戸井漁協東戸井地区でミツイシ養殖に着業する芳賀浩平さんは今季、施設全6基に成熟誘導(人工的に子のう斑を形成させる技術)を用い生産された種苗を種付け、これまで順調に生育している。また、幹綱に農業用灌水チューブ(ポリエチレン製)=写真=を取り付ける独自の雑海藻対策も効果を発揮、一時大量付着した「アカグサ」もきれいに落ち、コンブの生育にとって良好な施設環境を維持している。
道は「ICT技術等を活用したコンブ生産増大対策事業」として共同乾燥設備モデルの実証試験に取り組み、天日干しに近い仕上がりや乾燥時間短縮などの成果が得られた。一方で、コスト軽減や乾燥のばらつきといった課題も見え、AI技術を活用したシステム制御のシミュレーションによる改良の検証を進めている。2020、21年度の2カ年で実施。16日に札幌の第2水産ビルで報告会を開き、道や事業に携わった株式会社KID釧路の担当者が、オンラインを含め出席した漁業者ら関係者100人以上にシステムの概要や成果を説明した。
道総研釧路水産試験場は、計量魚群探知機を用いた音響計測手法で大型海藻類の判別・繁茂状況を調べる技術開発に取り組んでいる。浜中・落石両地区で実施。音響反応に加え潜水や水中カメラによる実測値も収集し基礎データを蓄積。計測の精度向上を図り、コンブ群落の分布マップを作成し可視化することで、将来的に資源状況の把握や雑海藻駆除の効率化が期待できる。
道総研函館水産試験場が取り組む成熟誘導(人工的に子のう斑を形成させる技術)を利用した早期生産種苗(マコンブ)の試験養殖は昨季、連携する戸井漁協小安地区で通常の促成マコンブに比べて葉幅が広く厚みや乾燥重量も上回る結果が得られた。漁業者の関心も高く、同地区では今季全部会員が種苗を付けたほか、本場折の近隣各浜にも波及、さらなる品質向上に努めていく。
「前浜で進む磯焼けを止めたい」という強い思いから、森漁協元監事の山下良慈さんは、廃材パイプを活用した天然マコンブの着生・育成実験に挑戦し、見事コンブの生成に成功した。実験に使用したのは㈱森機械製作所(佐呂間町)と共同開発した「天然昆布種付着器」。大きな成果を得た2021年度の実験を応用し、22年度は数を増やして円形状に投入した着生実験に挑んでいる。磯焼け対策はもとより、山下さんは炭素吸収源「ブルーカーボン」としての可能性にも期待を寄せている。
昆布森漁協青年部(成田大佐部長)は昨年、海洋生態系が吸収する二酸化炭素「ブルーカーボン」の量を調べるためコンブ類の試験養殖を開始した。10年ほど前から漁港内で取り組むトロロコンブ養殖の施設を活用。ナガコンブ、オニコンブ、スジメの種苗も加え計4種を養成。研究機関の協力を得て、これらの大型海藻が二酸化炭素の吸収源としてどの程度の役割を担うのか調査していく。
近年低水準の生産で推移している北海道のコンブ。中でも道南の天然はマコンブ、ガゴメとも繁茂不良が著しく水揚げは大幅に減少。資源回復に向けて各浜増産対策に取り組んでいる。南かやべ漁協大船地区は2年養殖(マコンブ)が付く養成綱や種苗糸を海中設置している。胞子を放出させ岩盤に着底、繁茂を促すことが狙い。養成綱は長さ6メートルで、ウニやアワビの食害を避けるため土俵と浮きを取り付け海底に接触しない状態で設置している。一方、種苗糸は3カ月程度仮植させてコンブが平均10~15センチの長さに成長したものを使用。それを長さ約3メートルのロープに巻き付け、同じく土俵と浮きを取り付けている。
北海道のコンブは水揚げ低迷が続いている。道水産物検査協会の道産コンブ格付実績は2021年度まで3年連続で過去最低を更新する1万2千トン台で推移。22年度も4~11月の集計で前年同期を2割下回る8363トンと振るわず、3月末までの最終実績で約1万1千トンに落ち込む見通しとなっている。
宮城県漁協北上町十三浜支所青年部グループ(阿部勝太代表)の19生産者(2法人含む)は、国内初となるワカメ・コンブの「ASC-MSC海藻(藻類)認証」を取得した。有機食品や健康・環境配慮の商品で人気を集めるオーガニックスーパーなどで販売。輸出も視野に入れながら、環境への負担を減らし、サステイナブル(持続可能)な生産につなげる。
南かやべ漁協の木直・尾札部両地区が主力の2年養殖は、生育不良でコンブがほとんど付いていない施設も多く、来夏大幅な減産を見込む着業者もいる。木直地区の着業者は「全般的に生育状況が悪く9割は死んだ。水温が影響したのではないか」と話す。わずかに残った箇所も長さが短く生育は不十分。「本来今時期は生育良好な種コンブを選びのれんに挟み込む作業を行うが、今のところ使えるコンブがほぼない」と状況を説明。「今後どれだけ成長するか様子を見て良ければのれんに付ける」と考えを示す。