ニチモウ株式会社らが九州で立ち上げた陸上養殖による新ブランド「豊前みらいサーモン」が全国展開への一歩を踏み出した。環境や水産資源に関する社会課題に向き合い、新たな価値を創造することで着手した新事業だが、その取り組みを消費者にも訴求することで“未来を照らすサーモン”として食卓への定着を図っている。
株式会社BKTC(東京都、小瀧由貴社長)は、薬膳の考え方を取り入れた養殖用飼料「約全健美」の開発・販売に力を入れている。同社が商標を持つ「薬膳サーモン」はその代表的な成果。独自飼料がもたらす身質・食味の向上や販売訴求力が注目されている。「薬膳」は近年、健康志向の高まりとともに注目度を増しており、テレビドラマでもテーマになるなど社会的な関心も追い風。小瀧社長の父がスパイスの仲買であった経験も現在の事業につながっており、「薬膳サーモン」の商標を取得し、栄養のエビデンスや認証を付けたブランド魚創出を目指している。
食品機械メーカーの株式会社ドリマックスは万能スーパースライサー/ダイサー(F2000S/D)の解説動画を作成した。プロの販売士であるキングダム中野さんが出演し、1回の切断によるダイスカットや食材の断面がきれいになる仕組みを紹介。豊富な実演シーンと引き込まれる話術が相まって、機械の性能を余すことなく発信している。
中東への水産物輸出で新たな成功モデルが生まれている。岡山県笠岡市の勇和水産(藤井和平社長)は北木島で養殖された冷凍殻付きカキ「EMPEROR OYSTER」をドバイ(アラブ首長国連邦)の五つ星ホテルや高級レストランに輸出し、日本国内以上の価格で取引している。自社の「喜多嬉(きたき)かき」ブランドを海外向けに展開した戦略が実を結び、中東の富裕層の需要を着実に拡大している。
ソフトウエアの企画・開発・運営などを手掛けるオーシャンソリューションテクノロジー株式会社(長崎県佐世保市、水上陽介社長)は、漁業者が漁船から転落した際、船体に通知される救難位置情報システム「トリトンの矛・レスキュー」を開発した。救命具に発信装置を取り付けるもので、自船はもちろん他船への通知も可能となり、転落場所が瞬時に把握できる。このシステムは救命具に取り付けたスマートタグ付き携帯端末(エッジデバイス)が加速度センサーで落下・転倒を検出し、自船に設置したアクセスポイント・IoT機器「トリトンの矛」にSOS信号が発信され、操舵室のタブレットやスマートフォンに表示、転落位置を把握できる仕組み。他船や捜索機に搭載されたトリトンの矛にもSOSを発信できるため、早期発見につなげられるのが最大の特長だ。
大船渡市で2月に発生した大規模林野火災で被害を受けた元正榮北日本水産株式会社は、東京・銀座の岩手県アンテナショップ「いわて銀河プラザ」で開催した復興応援展示即売会(9~10日、大船渡商工会議所主催)に出展した。主力のアワビ製品や、被災を契機に誕生したアワビの貝殻を使ったアクセサリーを販売、クラウドファンディングと連動した支援箱も設置して協力を求めた。来店客の応援を力に変え、再建することを誓った。
コンブ養殖で課題の一つに挙げられるのが品質低下を招くヒドロ虫類(通称「毛」)の付着。過去に大量発生した年は大幅な減産につながったほか、除去にも多大な労力がかかり、その際に発生する粉じんは喉や鼻への健康被害を及ぼすなど漁業者を悩ませている。有効な防除対策がないことから渡島地区水産技術普及指導所では対策検討の基礎資料とするため、ヒドロ虫類の生態把握調査に取り組んでいる。
福島県産の活シャコが東京都・豊洲市場で注目されている。ボイルのチルド・解凍品より調理の幅を広げやすく、自店の味にこだわる飲食店に受け入れられている。また、宮城県産が近年、活出荷が減り、ボイル品の出荷が増加しており、料理人にとって福島県産の活が貴重な存在となっている。
福島県産の相場はキロ3500円と例年並みの価格帯。仕入れた活魚仲卸は「普段は春先から初冬まで宮城県産を扱っていたが、近年入荷が減ってきて、昨年はとうとうなくなりボイル品のみになった。水温・気温の上昇で生かして管理するのが難しくなったのだろう」と眉をひそめる。
川崎重工業株式会社は、食料安全保障への貢献を目指した水産養殖システムを開発して「MINATOMAE」プロジェクトとして推進している。その事業化に向けたステップとして、同社神戸工場の岸壁エリアである神戸港海域で実施していたトラウトサーモンの育成試験の水揚げを4月24日に行い、850尾(1尾当たり平均2キロサイズ)ほどの飼育に成功した。同社の技術を生かした海面閉鎖式養殖で国内最高水準の飼育密度を実現した。「都市近郊での持続可能な海面養殖実現に向けた重要な成果」と同社では受け止めている。
マリノフォーラム21はスマート水産業に関する情報をまとめたサイト「スマート水産業ナビ」を開設した。全国で進められている事例やICT・IoTなど先端技術搭載機器の紹介のほか、実践者をサポートするために従事している“伴走者”同士が情報交流できる場を設けた。成果や知見の共有を図ることでスマート水産業の普及を推進していく。