養殖業を中心に世界的には成長軌道の水産業。日本では天然資源や就業者、魚介類消費量の減少が続いているが、かつての“大国”復活に向け、異分野融合で新たな価値の創造、潜在力を引き出す試みも行われている。元来、「裾野が広い産業」といわれる水産業の進化、未来への希望の光を探る「掛け合わせ(×)」にスポットを当てた。
マルハニチロ株式会社は、さまざまなテーマや物事を掛け合わせることで、魚の新たな価値や可能性を生み出すアクション「SAKANA ×(サカナクロス)-魚と、その先へ-」を昨年始動した。第1弾がスポーツとの「クロス」。2年目の今年はより幅広いテーマとのクロスを本格化させ、魚食拡大につなげていく。
水産業界はその流通構造から昼夜逆転の生活を強いられる場合がある。例えば漁業者には明け方に帰港し、日中しか睡眠時間がとれない人も多い。不規則で短い睡眠時間になりがちなだけに、寝不足によるトラブルが起きないように質の高い眠りは必要不可欠。トップアスリートらが信頼を寄せる寝具メーカーの西川株式会社に「快眠」のポイントを聞いた。
“代替肉”とも呼ばれる「プラントベースミート」。大豆などの植物性原料を使い、肉の食感に近づけた食品だが、日本でも注目が集まっている。ただ「おいしくなければ定着しない」と危惧し、既存の技術と比較して肉の食感を限りなく再現できる機械の提案が日本でも始まった。食品エンジニアリング商社としてこれまで数々の世界的な食品製造機械を提案してきたNASCO株式会社(中村剛太郎社長)。代替肉の製造現場でもユーザーの開発を後押しする。魚肉への再現も着々と進み、原料難時代の切り札としても期待が高まる。
垣根の低いワンストップ窓口に―。北海道大学は、水産学部が拠点とする函館キャンパスで水産業の課題解決や新たな価値創造を旗印に掲げる「地域水産業共創センター」を2022年10月に開設した。産官学金の連携で、地域振興を後押しするシンクタンクを目指す。同センター専任教員の福田覚教授は「北大が蓄積した研究成果を生かし、漁業者でも水産加工会社の関係者でも、ここに来れば何かしらの解決の糸口を持って帰ることができる組織にしたい」と方向性を示す。
産地証明の必要性が高まっている。昨年は熊本県でのアサリの産地偽装、青森県の大間まぐろの横流し、焼津漁協でのカツオの窃盗事件など流通の信頼が揺らぐ事件が注目された。産地から消費地までの流通路を明確にするトレーサビリティーについて、水産ソーシャルベンチャーの株式会社UMITO Partnersの村上春二社長に最新の動向を聞いた。
岩手県大槌町で2021年に出荷が始まった淡水ギンザケ「桃畑学園サーモン」が注目を集めている。あっさりした味に加え、かわいらしさを意識したネーミングとロゴマークが消費者の心をつかむ。町内ではニッスイグループの弓ヶ浜水産株式会社(鳥取県境港市)がギンザケとトラウトサーモン(ニジマス)の海面養殖事業を拡大中。秋サケの記録的な不漁が続く中、川と海で養殖サーモンのブランド化を目指す取り組みが活発化している。
水月堂物産株式会社(宮城県石巻市、阿部芳寛社長、電話0225・97・5225)が製造販売するホヤの乾燥珍味「ほや酔明(すいめい)」を使ったおにぎりが好評だ。約40年間にわたって東北新幹線の車内販売や土産物として人気を集めてきたほや酔明も、新型コロナウイルス禍で一時売上高は6割減った。新たな市場を開拓して業績回復を狙うとともに、工夫次第で年中味わえる県産ホヤの総菜需要の取り込みにつなげる。
約8万トン、3千万尾に水揚げが急回復した北海道の秋サケ。越年在庫が低位、輸入物の高値基調などを背景に全道のキロ平均単価(11月20日現在)が前年比1割安の704円と魚価も堅調で、水揚金額は600億円に伸長した。ただ、各海域とも昨年を上回ったものの、太平洋側は依然低水準。背面処理能力の低下もあらためて浮き彫りとなった。一方、消流は親、卵とも供給急増下で高止まり。年末需要期の消費促進、来季に向けて売り場の拡大、在庫の適正化が焦点となる。
石川県漁協が今季新設した県産寒ブリの最高級ブランド「煌(きらめき)」の認定が1日始まった。初日は岸端定置網組合(七尾市)が漁獲した1尾が認定され、かなざわ総合市場(金沢市)の初競りで400万円の値が付いた。煌は、2006年に商標登録された寒ブリのブランド「天然能登寒ぶり」の最高位に位置付けられる。認定の基準は▽県内の定置網で獲れた寒ブリ▽重量14キロ以上▽12月~翌年1月の期間限定▽傷がなく胴回りが十分あること―など。