新規就業者の確保・定着には資金や技術習得の支援などに加え、ハラスメント対策やCSR(企業の社会的責任)なども重要要素になっている。また、小・中・高校など学びの場で漁業に触れる機会を得られても就職先はより良い求人条件を求め、別の業界に進むケースも少なくない。漁業人口や生産量の減少が止まらない中で、若者をはじめ就業志望者は業界の宝。担い手確保や育成を担う各機関ではその宝を発掘、未来につなぐため、それぞれの活動に取り組んでいる。全国漁業就業者確保育成センターは、漁業会社や漁業を営む個人(漁師)を対象に“サポーター”と位置付ける一般会員枠を設けている。担い手の確保や育成を目的とする同センターの活動に賛同する会員を募るもので、働き方改革などに取り組む組織・個人が条件。サポーターを巻き込んで漁業界全体で働きやすい環境を生み出す狙いがある。センターのホームページでも紹介。小・零細企業や個人でも、アクセス数の多い同サイトを通じて、就業希望者へ情報発信できる。参加条件に合致したことを公表することで、特に水産高校の教諭や家族が安心して就職を促せるメリットも生み出す。
閉鎖循環型陸上養殖の水質浄化で課題となる硝酸態窒素の処理。道総研さけます・内水面水産試験場はゼロエミッション化に向け、自然界に排水することなく、生分解樹脂を使って気体窒素に還元する除去技術を開発した。サクラマスの飼育試験では飼育水中に硝酸態窒素が蓄積した環境で飼育した場合、成長やスモルト化(銀化変態)、成熟に影響することも示唆され、飼育魚の成育環境の最適化と併せて道内施設に普及を進めていく。
東京都・豊洲市場のシジミ消流は北海道・大樹産シジミの相場がキロ5千円と同時期に入荷している高価格帯の青森県・十三湖産(2200~2100円)の2倍以上の高値に付いている。毎年調達する固定客を持つ仲卸業者しか扱わない最高級品。仲卸業者は「卸値は年々上がっているが、顧客も増えている」と話す。大樹産は19日と22日の2日間のみ入荷。7月下旬は土用の丑の日でウナギとと共にシジミも「土用しじみ」として需要が高まる時期。販売する仲卸業者は「幻のしじみ」と書かれた付属のポップを付けて大樹産を売り込んでおり「旬にこだわる飲食店が期間限定メニューで提供している。希少性の高さから特別感のある一品に仕上げているのだろう」と推察する。
株式会社極洋は2024年秋の新商品として、市販用商品8品、業務用商品38品の合計46品を9月1日から順次発表する。外食では人手不足対応、家庭ではタイムパフォーマンスや本格的な食品を求められており、「かんたん・本格!こだわりプラス!」をテーマに商品を開発した。市販用では同社初となる「鍋つゆ」市場に参入する。
東京都・豊洲市場の北海道産折詰めウニ(エゾバフン)消流は7月後半に入って相場が落ち着き始めた。シケ絡みで水揚げが振るわず、品薄状態に海の日の連休向けの需要が絡んで高値の展開だったが、連休明けに入荷量が増えたことで反転。仲卸業者は国産品を軸に手ごろな価格の輸入品もそろえて、顧客の予算に合わせた提案を進めている。
株式会社ニッスイは、グループ企業の金子産業株式会社(長崎市)と西南水産株式会社(鹿児島県大島郡)の2社が営む国内の養殖マグロ事業を、金子産業が今年4月に新設した100%子会社の株式会社ニッスイまぐろ(長崎県佐世保市)に承継すると発表した。業務は10月1日の開始予定。事業を一本化し、全体最適を図り、国内養殖マグロ市場のシェア20%を占める存在感を示していくとしている。
WCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)北小委員会が釧路市で15~16日開催され、2025年の太平洋クロマグロの日本の漁獲枠は小型魚で10%増の4407トン(現在4007トン)、大型魚で50%増の8421トン(現在5614トン)とする措置に合意した。11月28日~12月3日にフィジーで開催予定のWCPFC年次会合で正式決定する。
中国の水産物輸入停止措置に伴い、ホタテの流通環境は国内外で大きな影響を受けた。海外輸出は北米に加え第三国での保水加工を目的に東南アジア諸国への流通が拡大している。一方、国内では昨年後半の消費応援ムードを背景に量販店や業務筋、ふるさと納税、ECサイト向けの引き合いが増加。各種製品の消化が急速に進んだ。国内を軸に新規販路を獲得した函館市のきゅういちや、保水の国内加工で輸出拡大を目指す極洋、第三国加工で内販を強化するフーディソンなど、供給体制の再構築に向けた動きが加速している。
中国の禁輸措置でホタテの消費応援ムードが高まった昨年後半の量販各社は、売価を抑え売り場を拡大した結果、玉冷の売上高で1.5倍以上と「特需」に沸いた。しかし年明けから北米、東南アジアの輸出が増大。製品相場は高値に逆戻り、売価も上げ基調で消費が鈍化している。札幌の末端流通や首都圏の消費動向、今後の展開を探る。
玉冷の消流は、中国加工の停滞と円安基調を背景に、北米、東南アジア向けの輸出が依然強まっている。1~5月の輸出量が最も多い米国は前年同期比2.6倍。東南アジアも台湾はじめ各国で伸びている。特に北米中心のバルク優先となり、国内流通は鈍化傾向にある。