築地・豊洲市場で50年サケマスの切り身商材を扱う仲卸業者は、高騰を続けるチリ産ギンザケの価格低下を念頭に置いている。ノルウェー産アトランティックサーモンがメイン空輸ルートのロシア領空を通過できない影響から、産地側が冷凍在庫にシフトすることを予想。「北欧で冷凍在庫が増えれば、同じ冷凍品のチリギンが競合してだぶつき、価格も落ちるのでは」と推察する。
石巻魚市場(宮城県石巻市、佐々木茂樹社長)で9日、出荷シーズンが間近に迫った県産養殖ギンザケの受け入れ全体会議があった。同市場への初水揚げ(入荷)は18日で、約6トンを予定。需要が高まる中、関係者は安定した価格と供給を維持したい考えだ。
ロシア・ウクライナ情勢をめぐるサプライチェーンの混乱で、日本に空輸されるノルウェー産サーモンの供給が全国的に不安定になっている。国内の回転ずしチェーンでサーモンの販売を休止する動きも出ている。ノルウェー水産物審議会によると、9日現在、安定的な供給体制を維持するため、ロシア上空を迂回するルートの確保など代替対応の実現に向けて協議を続けているとしている。
宮城県産養殖ギンザケの今季(2022年)生産量は1万6千トン前後になりそうだ。昨季から約200トンの増産となる見込みで、コロナ禍による巣ごもり生活で高止まりする内食需要に対応する。成育が順調に進んでおり、水揚げは例年通り3月中旬ごろに始まる予定。生産者は早期出荷などでチリ産ギンザケとのサイズ競合などを避け、好値維持を図っていく。
今年度の岩手県の秋サケ漁がほぼ終了した。県によると、河川捕獲などを含めた10日現在の回帰量は前年同期比76%減の413トン。3年連続で過去最低を更新することが確実となった。ふ化場の採卵数も大きく落ち込む中、海洋環境の変化に即した放流時期の見直しなど回帰率向上に向けた取り組みが急ピッチで進む。
株式会社極洋は、国産陸上養殖のアトランティックサーモンの販売について伊藤忠商事株式会社と合意した。陸上養殖会社「ピュア・サーモン」グループの日本法人ソウルオブジャパン株式会社(東京都、エロル・エメド社長)が三重県津市に建設中の世界最大級の閉鎖循環式陸上養殖施設で生産されるもので、年産約1万トン(ラウンドベース)を同社と伊藤忠商事グループの両社で2025年から販売する。
オホーツク海沿岸の2022年水揚げ計画は北部、南部合わせた12単協で前年実績比13%減の28万9600トンとなった。前年計画よりも5100トン減とやや下方想定。前年実績より多く設定したのは頓別、枝幸の2単協。前年計画を上回ったのは猿払村、頓別、佐呂間、常呂の4単協で、大半が昨年当初並みの計画量を設定している。
秋サケ製品の消流は、ヒネ在庫の払底や水揚げ不振などから、親、卵とも、供給量は引き続き低水準。ただ、高値形成に加え、競合する海外鮭鱒の搬入増加が見込まれ、道漁連は新漁までの在庫の適正化と売り場の確保を重点に各種対策を講じていく。
3年連続2千万尾割れの低来遊となり、地域間格差も深刻化した昨年(2021年)の北海道の秋サケ。ただ、道総研さけます・内水面水産試験場の解析によると、18年級の3年魚が予測を大幅に上回ったほか、5年魚で回帰した16年級がオホーツクや根室・北部などで高齢化に転じ、資源回復へのサインが現れ、来季に向けて全道規模では光明も差した。
北海道の秋サケは約4万8千トンと、3年連続の5万トン割れとなった。親、卵ともヒネ在庫の払底下、凶漁と競合する輸入鮭鱒の高値相場などで全道のキロ平均単価(11月末現在)は前年比2割高の788円に上昇し、水揚金額は3年ぶりに400億円を超えた。ただ、えりも以西を中心に特に太平洋側の来遊低迷が続き、浜間格差が一層深刻化。一方、消流は三陸の不振も相まって国産の品不足感が強まっているものの、価格上昇による消費鈍化や輸入鮭鱒の動向次第で停滞も懸念される。