海洋土木の(株)菅原組(函館市、菅原修社長)は、松前沖でのコンブ養殖プロジェクトを立ち上げてから10年目を迎えた昨年暮れ、海藻活用研究会(安井肇会長)と連携しガゴメコンブの養殖を新たに始めた。今後は「松前」のブランドを冠した新たなガゴメ商品開発に取り組む。
スルメイカやサンマなど道内主力魚種の漁獲量が低迷する中、増加傾向のブリやイワシの高付加価値化や消費拡大に向けた取り組みが各地で進む。函館や根室では昨年から道の振興局が音頭を取り地域単位でオリジナルレシピの考案や販促などの各種活動を重ねている。海洋環境など情勢変化に向き合おうと官民連携での模索が続く。
東京五輪・パラリンピックが近づき、水産物輸出にもエコラベル認証が求められる中、業界ではその認証取得の動きが盛んになっている。世界に数ある水産エコラベルの中で日本で誕生した「MEL」が今年、国際標準の規格を持つ認証として認められる見通しだ。これまで北太平洋、北大西洋の漁業が国際標準の主流として位置付けられてきたが、日本の水産業の多様性を反映した基準がいま世界に向けて発信されつつある。
低迷が続く道東太平洋地域の秋サケ資源の早期回復に向け、道総研は沿岸域に比べ水温が高く、餌も豊富な潟湖(せきこ)を稚魚の成育場に活用する研究開発に取り組んでいる。2017、18年の調査では水温、水質、餌生物量といった好適な環境特性を備え、その条件下で稚魚が成長し、沿岸域が適水温に到達した時期に降海した状況を確認。今年以降も調査を継続し、初期生活期の生残率向上につながる新たな放流方法の確立を目指す。
昨年は三陸沿岸でまひ性貝毒がかつてないほどの猛威をふるい、特にホタテでダメージが広がり深刻となった。貝柱製品向け水揚げの条件が緩和され出荷回復が図られたが、今年以降の貝毒再発懸念が強まっているほか、海域によってはワカメなど他養殖種への変更を模索する動きもある。専門家に再発リスクなどを聞くとともに、発売が待たれる貝毒検査キットを取材。水揚げ条件緩和とその後の動きも追った。
東北大学が研究する、電磁波を用いて食材を短時間で均一に、ドリップも出さず解凍できる技術「スマート解凍」の普及を目指し、法人化の計画が進む。浸透すれば低温流通を刷新、高品質を維持しながら食品ロスの低減にもつながると期待される。
1に安さ、2に手軽さ、3においしさという消費者が増える中、水産業界では販売促進、消費拡大の取り組みで決め手を見いだしにくくなっている。そこで、消費者と直接触れ合う量販店に昨年の売れ筋商品と今年のトレンドを聞き、ニーズを探った。昨年は「値ごろ感」と「健康」が販売の鍵、今年は引き続き健康と「簡便」がキーワードとなりそうだ。
若年層だけでなく高齢者を含めて国民全体に進む「魚離れ」の要因に挙げられるのが「においが嫌い」「骨があって食べにくい」。その敬遠要因の解消に向け、道総研食品加工研究センターが開発した魚臭さを低減する技術が注目されている。札幌市の一夜干し製造・販売業者が今年商品化を予定。また、研究者や料理人、食関連企業でつくる「北海道食文化研究会」が水産品の新たな調理法として料理を創出、実用化も視野に入れている。
平成に入って2番目の低来遊となった昨年(2018年)の北海道の秋サケは、5年魚(13年級)が極度に少なく、一昨年に3年魚での回帰が多く期待された4年魚(14年級)も7年以降10カ年平均の8割程度となった。一方、3年魚(15年級)は10カ年の平均並み。また、魚体サイズは平均目廻りが1998年以降で最小となり、成長停滞の要因解明と来季の回帰動向が注目されている。
ホタテ、サンマ、ホッケなど一部魚種に回復の兆しは見えたものの、イカなどの不振、自然災害の発生など引き続き厳しい一年となった昨年の北海道水産業界。迎えた新年は「70年ぶりの抜本改革」をうたった国の新たな水産政策が具体的に動きだす。年頭に当たり、道水産林務部の幡宮輝雄部長と、道漁連の川崎一好会長に展望を聞いた。