日本周辺海域では近年、地球温暖化に伴う海水温の上昇などで回遊性魚類の分布域や回遊範囲の変化が加速し、各地域で新たな漁獲資源への対応に迫られている。2024年9月には北海道渡島地区で定置網にカツオが急に例年にない規模で乗網し、生産者や流通業者らが温度管理の徹底など鮮度・品質維持に力を注いだ。3~4キロの大型魚で脂の乗りが良好だったこともあって道内外の飲食店需要などを獲得し、一部はキロ4千~3千円の高値を実現した。24年に扱った道内外の流通筋から「今年も獲れればぜひ仕入れたい」との声が出ている。
1日付で就任した水産庁の藤田仁司長官と信夫隆生次長、高橋広道漁政部長、福島一増殖推進部長らは同日会見し、今後の方針や抱負を語った。激変する漁業環境にあって課題が山積する中での新体制スタート。「変化に対応する漁業者へのサポート、漁業従事者の待遇を改善したい」などと述べ、業界全体が明るい展望が持てるよう、各施策に取り組むことを決意した。
浦河町と日高中央漁協で構成する「浦河町栽培漁業研究会」は1日、海面養殖試験で育成したトラウトサーモン(ニジマス)を初水揚げした。生残率は9割近く、平均目廻りも2キロと目標に達し、初年度は好実績を挙げた。関係者は「希望が持てる結果」と受け止め、今後改良点などを検討し、2年目の取り組みに反映していく。
渡島噴火湾5単協(長万部・八雲町・落部・森・砂原)の毛ガニ漁は、資源状況が好転し今週前半にも全漁協が許容漁獲量(ノルマ)に達する見込み。組成は9割以上が小で、浜値はキロ4千円前後と昨年の約2割安。1万円以上の高値を付けた大、中が微量で着業者は残念がるが、「来季は期待できる」と前向きに捉えている。
厚岸漁協のワカメ養殖漁業班(神達也班長、14軒)は6月下旬に「どぶ漬け」手法による採苗と養成綱の沖出し作業を行った。どぶ漬けは2011年に試験的に取り入れ、順調な生育と収穫時の本数が多いなどの成果を確認。13年からは全着業者がどぶ漬けを実施。簡易的な手法のため、省力化にもつながっている。 厚岸産めかぶを中心に使い採苗。養成綱は1本100メートル以内。本数は着業者で異なるが、1軒当たり最大12本とする。
道漁連は3日、道昆布事業協同組合の総会で、本年度の道内コンブ生産予想を1万1400トンと発表した。過去最低を大幅に更新する異例の大減産となった昨年度実績(8213トン)に比べて4割増と回復する一方、過去10カ年平均(1万2978トン)比では1割ほど下回り、今季も低水準の生産が見込まれる。
オホーツク海沿岸の漁場造成を含む6月末水揚量は、前年同期比8%減の8万9860トンとなった。北部が3%減の3万9290トン、南部が11%減の5万570トン。全体計画量に対する達成率は34%。頓別、枝幸、常呂、西網走が昨年を上回るペース。歩留まりは6月段階で9~10%前後と低調。アソートも5S中心が多い。一方で浜値はキロ300円前後から200円台中盤の高値で推移している。
苫小牧漁協ホッキけた引漁の夏漁(夏ホッキ部会・工藤政吉部会長)が解禁し、初漁の1日は12隻(32人)で5.4トンを水揚げした。漁業者1人当たりのシーズン漁獲上限は前年より1.5トン多い13.5トンとし、21年の9.25トンから5トン以上増産。1人当たりの日量ノルマは前年比30キロ増の180キロ。漁獲サイズは道の規制が殻長7.5センチ以上に対し、独自基準で9センチ以上に設定。良型のみを出荷している。
宮城県漁協(寺沢春彦組合長)は6月27日、石巻市で2025年度通常総代会を開き、24年度の事業報告を承認した。高水温の影響で主要養殖物の生産量減少や漁船漁業の不漁が続く中、販売事業では乾のりやワカメなどが高値を維持。当期剰余金は前年度比54%増の3億7709万円となり2期連続の黒字を確保。また、海洋環境の激変を受け、未来の浜を切り開いていくため国に対し抜本的な対策実現を求める特別決議も採択した。
宮城県七ケ浜町で、漁業者らが取り組む養殖トリガイの今季出荷が6月27日から始まった。初回水揚げは約50キロ。仙台中央卸売市場に出荷されキロ平均単価1万3千円の値を付けた。町と連携し2019年ごろから試験養殖を開始、4年前から市場にも出荷している同県唯一の養殖トリガイで、関係者らは「町の新たな名物として育てていきたい」と期待を寄せる。