北海道の秋サケ定置網漁は今週から全網がそろって本格化する。未知の漁獲量3万トン割れも想定される前年比35%減の来遊予測下、出足の水揚げは日高・釧勝を中心に昨年に比べて良好。浜値は生鮮需要が好漁のサンマにシフトし、高水準ながら昨年より冷静に滑り出した。昨年産の在庫薄、海外産の高値相場などの流通環境を踏まえた売り場の堅守、円滑消流への適正価格の形成が例年以上に試されるシーズン。盛漁期に向かって大所・オホーツクをはじめ日量動向が注目される。
苫小牧港を拠点とするイカ釣漁は9月に入り、まとまった水揚げが続いている。市場担当者は「昨年の9月はまだ外来船がそれほど入らず、水揚げもほとんどなく漁は続かなかった」と回顧し「今年は早い段階から漁があり、今は1日で300箱以上獲ってくる船もある」と漁況を説明する。
漁業部門(有限会社三水漁業)の定置船「漁吉丸」を持ち、北海道日高のサケ・マスの加工を手掛ける浦河町の三協水産株式会社(小西哲平社長、電話0146・22・2075)は今年から春定置のサクラマスの加工販売に力を入れる。従来の塩切り身に加え、旬期に生原料で製造する「生仕立て」のスモークサーモンを打ち出した。
持続可能な北海道水産業の実現を目指し、産学官金で構成する団体「サステナブルーコンソーシアム北海道」が9日、札幌市内で発足した。代表理事会長に、構想を提唱したカネシメホールディングス株式会社社長の髙橋清一郎氏が就任。「生産から消費に至るハブ的機能として水産業全体を活性化させたい」と、力強く意気込みを語った。
網走漁協のホッキ漁が4日に始まった。資源保護の観点から日量は春漁同様、大のみ1隻30キロに制限。混獲のエゾバカガイやヒラガイ主体に水揚げしている。一方、浜値はホッキが10日時点でキロ千円台~750円、ヒラガイが400円台中盤と堅調に推移している。
日高中央漁協のコンブは、不漁だった昨年に比べて繁茂状況が良く、各地区採取日数を伸ばしている。全8地区の累計は11日現在で141日に達し、昨年(最終実績49日)、一昨年(同110日)を上回る日数を確保。増産が期待される。
留萌管内北部で中断していた稚貝の仮分散は8月末に再開し、必要量の確保にめどを付けた。海水温はなお高めに経過しており、着業者は本分散の開始時期についても「慎重に見極めていきたい」と話している。
オホーツク海沿岸の漁場造成を含む8月末水揚量は、前年同期比15%減の18万2420トンとなった。北部が1割、南部が2割の落ち込み。当初計画全体の達成率は68%。歩留まりは大半が9%台に下降し、組成は5S中心が占めている。一方、浜値はキロ300円台から250円前後まで堅調に推移している。
根室市の鮮魚卸・水産加工、株式会社カネマ浜屋商店(濵屋義則社長、電話0153・24・7889)は、北海道産マホッケを主力とした干物(一夜干し)の生産能力を増強した。2021年に導入したGSK株式会社(大阪市、小屋敷一雄社長、電話06・4302・3470)の特殊低温冷風乾燥機を増設し、2台体制に拡充。需要先への安定供給体制を整えた。
8月26日に東京都内のホテルで開かれた「道ぎょれん会」の秋季取引懇談会で、秋サケ製品に関する分科会では、減産予測下も冷静に旬の生鮮商戦にあたって通年商材としても末端の需要に応えられる製品供給に向けた価格形成に努めることで共有を図った。道漁連の役員や担当職員、道内企業の関東担当部署、東日本地域の商社、卸業者らが意見を交わした。道漁連からは労働力不足による加工処理能力の低下が顕在化していることなど産地の現状を報告。水揚げが集中した際でも滞りなく加工処理が進むよう広域処理体制で加工場をフル稼働させるなどの対応策も示した。その状況下で「親製品、卵製品とも落ち着いた浜値を形成できるかが商戦の行方を左右する」と指摘。9月下旬から10月中旬までの実質3週間の盛漁期に、いかに冷静な浜値で原魚を確保できるかを参加者らと共有した。