株式会社鯖やのグループ会社で養殖事業を行うフィッシュ・バイオテック株式会社(大阪府豊中市、右田孝宣社長)は完全閉鎖循環型によるサバの陸上養殖に昨年成功した。種苗生産も自社で手掛け、提供もグループの経営店で行うなど一気通貫を実現。サバ一筋にビジネスを拡大した右田社長は、ついにアニサキスのリスクを解消したサバそのものの育成、出荷にまでこぎ着けた。「サバを国民食に。生食文化も広げたい」。創業当初の思いはますます強くなる一方だ。
神奈川県内でマグロの「血合い」に着目し、産業振興につなげる動きが本格化している。全国的にも知られる「三崎マグロ」に新たな価値を見いだすもので、県を中心に研究機関が機能性を実証。地元の産業界でも研究会が発足し、メニュー開発やイメージアップに向けた活動などに乗り出した。注目成分を新たな強みに、県も市も地域振興に本気の構えだ。
舶用エンジンの販売、据付・修理・保守などのサービス事業を展開するセイカダイヤエンジン株式会社(東京都、柴﨑亨社長)は、最先端技術を用いてさまざまな側面で水産業や海洋産業の持続可能な発展に向け取り組んでいる。現場に入り込んで漁業者との協働に着手したことも2023年の成果の一つで、藻場造成に向け動き始めた。今年は各方面で進めてきた検証の実用化に期待が高まる。
水揚げ低迷が続く北海道のコンブ。生産量を示す道水産物検査協会の格付実績は、3月末までの累計(最終実績)が1万2千トン程度にとどまる予想で、過去最低だった前年度実績こそ上回るものの、大幅な回復には至らず、本年度も低水準の生産となる見込み。
画像認識や知能処理ソフトウエアなどを研究開発する株式会社トラスト・テクノロジー(東京都国立市、山本隆一郎社長、電話042・843・0316)は、AI画像処理によるアニサキス検知システムを開発した。魚の筋や骨、トレーに反応する“誤検知”を克服し、切り身をトレーに乗せたまま検査機を通過させれば瞬時にアニサキスの有無を見分けることができ、難しかった自動化を確立させた。生産現場の検査の負担を軽減できる画期的なシステムとなりそうだ。
道立工業技術センター(函館市)は、だしの品質を向上できる乾燥コンブの加工技術開発に取り組んでいる。加熱や加湿による効果を検討した結果、「高温・高湿度加工」と「低温・高湿度加工」でグルタミン酸濃度が増加し粘性が低下、昆布だしの抽出性向上に有効であることが分かった。今後は温度や相対湿度の条件の最適化を検討していく。
北海道産カキの今季生産量は、歩留まりが向上しているサロマ湖産をはじめ昨季よりも増加する見通しだ。サロマ湖3単協では放卵が多少遅れたため出荷時期を1週間ほど順延したが、身入りは好転し順調な水揚げ。道東の厚岸漁協も夏場の高水温で一時は低歩留まりとなったが、11月以降は徐々に改善し本格出荷に移っている。一方、量販店や業務筋の引き合いは昨年以上に順調で「動きは悪くない」と札幌市場担当者。浜値は本州産減産の影響もあり殻付きが好値を付けている。
2023年はホタテを取り扱う関係者にとって激動の1年となった。玉冷は長引く円安を背景に海外需要がけん引し価格高騰のまま新シーズンに突入。東京電力福島第一原発のALPS処理水放出後は最大輸出相手国の中国が水産物の禁輸措置を断行し流通環境が一変した。冷凍両貝輸出が止まったことで産地の玉冷生産が増加。国や地方自治体はじめ民間企業の支援、マスコミ報道の影響も奏功し、だぶついた在庫はどうにか消化されている。しかし関係者は「24年が正念場」と強調。23年は8月までに北海道水揚量の4分の1に当たる約10万トンが中国へ輸出されており、24年は膨大な量の消化に向けた代替先確保が最大の焦点となる。
北海道の秋サケは前年比3割減の5万3千トンに後退し、全道のキロ平均単価が1割安の615円と魚価も落ち込んで2020年以来の400億円割れとなった。浜間格差も激しく、えりも以西や日本海は凶漁に見舞われ、漁業経営、増殖事業の運営を直撃。一方、消流は生鮮消化が進んで親子とも製品の供給量は低水準。特にいくらは価格も下方修正となり需要先拡大に好材料だが、昨年産の在庫や海外産マス子との競合が焦点。来季に向けて引き続き各種販路の確保、実消費の促進が命題となる。
農林水産省と経済産業省は、ジェトロ(日本貿易振興機構)やJFOODO(日本食品海外プロモーションセンター)などと連携し、ALPS処理水の海洋放出以降の一部の国・地域による輸入規制強化を踏まえた「水産業を守る」政策パッケージに基づき、ホタテなど水産物の輸出先の多角化に向け、さまざまな取り組みを実施している。国内外での商談を組成するための新たな施策をこのほど打ち出した。新たな商流構築に向け、着実に取り組んでいくとしている。