東京都・豊洲市場のスルメイカ消流は、不漁による品不足から入荷量がまとまらず、相場が高騰している。1月上旬現在の最大サイズの5キロ15尾は箱単価で9千~8千円と、1尾当たり600円ほど。また、10尾は皆無で、サイズ面でも供給不足が生じている。各流通業者は「一般的に扱える相場からかけ離れている」と、仕入れには慎重。一方で仲卸業者は「ヤリイカやアオリイカなどに比べれば安く、それらの代替品としてなら割り切る人もいる」と話す。
水産庁や水産関連団体のトップは5日、東京都内でそれぞれ年頭会見を開き、昨年の回顧や今年の展望を示した。それぞれ1日に発生した能登半島地震への被害状況の把握や対応に全力を注ぐことを強調。一刻も早い復旧・復興を祈念した。昨年を振り返ってはALPS処理水放出に伴う輸入規制など業界を取り巻く環境は依然厳しいと捉える一方、「水産業を応援したい」など国民の視線や関心が業界に集まった年であったと受け止めている。この機運を逃さず、本年こそ強い産業にしたいとおのおの意気込みを示している。
漁業情報サービスセンター(JAFIC)は2023年の日本周辺漁海況の特徴を取りまとめ、このほど公表した。黒潮大蛇行が継続する中、北部太平洋や日本海の沖合を中心に高めの水温が続いたと総括した。黒潮大蛇行を巡っては、少なくとも今後半年程度は維持されるのではないかと推察している。
燃油・資材価格の高騰、海洋環境の変化による水産資源の減少・変動などに加え、ALPS処理水の海洋放出に伴う中国の日本産水産物禁輸措置といった難題を抱えた水産業界。ただ、足元の現場では逆境を乗り越えるための努力を重ねている。新年が夢と希望に満ちた年になることを祈念して、「水産UP(アップ)」と題し、進化や向上に挑む事例を取り上げた。
画像認識や知能処理ソフトウエアなどを研究開発する株式会社トラスト・テクノロジー(東京都国立市、山本隆一郎社長、電話042・843・0316)は、AI画像処理によるアニサキス検知システムを開発した。魚の筋や骨、トレーに反応する“誤検知”を克服し、切り身をトレーに乗せたまま検査機を通過させれば瞬時にアニサキスの有無を見分けることができ、難しかった自動化を確立させた。生産現場の検査の負担を軽減できる画期的なシステムとなりそうだ。
北海道・東北で従来あまり見かけなかった南方魚の水揚げが増えている。その影響で東京都・豊洲市場では魚種と産地名に違和感を抱く商材も並ぶようになった。都内で鮮魚・活魚を扱う水産関係者は「浜で急に獲れ始めた魚があれば、まずはブリの付加価値対策を手本に扱い方を研究してほしい。初めは相場が安くても情報収集や適切な鮮度管理で単価アップにつながる」と鼓舞する。
二酸化炭素由来の炭素(カーボン)が海藻・海草の吸収と固定で海洋生態系に取り込まれた状態の「ブルーカーボン」。政府は今年度から国連に毎年報告する国内の温室効果ガス排出量を、ブルーカーボンとなった炭素の量を差し引いて算出する方針にするなど、環境保全への可能性に注目している。ブルーカーボンや藻場利用に詳しい株式会社UMITO Partnersの岩本愛さんに直近の状況を聞いた。
豊洲市場に隣接する観光施設「豊洲 千客万来」が2月1日にオープンする。東京都の公募で選ばれた温浴・宿泊施設の運営で有名な万葉倶楽部株式会社がプロデュースする。水産仲卸棟と同じ6街区で開設され、食楽棟(商業棟)「豊洲場外 江戸前市場」と温浴棟(温泉・ホテル)「東京豊洲 万葉倶楽部」の2エリアで構成する。水産物の魅力を発信・体験できる施設として期待されている。
株式会社鯖やのグループ会社で養殖事業を行うフィッシュ・バイオテック株式会社(大阪府豊中市、右田孝宣社長)は完全閉鎖循環型によるサバの陸上養殖に昨年成功した。種苗生産も自社で手掛け、提供もグループの経営店で行うなど一気通貫を実現。サバ一筋にビジネスを拡大した右田社長は、ついにアニサキスのリスクを解消したサバそのものの育成、出荷にまでこぎ着けた。「サバを国民食に。生食文化も広げたい」。創業当初の思いはますます強くなる一方だ。
2023年はホタテを取り扱う関係者にとって激動の1年となった。玉冷は長引く円安を背景に海外需要がけん引し価格高騰のまま新シーズンに突入。東京電力福島第一原発のALPS処理水放出後は最大輸出相手国の中国が水産物の禁輸措置を断行し流通環境が一変した。冷凍両貝輸出が止まったことで産地の玉冷生産が増加。国や地方自治体はじめ民間企業の支援、マスコミ報道の影響も奏功し、だぶついた在庫はどうにか消化されている。しかし関係者は「24年が正念場」と強調。23年は8月までに北海道水揚量の4分の1に当たる約10万トンが中国へ輸出されており、24年は膨大な量の消化に向けた代替先確保が最大の焦点となる。