漁業者の手掛ける加工品が、手作り製法や素材本来の風味などで、本物・安全・安心志向の消費者をつかんでいる。漁業の傍らで生産量は限られるが、ニーズを意識し、漁獲物の付加価値を高めるその意欲と工夫は、特産品の創出など漁村地域の活力再生にもつながる。前浜産のPR・普及と併せて加工販売に成長源を見いだす漁業者に着目した。
大阪市東成区にある(株)山本(山本卓秀社長)は大正元年に創業、昆布巻きを柱の一つに製造販売する。「軟らかく仕上がる」という道東産さお前を使用。漬け込みや炊き上げには、長年にわたりつぎ足し、昆布や素材のうま味が凝縮された秘伝のたれを使うなど、こだわりの詰まった逸品。直火窯でじっくりと炊き上げる昔ながらの製法で、同社伝統の味を守り続けている。
札幌市の北海道産品加工販売・株式会社尾白屋(辻義光社長、電話011・612・0468)は、チルドで長期間保存・使用できる「カニむき身」商品を開発した。特殊熱加工で製造後90日程度はゆでたてとそん色ない風味や食感などを保持する独自の殺菌処理技術を確立。供給、品質の安定に向けた生産体制を整え、来年から本格的に製造販売に乗り出す。
カニなど卸・加工の株式会社札幌大成(札幌市、作間健太郎社長、電話011・633・8020)が8月に発売した総菜「海鮮ねばねば ぶっかけ爆弾」。水産具材5種に、「ねばねば素材」のガゴメ昆布とおくら、長いもの3種をブレンド。美容・健康、簡便志向を捉え、通販などの販路を開拓している。
宮城県石巻市の株式会社ヤマトミ(電話0225・94・7770)は、ことし2月に完成した第2工場に最新の「循環式過熱蒸気ロースター」=写真=を導入し、ふっくらと仕上げたサバの塩焼きとみりん焼きを提供している。
道東沖のサンマ漁の水揚げは10月に入っても低調だ。全国の漁獲量は詳しい統計が残る昭和55年以降で過去最低だった平成11年を下回る可能性がでている。主漁場はロシア水域、公海、久慈沖で、道東沖に形成されず苦戦。ロシア水域での操業は漁獲量割当(5万1730トン)を消化し、18日で終漁した。
北海道の秋サケ定置は今季、平成18年以来の甚大な自然災害に見舞われている。9月中旬の台風17号、10月頭の爆弾低気圧に続き、8日から9日にかけて温帯低気圧に変わった台風23号による暴風波浪の影響でオホーツク、根室海峡などで被害が発生。操業断念に追い込まれる漁場が増大するなど事態は深刻だ。
宮城県南三陸町の志津川湾で10月、天然採苗、シングルシード(一粒種)養殖の「あまころ牡蠣」が念願の事業化となった。採苗分散で殼長15ミリ以上の約3万5000個を確保し、11人が個人養殖を開始。来年6、7月、未産卵の生食用殻付で出荷を予定、注目される。
安全・安心で質・量ともに高いポテンシャルを持つ国内のホタテ生産。シケ被害によるオホーツク海沿岸の減産で水揚量の下方修正が余儀なくされたことしは、浜値高騰で玉冷製品価格が大幅に上昇、国内消費は依然として低迷している。今後の生産量や商戦の見通し、流通対策の重点について、道漁連の大谷内優営業第一部長に聞いた。
帯広地方卸売市場株式会社(山室俊晴社長)は、十勝産マツカワの消流拡大への取り組みを続けている。首都圏のホテル、飲食店など本州の納入先も増えてきて、ことしサイズ選別を導入。荷造りも改良し、販売体制をレベルアップしていく。