来遊数が約2200万尾と前年の7割に落ち込んで、7年ぶりに3千万尾を超えた22年比4%増の漁期前予測を大幅に下回った昨年(2023年)の北海道の秋サケ。道総研さけます・内水面水産試験場の解析によると、4年魚の19年級が極めて特異な来遊状況となった事象を要因に推察。加えて極度に不振だったえりも以西、日本海は記録的高水温の影響で沿岸来遊前に一定量がへい死した可能性も挙げ、「気候変動に対応した放流手法の開発が急務」との見解を示した。
網走湖でシジミ漁に着業する西網走漁協の嶋田一生さん(嶋田漁業部代表)は「漁師の格好良さを多くの人に伝えたい」との思いから、シジミの商品開発をはじめ活躍の場を広げている。足掛かりに商品化した「八月のしじみ粥」はクラウドファンディングで販売。認知度が向上し網走市のふるさと納税返礼品にも採用された。次なる仕掛けも進行中で、家業と並行しながら網走水産業をアピールしている。
歯舞漁協のウニ漁業者有志5人は、陸上でエゾバフンウニの歩留まり調査に取り組んでいる。シケの多発や高水温、赤潮の発生など海洋環境が変動する中、陸上養殖の可能性を探ろうと2022年度から実施。コンブなど5種類を餌に身入り状況を観察しデータを集積。また、ウニにストレスを与えない扱い方に留意するほか、新たな設備も導入するなど試行錯誤して飼育環境を改善、技術向上を図っている。
水揚げ低迷が続く北海道のコンブ。生産量を示す道水産物検査協会の格付実績は、3月末までの累計(最終実績)が1万2千トン程度にとどまる予想で、過去最低だった前年度実績こそ上回るものの、大幅な回復には至らず、本年度も低水準の生産となる見込み。
道立工業技術センター(函館市)は、だしの品質を向上できる乾燥コンブの加工技術開発に取り組んでいる。加熱や加湿による効果を検討した結果、「高温・高湿度加工」と「低温・高湿度加工」でグルタミン酸濃度が増加し粘性が低下、昆布だしの抽出性向上に有効であることが分かった。今後は温度や相対湿度の条件の最適化を検討していく。
2023年はホタテを取り扱う関係者にとって激動の1年となった。玉冷は長引く円安を背景に海外需要がけん引し価格高騰のまま新シーズンに突入。東京電力福島第一原発のALPS処理水放出後は最大輸出相手国の中国が水産物の禁輸措置を断行し流通環境が一変した。冷凍両貝輸出が止まったことで産地の玉冷生産が増加。国や地方自治体はじめ民間企業の支援、マスコミ報道の影響も奏功し、だぶついた在庫はどうにか消化されている。しかし関係者は「24年が正念場」と強調。23年は8月までに北海道水揚量の4分の1に当たる約10万トンが中国へ輸出されており、24年は膨大な量の消化に向けた代替先確保が最大の焦点となる。
北海道の秋サケは前年比3割減の5万3千トンに後退し、全道のキロ平均単価が1割安の615円と魚価も落ち込んで2020年以来の400億円割れとなった。浜間格差も激しく、えりも以西や日本海は凶漁に見舞われ、漁業経営、増殖事業の運営を直撃。一方、消流は生鮮消化が進んで親子とも製品の供給量は低水準。特にいくらは価格も下方修正となり需要先拡大に好材料だが、昨年産の在庫や海外産マス子との競合が焦点。来季に向けて引き続き各種販路の確保、実消費の促進が命題となる。
野付尾岱沼の根室管内5単協(歯舞・根室・根室湾中部・別海・野付漁協)共同海区が1日にスタートした。29号巽沖造成(16隻)は日産70トン、29号外海造成(11隻)は同28トンペース。巽沖はL・M中心の大型組成。高値はキロ500円台を付けている。
釧路3単協(釧路市、釧路市東部、昆布森)のシシャモは11月28日に終漁した。シケによる沖止めが多く操業日数が昨年比半減の8回に伸び悩んだほか、漁も薄く数量は37%減の29.2トンと減産。加えてキロ平均単価も30%安の2678円に下落、金額(税込み)は56%減の7820万円と昨年実績を大きく下回った。
いぶり噴火湾漁協のたも採り漁が盛漁期に入った。有珠支所のナマコ漁は着業者1人当たり日量30キロ前後、多い人は70キロの水揚げ。資源量は「あまり回復していない」と話す着業者が大半を占めるが、昨年より獲れている場所もあるよう。一方浜値はキロ2千円台前半。中国の禁輸措置に伴い昨年の3~4割安と大幅に落ち込んでいる。