「6次産業化は営業努力がなければ成り立たず、売り先がなければ高くも売れない」。生食用の殻付カキを主体に約300の飲食店に直送、3年目で1億円を売り上げる漁師の会社・(株)海遊(宮城県石巻市雄勝町)の伊藤浩光社長(53)はこう話す。三陸では大震災後、6次産業化を目指す動きが活発化した。先輩格としてリードする伊藤社長の考え方、ノウハウに迫った。
道東沖のサンマ漁が一気に上向き、16日は道東4港(花咲・浜中・厚岸・釧路)で今季最高の3600トン(全国合計4700トン)を水揚げ。漁業情報サービスセンターのまとめによると、16日までの累計漁獲量は、低調だった前年同期を39%上回る2万7772トン(全国54%増3万4243トン)となった。魚体は昨年より大きく、大サイズ主体の組成。浜値は漁がまとまったことで弱含みに転じた。
ひだか漁協のツブかご漁は真ツブ、灯台ツブとも単価が上昇している。4月~8月末の累計でキロ平均単価は真ツブが前年同期比45%高の1006円、灯台ツブは同25%高の411円に付いている。
標津漁協は今季、船上で魚が生きているうちに血抜き処理する「船上一本じめ」で、秋サケのオスの出荷を始めた。一般公募で「波しぶき」と命名。組合では生鮮に加え、自営工場で山漬け風の塩蔵を製造する。直売店やネット販売を主体に直販、標津産秋サケの知名度向上につなげていく。
札幌市中央卸売市場の荷受マルスイ札幌中央水産株式会社(武藤修社長)は、南茅部(函館市)産の船上活じめメジマグロの販売に力を入れている。夏場の定置物を高鮮度状態で凍結。ラウンドに加え、ブロック、ロインなど年間通して安定供給できる高品質の道産マグロとして売り込んでいる。
秋の噴火湾エビかご漁は、昨季ハシリの水揚量を大きく上回り好スタートを切った。落部漁協は11日現在15トンと、昨年9月1カ月間の水揚量に7日目で到達。着業者は「良い意味で予想を裏切ってくれた」と表情を緩める。浜値は好漁を映し安値に振れた。
「広田つぶ」の出荷量を伸ばしたい─。岩手県陸前高田市の菅野修一広田湾漁協広田支所組合員は試行錯誤している。大震災後、かご漁業で採れる毛ツブにブランド名を付け、一時は加工場建設まで決意したが、現状は地元ホテルなどへの少量の出荷にとどまっているからだ。
日本海のウニ漁が不振だ。資源の減少に加え、天候不順で休漁の頻発も影響。特にエゾバフンが低調。一方、浜値は高値形成となり、札幌市場の卸値も品不足で高値に張り付いている。
「豊富なメニューと新鮮・旬の魚が自慢です」。道の駅「知床・らうす」深層館にある「羅臼の海味 知床食堂」は、前浜産魚介を味わえる人気店だ。社長の野村浩司さんは元漁師。定番の海鮮丼や焼き魚・煮付け定食に加え、現役時代に食べていた「漁師めし」もメニュー化。観光シーズンは店前に長い列ができる。
産直を売りにした海鮮居酒屋は全国的に人気だが、中でも株式会社エー・ピーカンパニー(米山久社長)が首都圏で12店舗を展開する「四十八漁場」は極めつけ。全国の漁港から漁師直結の鮮魚を空輸、羽田の自社配送センターで仕分け後、夕方から各店で提供する。浜直結により「良い品を手頃な価格で」という客のニーズと漁家増収に貢献する同店は、店舗・仕入れ先の拡大に勢いを増している。