでいる。花咲ガニは安定した生産技術をほぼ確立し放流尾数は近年連続して最多を更新。ホッカイシマエビも昨年、過去最高の生残率に達するなど飼育技術は着実に進歩。根室市が推進する増養殖事業の中核を担う研究機関として沿岸漁業の振興に寄与している。
後志管内の古平町は道の駅ふるびら「たらこミュージアム」(仮称)を今春4月ごろに開業する。地域産業を下支えする水産加工品のたらこをトリガーに地域活性化を推進。地域観光の拠点としてミュージアム機能を有し、若年層をメインターゲットに歴史あるたらこの町の魅力を新たな切り口で打ち出した温故知新の取り組みで新境地を切り開いていく。
秋サケやシシャモなど主要魚種の水揚げが減少する中、白糠町(棚野孝夫町長)や白糠漁協(山田明組合長)は将来を見据えた新たな取り組みに次々と挑戦している。2022年度から稚貝放流を続けるホタテは間もなく初水揚げを迎える予定のほか、コンブ養殖も計画。ナマコの成長調査やシジミの増養殖実証実験にも取り組む。また、定置で水揚げが急増しているブリの付加価値向上を図りブランド化にも取り組んでいる。
平成以降最低水準の来遊数に後退した昨年(2024年)の北海道の秋サケ。道総研さけます・内水面水産試験場は成熟年齢の若齢化が続いている状況に加え、21年級が3年魚で平成以降最低の来遊数となり、主群となる25年漁期の懸念材料に指摘。また、今後も温暖化の進行が想定される中、サケ資源・漁業の存続に向けて「全道関係者の総力戦が不可欠」と漁業者、漁連、増協、行政、試験研究機関などが一丸となった取り組みを提示した。
標津町の出身者やゆかりの人で構成する東京標津会。同会が東京の代々木公園で開催された北海道フェアに出品したニシンのザンギ(から揚げ)が来場者の舌をとりこにした。産地の豊かな資源を何とかしたいとの思いに、会の副会長(当時事務局長)を務める飲食店店主の中村仁さんが、記憶を頼りに商品化につなげた。ニシン×ザンギという北海道色満載のメニューが消費地に受け入れられ、消費が拡大することを願っている。
北海道産カキの今季生産量は、昨季より低水準となる見通し。身入りは回復したもののサロマ湖産が減産傾向。さらに本州産も振るわず、殻付きは輸出向けの買い付けが先行。このため浜値はむき身、殻付きとも昨季の2倍近く高騰している。需要期を迎えた量販店、業務筋の引き合いは順調だが「注文に応えられていない」と札幌市場担当者。この先の推移を見守っている。