北海道の秋サケ定置は高水温下、近年最低ペースで盛漁入りの時期を迎えた。9月下旬まではスポット的に一部の浜で上向く兆しも見られるものの、休漁を挟む浜もあって定置業者は海況の好転を切望。降温後、集中水揚げも想定され、浜値を含め動向が注目される。
えりも漁協庶野地区の秋サケ定置が9月上旬に始まったが、序盤は海水温が高く総体的に低調に推移。ただ中旬に入って若干乗網数が上向いてきた漁場もあり、着業者は今後の来遊増に期待を寄せている。
大樹漁協の秋サケ自営加工は、大樹さけ定置共同経営体が手掛ける船上活じめ製品の拡販に取り組んでいる。生鮮出荷に加え、昨年から塩蔵品(新巻き・山漬け)を差別化して売り込み。また、生筋子も血合いがなく、きれいで鮮やかな見栄えなどが評価を得て、量販店からの引き合いが強まっている。
北海道の秋サケ定置漁はオス、メスとも異常高騰の昨年より安値でスタートした。8万トン超の水揚げ予測、昨年産の消化・在庫状況に加え、ロシア・アラスカのマス豊漁などから下方修正の滑り出しは予定調和。ただ、価格形成は全網出そろう今週から本格化。中国の日本産禁輸措置で保管場所を含め冷凍品の行き場に懸念を抱え、生鮮消化の促進、通年商材の売り場再構築に向けた適正価格の見極めなど正念場の年となる。
株式会社ニッスイ(東京都港区、浜田晋吾社長)は、岩手県陸前高田市の広田湾漁協(砂田光保組合長)と共同で、広田湾でギンザケの海面養殖試験を計画している。県と計画内容を協議した上で、11月をめどに着手。漁場環境の調査や生産方法の検討などを行い、2025年ごろまでに事業化したい考え。将来的には年間数千トン規模の生産を目指す。
30日に開幕する北海道の秋サケ定置網漁。水揚げの回復傾向に対応した原魚の円滑処理に加えて、今季はロシア、北米のマスが好漁、東京電力福島第一原発のALPS処理水海洋放出による中国などの日本産への輸入規制など消流に及ぼす懸念材料を抱えている。道漁連の鳥毛康成参事兼販売第二部長に商戦展望、流通対策の重点などを聞いた。
円安や世界的な需要の高まりを背景に、サケ・マス相場が高値傾向で推移しているが、チリ産ギンザケ(冷凍ドレス)の内販価格は軟調に転じている。2022年シーズンのチリギンの国内搬入量は8万2千トンほどと例年に比べて少なかったが、「今年は増える見込み」(商社筋)との見通しで新物シーズンを迎えている。
宮城県漁協によると、2023年の県産養殖ギンザケの水揚量は前年比5.3%増の1万8167トンと当初計画を2割近く上回り、1995年以降で最多だった。平均単価は5.2%安のキロ686円で、平成以降で最高だった昨年に次ぐ高水準。金額は0.2%減の124億6196万円と過去5番目に高かった。
ロシア産カラフトマスの冷凍卵は今年豊漁で昨年の倍増が見込まれている。流通業者は価格の下方修正を踏まえ、不漁年で高騰した昨年産の消化に注力しているが「年末まで目立った需要はない」と戦略の立て直しに苦慮。商社筋は国内在庫の消化が困難な情勢を見越し、年内の搬入を見送る構えも見せている。
今年の秋サケ定置網漁で、河川そ上数が親魚捕獲計画を下回る予測が示されている根室海区(知床岬~納沙布岬)とえりも以東海区(納沙布岬~えりも岬)の漁場が操業始期から自主規制措置を実施する。解禁から自主規制を行うのは両海区とも3年連続。網入れ時期を遅らせ、河川へのそ上を促し、再生産用親魚の確保に万全を期す。