道南白口浜では1、2月と立て続けに発生した大シケにより養殖施設が被害を受けた。主産地の南かやべ漁協は着業軒数の多い尾札部など各浜で根尾綱や土俵といった施設損壊に加えコンブの絡まりや脱落も発生。「団子状態の施設もあった」(着業者)。浜では土俵の投入など施設復旧を優先的に進めたほかコンブの移植にも取りかかり回復を図る。
今年で3年目の生産となる砂原漁協の促成マコンブ養殖について、兼業で行う着業者は作業工程が計画的に進められ、一定の生産にめどが付き手応えをつかんでいる。代表の河村大助さんは「間引きも順調に進んだ。生育は安定している」と笑顔を見せる。
大阪市中央卸売市場内関連商品売場に小売店舗を構える元木株式会社(元木弘英社長)は、生産低迷が続く道産昆布の現状を踏まえ、多様な商品展開と個客ニーズに即した提案で訴求に努めている。
元木社長は「昆布生産が減少の一途をたどり、欲しい銘柄、等級を必要な分確保するのが難しくなった」と現状を吐露。ただ「昆布屋は昆布がないと商売にならない。今あるものを工夫して売っていくスタイルで商いしている」と考えを示す。その一つが業務用商品の充実。うどんやすしなど料理に携わる「食のプロ」も多い客層を踏まえ日高や羅臼、真昆布といった各銘柄の切葉、根昆布などを1キロの袋詰めで販売する。
札幌市の株式会社北海道海洋熟成(本間一慶社長、電話011・252・7026)は漁業者・漁協の協力を得て、北海道の海域で手掛ける海底熟成酒事業の深化に挑戦している。ふるさと納税返礼品や地元酒販店でのセット販売で前浜産の訴求機会拡大など浜活性化の一助をコンセプトに位置付け。加えて海底熟成時に取り付けるロープなどが海藻類の胞子定着の基質となり、自生の藻場造成につながる可能性に着目し、海洋環境の保全にも寄与する名産品づくりを目指している。
大日本水産会が主催する西日本最大級の食材見本市「第21回シーフードショー大阪」(21、22日にATCホールで開催)では昆布関連企業も出展、担当者がパンフレットや資料を手に味わいやだしの奥深さ、栄養成分など昆布の特長や魅力をPR、自社製品を売り込んだ。
総務省の家計調査によると、昨年1年間の1世帯当たり(2人以上)の昆布購入金額は、富山市の1681円(前年比7%増)が全国主要52都市の中で最も多かった。富山市の全国一は2年連続。昆布つくだ煮は、福井市が2207円(同16%増)で3年ぶりに首位となった。
理研食品株式会社(宮城県多賀城市、宮澤亨社長)を代表機関とするコンソーシアム(共同事業体)は、一年生マコンブと福島県相馬市名産のアオサ(ヒトエグサ)を大規模養殖し二酸化炭素(CO2)の吸収量を増やす研究に着手する。大気中の温室効果ガスを減らす「ネガティブエミッション(負の排出)技術」の実用化に向け、大量生産可能な種苗・養殖生産方法を開発。海洋資源の回復や食料不足の解決、海藻類に吸収・固定されたCO2由来の炭素量の評価基準確立も目指す。
戸井漁協小安地区のコンブ養殖漁業者は、毛(ヒドロゾア)を除去する際に発生する粉じん対策でフレキシブルダクト=写真=を活用している。ダクトの片側の口にファンを連結して稼働。もう片方の口を作業台付近にくるように設置することで、粉じんを吸い込み室内に滞留するのを防止。粉じんが原因とみられる作業者ののどや鼻の諸症状を抑える。
財務省の通関統計によると、2023年の食用干し昆布の輸出数量は前年比6%増の501トンとなった。主力の台湾が1割増え、全体の輸出数量を押し上げた。全体数量は17年以降400トン台で推移していたが7年ぶりに500トンを超えた。キロ平均単価は上昇傾向にあり、23年は前年比13%高の2354円と3年連続の2千円台となった。
函館真昆布の魅力を発信し消費拡大、販売促進への機運を高めることを目的としたイベント「魅力再発見。世界に誇る『函館真昆布』」が21日、函館国際ホテルで開かれた。昆布関係者や市民ら170人余が参加。講演やパネルディスカッションを通し函館真昆布の特性、生産の現状や課題について理解を深めるとともに、昆布料理の試食も振る舞われ、ユネスコ世界無形文化遺産にも登録される「和食」を支えてきた昆布やだしの奥深さを再認識した。