北海道の秋サケ定置網漁は今週から全網がそろって本格化する。未知の漁獲量3万トン割れも想定される前年比35%減の来遊予測下、出足の水揚げは日高・釧勝を中心に昨年に比べて良好。浜値は生鮮需要が好漁のサンマにシフトし、高水準ながら昨年より冷静に滑り出した。昨年産の在庫薄、海外産の高値相場などの流通環境を踏まえた売り場の堅守、円滑消流への適正価格の形成が例年以上に試されるシーズン。盛漁期に向かって大所・オホーツクをはじめ日量動向が注目される。
漁業部門(有限会社三水漁業)の定置船「漁吉丸」を持ち、北海道日高のサケ・マスの加工を手掛ける浦河町の三協水産株式会社(小西哲平社長、電話0146・22・2075)は今年から春定置のサクラマスの加工販売に力を入れる。従来の塩切り身に加え、旬期に生原料で製造する「生仕立て」のスモークサーモンを打ち出した。
東京都・豊洲市場の秋サケ生筋子消流は、北海道の定置網漁の水揚げが好スタートを切り、各仲卸業者が航空便、陸送便の入荷品を目利きし、品質や価格帯の幅を広げて販促に乗り出している。ただ、大口の飲食店や量販店ではサンマの取り扱いに力を入れており、生筋子の需要はまだ限定的。近年では冷静な相場で滑り出している。卸値は航空便でキロ1万1千円ほど。定置解禁直後としては近年に比べ千円ほど安値。根室産を扱う仲卸は「今年は荷が集まりやすかった。8月下旬より1500~千円ほど安くなっている。陸送品ならどれも1万円を切るようになった」と手応えを話す。
8月26日に東京都内のホテルで開かれた「道ぎょれん会」の秋季取引懇談会で、秋サケ製品に関する分科会では、減産予測下も冷静に旬の生鮮商戦にあたって通年商材としても末端の需要に応えられる製品供給に向けた価格形成に努めることで共有を図った。道漁連の役員や担当職員、道内企業の関東担当部署、東日本地域の商社、卸業者らが意見を交わした。道漁連からは労働力不足による加工処理能力の低下が顕在化していることなど産地の現状を報告。水揚げが集中した際でも滞りなく加工処理が進むよう広域処理体制で加工場をフル稼働させるなどの対応策も示した。その状況下で「親製品、卵製品とも落ち着いた浜値を形成できるかが商戦の行方を左右する」と指摘。9月下旬から10月中旬までの実質3週間の盛漁期に、いかに冷静な浜値で原魚を確保できるかを参加者らと共有した。
水産研究・教育機構水産資源研究所が昨夏にベーリング海で実施した資源生態調査でサケのCPUE(1時間引網当たりの漁獲尾数)の平均は2007年の調査開始以降で平年並みだった。ただ、年齢組成は22年級の2年魚の割合が平年比8割と少なかった一方、昨年に日本への回帰数が平成以降最低だった21年級の3年魚は平年比1.6倍だった。
網走漁協のサケマス定置網で、秋サケが低調な滑り出しとなった。初日の2100尾以降、水揚量が伸びず、秋サケ定置網漁の本番を前に、着業者は不安な表情を見せている。一方、浜値は高値基調。オスメス混みでキロ千円台前半と堅調にスタートした。9月1日~8日に14軒31カ統で操業。1日が6軒で2160尾、2日は13軒で2100尾。浜値は1日がキロ1378円、2日は1414円。同漁協市場によると「目廻りは3.2キロ。昨年の出足も1300尾程度。あまり変わらない」と話す。
2025年の北海道の秋サケ定置網漁がシーズン入りした。漁期前予測では未知の低生産。加えて在庫薄、海外産の高値相場などで製品単価は強含みの様相で、引き続き、水揚げの回復も見据えた国内外の販路堅守、消流促進が課題に挙がる。道漁連販売第二部の倉地宏樹参事(販売第二部長事務取扱)に商戦展望、流通対策の重点などを聞いた。
道漁連、北海道秋鮭普及協議会は今年の秋サケ生鮮販促で、SNSのLINE広告を活用したターゲティング戦略の新たな消流宣伝を展開する。併せて連動した道産水産物が当たるキャンペーンの当選者を拡充し、訴求力をアップ。POPなどによる店頭販促、動画配信のレシピ提案も引き続き実施し、「旬」や「北海道産」を前面に生秋サケ、生筋子の消費拡大を図っていく。
近年回帰数の減少とともに成熟年齢の若齢化がみられている北海道のサケ。道総研さけます・内水面試験場では成長と生残や成熟との関係が変化してきている状況に着目、解析を進めている。成長と生残の関係では降海1年目の初期生残率が低下する一方、初期成長が上昇傾向で初期の高成長が生残の条件になっていることを示唆している可能性を推察。「変動する海洋環境がサケにとって厳しくなっている表れの一つ」との見解を示す。
商社筋によると、チリ産ギンザケの直近価格は4月の帰路1250円をピークに、この2~3カ月で若干下がり1100円前後で推移。ただ、高値傾向は依然続いており、日本側は慎重な買い付けに徹している。