株式会社帝国データバンク釧路支店が集計した2022年の北海道内水産加工業売上高ランキングによると、函館市の三印三浦水産株式会社が3年ぶりに首位の座に返り咲いた。上位100社の売上高合計はホタテの輸出、いくらの市況などが好調で2年連続の増加となり、2004年の集計開始以来、初めて5千億円台を突破した。道内に本社を置く水産食料品製造企業の2022年1~12月期決算を集計。上位100社の売上高合計は5085億8900万円で、前年比17.6%(759億6700万円)増加した。
マルスイホールディングスグループの中核会社である丸水札幌中央水産株式会社の2023年3月期決算は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けながらも、秋サケ増産やホタテの価格上昇などで増収となり、7期連続で黒字を確保した。23年3月期から「収益認識に関する会計基準」を適用し、単純比較できないが売上高は前期比0.2%増の512億7497万円。営業部門では毛ガニの取扱数量増やアルゼンチン赤エビの秋口の搬入増に伴う相場下落などが響き、売上総利益率は0.5ポイント低下の4.3%だった。エネルギーコスト上昇などで販管費が膨れ、営業利益は前期比49%減の1億1375万円。
株式会社八戸フーズ(青森県八戸市、関川保幸社長、電話0178・45・7661)はヒラメ加工の増産に乗り出した。5~6月の青森産の取扱量は原料ベースで前年比5倍の100トンに達する見込みだ。新たに導入した三枚おろし機がフル回転。潤沢な冷却殺菌海水と新設の大型チルド庫で鮮度とうま味を保つ。生産性向上と高品質化の両立で取引先の需要をつかむ。
地元産フカ(サメ)肉の消費拡大を目指そうと株式会社阿部長商店(宮城県気仙沼市、阿部泰浩社長)は13日、同市の気仙沼リアス調理製菓専門学校でアレンジレシピコンテストを初開催した。テーマ食材は新商品のフィッシュプロテインバー「meZAme-メザメ」。体づくりをよりサポートするアイデアが次々と披露され、持続可能な開発目標(SDGs)や写真映えなども意識した多彩なサメ肉料理が並んだ。
函館市の合同会社EGAO(電話050・8880・9145)は、函館近海の定置網で漁獲された小ぶりのサバ、ガヤ(エゾメバル)、ウミタナゴの煮魚を商品化した。「未利用魚介プロジェクト」と銘打った共通の商品ラベルを製作・添付。食品ロス削減や持続可能な水産業の一助となる「エシカル消費」などにも訴求していく。
斜里第一漁協の定置業者・有限会社豊慶漁業部(佐藤唯行代表)は昨年から自船「豊慶丸」で漁獲したサクラマス、ホッケなどの加工販売事業に乗り出している。漁業者ならではの鮮度・品質保持技法「船上活じめ」を施し、徹底した血抜き処理で一夜干しを製造。併せて痩せウニ(エゾバフン)の蓄養・加工も試行。地域・組合・前浜資源の知名度向上や魚食普及、定置経営の安定などを目指す。
水産庁は2日、東日本大震災で被災した東北・関東6県の水産加工業者を対象に、2022年度に実施した復興状況に関するアンケート調査の結果を公表した。売り上げが震災前の8割以上にまで回復した業者は半数にとどまり、前回調査と比べてもほぼ横ばいだった。東京電力福島第一原発事故の影響が色濃く残る福島の回復の遅れが目立つ。原材料や人材の不足が復興の足かせになっていることも分かった。
東京都墨田区の繁華街、錦糸町駅近くの飲み比べの専門店「LITTLE SAKE SQUARE」は、イベントで産直の水産物を使ったすし、天ぷら、鍋などを提供している。5月30日~6月4日は函館の水産業者から仕入れ、初めての北海道フェアを実施。特にえさん漁協のブランドホッケ=写真=が好評。来店客らは「ホッケを刺身で食べられることを知らなかった」と驚いていた。
魚介類を敬遠する理由に上げられる魚臭の低減効果を持つチーズホエイ(チーズ製造時の副産物)。既に活用したサバの一夜干しが商品化されているが、道総研食品加工研究センターは同時に指摘される「ふっくら感」を解析。ホエイの浸漬処理でサバの一夜干しの食感を向上させる加工条件を確立した。道内の食品企業に情報提供し、商品化に向けた技術支援を進めていく。
定置網などに入ってもサイズが小さ過ぎたり、なじみがなかったりなど需要が乏しく、流通に乗らない、また価格評価が低い「未・低利用魚」。命や経費をかけて沖に出る漁業者の思いを組んで有効活用の仕組みづくりが函館市で芽生えている。コロナ禍の苦境打開への模索も相まって異業種が呼応。食習慣の形成や漁獲魚種の変化に対応した商品開発など新たな水産物流通の創造に知恵を絞っている。