東日本大震災の発生から11日で丸10年の節目を迎える。巨大地震と大津波、そして原発事故という未曽有の複合災害に見舞われた三陸地方。浜が負った傷は深かったが、この10年の間、復興に向けた取り組みはたゆみなく続けられてきた。漁業資源の減少、コロナ禍における魚価低迷、増え続ける原発汚染処理水……。新たな逆風にあえぎながらも、三陸の漁業者や加工業者らは挑戦をやめず、歩み続ける。
函館市尾札部町の能戸フーズ株式会社(能戸圭恵社長、電話0138・63・3211)は、南茅部産がごめ昆布、真昆布の消費拡大に向け、「食べる」商品の開発・販売を重ねている。女性をターゲットに、美容や健康志向に適応した商品も展開。今年はアフター・ウィズコロナを見据え、ネットショップ「昆布村」をリニューアルし、直販の強化も進めている。
札幌市中央卸売市場の大手仲卸・一鱗共同水産株式会社(本間隆社長)が業態の枠を越え、海鮮居酒屋を舞台に魚食の魅力を発信している。同社が厳選した鮮魚を炉端やイタリア料理の調理法で見た目も味も鮮やかな居酒屋メニューで提供。店舗経営は札幌や東京で夜パフェやリゾットの専門店など飲食業を展開する株式会社GAKU(札幌市、橋本学社長)が担う。既成概念にとらわれず、異業種とのコラボレーションを通じ、水産流通の新たな可能性を開拓しようと奮闘している。
株式会社極洋は2021年春の新商品として、家庭用商品15品、業務用商品15品の合計30品を3月1日から順次発売する。コロナ禍で生活様式が変わる中、「~ニューノーマルな時代へ~ お客様と共につくるこれからの食卓」をテーマに、(1)内食需要拡大(2)時短簡便(3)惣菜売場パック包装の3つをコンセプトに開発した。
1月10日に開幕した日本海沿岸のニシン刺網は、来遊遅れやシケの影響などで好漁だった昨年を下回る漁模様で推移している。主産地・石狩湾漁協の着業者は「漁期後半の挽回に期待したい」と漁況を注視。一方で低調ペースを背景に生鮮流通、数の子の加工需要の引き合いが堅調。ただ流通関係者らは「末端の消費量が増えている印象はない。昨年のように石狩湾漁協だけで日量100トン超が連日続く展開になると、相場が崩れるだろう」と警戒する。
砂原漁協でホタテ・カキ養殖などを営む岩井漁業部(岩井久樹代表)は、自ら生産したホタテのむき身、カキのボイルなど加工品を作り、地元道の駅「つど~る・プラザ・さわら」で販売している。地域住民や立ち寄り客らの需要をつかんで、手軽に購入できる土産品の一品に定着。今年からムール貝のボイルも新たにラインアップした。
スーパーマーケットを中心とする流通業界に最新情報を発信する商談展示会「第55回スーパーマーケット・トレードショー2021」が17~19日、千葉県の幕張メッセ全館で開催された。首都圏では緊急事態宣言が3月7日まで延長された中、来場者を「完全招待制」とするなど、感染予防策を徹底して実施した。内食需要の高まりによりスーパーの売上高が伸びる中だが、昨年は商談の停滞が続いた。例年より少ない来場者となったが、関係者は新たな商品を発掘したり、先行き不透明な今後を共に考える情報交換の場として活用していた。
コロナ禍による飲食店需要の減退を受け、業務関係の昆布消費が落ち込んでいる。だし昆布のほか、おぼろなど手すき製品も苦戦。ある卸業者は「経費節減など経営努力をしてもしんどい状況」と頭を抱える。
総務省の全国家計調査によると、昨年1年間で1世帯(2人以上)当たりが購入したホタテの平均数量は、前年比26%増571グラムとなり3年連続で増加した。世帯主年齢階級別では全世代が増加、29歳以下は2倍に伸長した。安価に加えコロナ禍に伴う家庭内消費が大きな要因とみられ、国内需要は回復基調をたどっている。
鹿部町の(有)一印高田水産(髙田大成社長、電話01372・7・2013)は今年、噴火湾産のスケソ卵でつくる主力の塩たらこを一新した。合成着色料・発色剤(亜硝酸ナトリウム)不使用で商品訴求の不可欠要素となる「紅色」の色合いを備える新製法に改良。より体にやさしく、消費者が安心できる商品の提供で差別化に臨む。